成形・加工方法
2022-01-21
ゴムの圧縮成形(コンプレッション成形)とは
圧縮成形は、ゴム製品の製造方法でもっとも一般的です。金型にかかる費用の安さや設備のシンプルさが特徴ですが、ほかの成形方法と具体的にどう違うのか知りたい担当者の方もいるのではないでしょうか。
当記事では圧縮成形の概要や特徴、メリット・デメリット、圧縮成形に用いられるゴム素材や使用用途などを解説します。
ゴムの圧縮成形とは(コンプレッション)
ゴムの圧縮成形とは、製品と同じように型取られた金型の凹部(キャビティー)へゴム素材をセットし、プレス成形機によって熱と圧力をかけて成形する方法です。コンプレッション成形や加硫成形とも呼ばれます。
上記の図のとおり、たい焼きを作るようなイメージで成形を行います。
まず金型の下部にあたる凹部に細かくせん断したゴム素材をセットした後、金型上部でフタをするように閉じて熱と圧力をかけます。すると熱で柔らかくなったゴムが金型上部からの圧力によって、金型の形に沿って全体に行き渡ります。
その後、熱と圧力で固められたゴムを金型から取り出し、金型からはみ出して発生したバリの除去や表面処理などの後処理を行い完了です。
非常にシンプルな構造であり、圧縮成形は昔から製造現場で取り入られている、ゴム成形においてもっとも歴史ある一般的な方法です。
なお、金型の構造は圧縮成形機の構造や操作方法、金型メーカーにより異なりますが、主に2つ割りのタイプと3つ割りのタイプ、中芯(中子)を要いたタイプが一般的です。
圧縮成形のメリット・デメリット
圧縮成形はシンプルな成形方法だからこそのメリットとデメリットが存在します。
圧縮成形のメリット
圧縮成形のメリットは次のとおりです。
- 金型構造がシンプルなことから金型製作費用が安い
- 少量生産や他の成形機の取り付けなどの柔軟な対応がやりやすい
- 難しい操作が必要ない
安価かつ、シンプルな操作や対応ができる点が、圧縮成形の主なメリットです。現場にすぐ取り入れたい場合でも、比較的簡単に導入できます。
圧縮成形のデメリット
続いて、圧縮成形のデメリットは次のとおりです。
- プレス時に金型からはみ出すゴムがバリになるため後処理が必要になる
- 金型の傷・凹みや混入したエアーなどが原因で加工品の形状が悪くなる
- 寸法を安定させるには成形する職人の技量が必要になる
- サイクルタイムが長い
ほかの成形方法と比べると、作業の手間や品質にバラつきが出る可能性がある点がデメリットです。また後処理が適切に行われないと、最終的な製品の品質にも影響が出ます。
圧縮成形のポイント
先述のデメリットに対しても対策があり、圧縮成形を成り立たせる重要な要素になっています。
喰い切り溝
ゴムの圧縮成形では、たい焼きやワッフルメーカーでワッフルを作るときと同様に、型の形状やゴムの材質を考慮して不足がないように少し多めに材料を入れるため、プレスした際にどうしても材料がはみ出してしまいます。これはバリの一番の目的としては、工程上で発生するエアやガスを外へ押し出すことを担っているからです。
そのため、圧縮成形に用いられる金型はバリが出ることを前提とした構造になっています。
成形後にバリを除去できるよう、あらかじめ金型に「喰い切り」と呼ばれる凹凸を付けます。先端が尖った刃のようになっており、より薄くしたバリを食切りで切れるようにできます。バリ取りという作業の手間がある分、このような工夫がなされています。プラスチックの圧縮成形とは異なる部分です。
オーバーフロー
バリがあまりにも分厚くなってしまうと、分厚くなった分だけ寸法がずれる恐れがあります。こうしたバリの分厚さを調整するため、金型には材料を逃がしてバリを薄くする溝も作られます。
材質
成形時間や加える熱の他にも、ゴムの材質や使用する材料の重量によっても仕上がりの寸法は大きく変わってきます。こうした管理も非常に重要な部分を担っています。
踏まえた材料の管理、溝を活用した金型の設計など、細かな調整と技量が大きく影響する成形方法であるともいえるでしょう。
圧入成形(トランスファー成形・圧送成形・移送成形)について
同じく金型を使用する圧縮成形と似たような方法として、圧入成形(トランスファー成形・圧送成形・移送成形)があります。
圧入成形とは、金型上部にあるトランスファポットにゴム素材を投入して加熱し、加熱によって軟化したゴム素材を上から押し込んで金型キャビティーに移動させ、そのまま固める成形方法です。
製品の形状が複雑で金型の製品部にゴム材料をセットすることが難しい場合にメリットがあります。
圧縮成形機で金型を製作する際の注意点
圧縮成形機の導入において金型メーカーへ金型の製作を依頼する際は、以下の注意点を押さえておきましょう。
- 加工品が目標の形状になるような金型の形
- バリの処理まで配慮した構造
- 金型上部と下部がずれないようなガイドや位置決め構造
- 金型の摩耗や経年劣化による影響
など
ゴム圧縮成形に使用される材質と用途
ゴム圧縮成形に使用される材質と、圧縮成形によって製造される製品を紹介します。
ゴムの材質
熱と圧力で固めるという圧縮成形の特性上、加工できる素材は熱を加えることで固まる「熱硬化性の物質」になります。ゴムであれば大体が熱硬化性です。
熱によって可塑性(溶ける性質)を得る「熱可塑性の物質」は、液体のように軟化した素材を金型に注入する「射出成形(インジェクション成形)」や、素材をスクリューなどで押し出して成形を行う「押出し成形」などで成形するのが一般的です。
圧縮成形で用いられる主な素材としては、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、および一部のウレタンゴム(U)が該当します。
用途
結論から言えば、圧縮成形は金型で再現できる形状なら原則として製造できます。ただし、先述の通り寸法を安定させるためには技術が必要となるため、精巧かつ複雑な形状に成形したいときはその点を踏まえた設計をすること、完成品の形状が複雑であっても問題なく外すことができる構造の金型を用意することになります。
圧縮成形の用途として、主に次の製品の成形に利用されます。
- タイヤ
- Oリングやシール材などのパッキン、ガスケット類
- パイプ
- ホース
- ベルト
- 緩衝材
- ゴム被覆電線
- 機械や部品、その他のカバーやキャップ
など
精密機械の部品やOA機器部品などのより細かい精度や寸法が必要な場合は、専門家にしっかりと相談したうえで検討するか、別のゴム成形方法を選択したほうがよいでしょう。
シンプルかつ安価な圧縮成形で現場の課題を解決しよう
ゴムの圧縮成形は、熱で硬化するゴム素材の成形としてはもっとも歴史があるポピュラーな成形方法です。シンプルな構造であるため、金型にかかる費用が安く、簡単に導入・操作ができます。また、汎用的に多くの形状の製品を作ることができる点が大きなメリットです。
ただしバリ取りや表面処理などの後処理が発生する点がデメリットです。製造したい製品の形状や予算感に応じて、導入を検討してみてください。
製品に関するご質問、製品開発に関することはなんでもご相談ください。
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