ものづくりプレス

2026-03-21

ナフサ高の時代、小ロット部品をどう守る?量産材優先でも埋もれない調達設計を解説

ナフサ高の時代、小ロット部品をどう守る?量産材優先でも埋もれない調達設計を解説

原油やナフサの相場が荒れると、多くの企業はまず「材料価格の上昇」に目を向ける。 もちろん、それは間違っていない。だが、現場でより深刻なのは、小ロット部品や特注部品ほど調達で不利になりやすいことである。

なぜなら、需給が逼迫する局面では、原料メーカー・コンパウンドメーカー・成形メーカーの多くが、どうしても量産材や標準材を優先しやすくなるからだ。直近でも、ロイターは中東情勢の悪化でホルムズ海峡経由の石油化学品供給が詰まり、アジアではナフサマージンが急騰し、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック価格が4年ぶり高値圏にあると報じている。さらに3月上旬には、アジアの石化メーカーがナフサ供給混乱を受けて減産や調達見直しを迫られていると伝えられた。

この流れは、プラスチックやゴムの量産品だけの問題ではない。むしろ影響を受けやすいのは、

  • 小ロットのゴム部品
  • 特注配合の樹脂部品
  • 交換頻度は低いが欠品すると止まる補修部品
  • 量産数は少ないが代替しにくい専用品

本記事では、ナフサ高の時代に、小ロット部品をどう守るべきかをテーマに、量産材優先の局面でも調達が崩れにくい考え方を整理する。

なぜナフサ高の局面では“小ロット部品”が不利になるのか

日本のものづくりに使われる多くのプラスチック・ゴム原料は、
原油 → ナフサ → 基礎化学品 → 樹脂・ゴム原料 → 部品・製品
という流れの上にある。日本政府は、ナフサが各種工業製品の材料であり、中東以外からの調達も進めつつ、国内消費約4か月分相当を確保する方針を説明している一方、供給安定に向けて継続対応が必要だとしている。

1. 標準材・量産材が優先される 供給が不安定になると、材料メーカーや加工先は、回転の速い品番や数量がまとまる案件を優先しやすい。その結果、小ロット品や専用品は後ろに回されやすい。
2. 特注配合や特殊グレードほど不利になる 量産材は他案件との共通化がしやすいが、特注ゴム配合や限定グレードのプラスチックはそうではない。原料が絞られると、汎用品が優先され、特殊品は納期が伸びやすい。
3. 価格ではなく“手配優先順位”で負ける 小ロット部品は、単価が多少上がるよりも、そもそも材料確保や成形枠確保が難しくなる方が痛い。これは見積の問題ではなく、優先順位の問題である。

小ロット部品こそ「価格」より「止まるかどうか」で考える

ここで重要なのは、小ロット部品の評価軸を変えることだ。普段は、「単価が安いか」「前回より高いか」で判断しがちだが、ナフサ高や供給混乱の局面では、それだけでは不十分である。

小ロット部品こそ、次の視点で見るべきだ。

  • 欠品するとラインが止まるか
  • 補修対応が止まるか
  • 代替材がすぐに見つかるか
  • 同じ仕様で他社へ振れるか
  • 国内在庫を持てるか

つまり、価格の安さではなく、供給継続性の高さで評価する必要がある。たとえば、1個数十円〜数百円のゴム部品でも、1点欠けるだけで装置の納入や保守対応が止まるなら、実際には“高重要度部品”である。ナフサ高の局面では、この認識を持てるかどうかで対応が大きく変わる。

小ロット部品を守る調達設計 1 「量が少ない」ではなく「止まる」を基準にランク分けする

多くの企業で起きがちなのが、小ロット部品を「金額が小さい部品」として雑にまとめてしまうことだ。しかし、本来見るべきは数量や金額ではなく、欠品時の影響度である。

優先して守るべき部品の例

・保守部品として急な出荷が発生するもの
・代替材や代替工法が効きにくいもの
・現場交換やメンテナンスで必要なもの
・図面変更に時間がかかるもの
・取引先の装置停止につながるもの

このような部品は、小ロットでも「守るべき品番」として別管理にした方がよい。つまり、量産材/小ロット材という分け方ではなく、止まる部品/止まらない部品で分けるべきである。

小ロット部品を守る調達設計 2 発注頻度を見直し、まとめ方を工夫する

需給が荒れている時期、小ロット部品で不利になる大きな理由のひとつが、発注が細かすぎることである。1回あたりの数量が少なく、しかも都度手配になっていると、メーカーや加工先から見れば優先度が上がりにくい。

発注設計で見直したいポイント

  • 月次発注を四半期発注に変えられないか
  • 類似品番をまとめて手配できないか
  • 内示を早めに出せないか
  • 年間使用見込みを共有できないか
  • 緊急便前提から計画便前提にできないか

この工夫によって、数量自体は少なくても、相手側には「継続案件」として認識されやすくなる。特にゴムやプラスチックの特注品は、単発の小口案件として見られるか、継続性のある案件として見られるかで、調達の通りやすさが変わる。

<

小ロット部品を守る調達設計 3 在庫は“全品積む”ではなく“絞って持つ”

在庫の積み増しは、キャッシュを圧迫するため慎重になりやすい。だが、ナフサ高や供給混乱の局面では、在庫はコストであると同時に保険でもある。ポイントは、すべての小ロット部品を積むことではなく、本当に守るべき品番だけを選んで持つことである。

在庫優先候補

  • 専用配合のゴム部品
  • 限定グレードのプラスチック部品
  • 補修対応で即納が求められる品番
  • 再立ち上げに時間がかかる品番
  • 海外材依存が高いもの

経産省や日本政府は、マクロではナフサや川下製品の在庫確保に言及しているが、それは国全体の話であり、自社で使う特定品番の安心を保証するものではない。自社の小ロット品番については、別途、個別に安全在庫と補充リードタイムを見直す必要がある。

小ロット部品を守る調達設計 4 代替材候補を“今のうちに”持っておく

小ロット部品が埋もれやすい最大の理由のひとつは、材料が固定されすぎていることである。たとえば、ゴムでなければならないのか、TPEで代替できないのか、同等機能の別グレード樹脂はないのか、といった検討余地があるなら、平時のうちに候補を持っておくべきである。

供給が詰まってから代替材を探すと、評価や図面修正、顧客承認に時間がかかり、結局、納期遅れになりやすい。

だからこそ、小ロット部品ほど“今は使っていないが、いざとなれば振れる材料”を持っておくことが大切である。

小ロット部品を守る調達設計 5 国内対応力を持つサプライヤーを混ぜる

ナフサ高の時代は、単純な最安調達だけでは弱い。特に小ロット部品では、海外一辺倒だと、輸送・通関・成形枠・再手配まで含めたリスクが大きくなりやすい。そのため重要なのが、国内対応力を持つ供給先を一部でも持つことである。

国内対応力とは、具体的に以下のような力を指す:

  • 小ロットでも相談しやすい
  • 図面変更や仕様変更に対応しやすい
  • 代替材提案ができる
  • 緊急手配時に会話が早い
  • 試作と量産の切替がしやすい

量産材優先の局面では、「価格では勝てなくても、小ロットを拾える先」が非常に重要になる。

実務で使える「埋もれない小ロット部品」チェックリスト

  • 1 この部品は欠品すると何が止まるか: ライン停止か、補修遅延か、顧客納入遅延かを明確にする。
  • 2 発注が細かすぎないか: 月次・都度発注になっていないか、まとめられないかを見る。
  • 3 材料指定が固定されすぎていないか: ゴム、プラスチック、TPE、複合設計など代替余地を確認する。
  • 4 個別在庫を持つべき品番か: 国全体の在庫ではなく、自社の品番ベースで判断する。
  • 5 切替可能な供給先があるか: 1社依存、1材依存、1国依存になっていないかを確認する。

なぜ今、このテーマが重要なのか

今回の中東発の供給混乱では、アジアの石化メーカーが減産や調達見直しを迫られ、ホルムズ海峡経由の石化供給が詰まることで、ナフサやプラスチック原料の確保が難しくなっていると報じられている。日本のガス会社トップも、ナフサ不足で石化プラントが減産すれば、製造業全体への影響が出る可能性に言及している。

このような局面では、量産材はまだ何とかなることがあっても、小ロット部品、特注部品、補修部品は先に苦しくなりやすい。だからこそ、今やるべきなのは価格交渉だけではなく、埋もれない調達設計を作ることである。

まとめ

ナフサ高の時代に、小ロット部品を守るために必要なのは、単に価格を抑えることではない。需給が逼迫する局面では、量産材や標準材が優先されやすく、小ロットのゴム・プラスチック部品ほど埋もれやすくなる。直近でも、ホルムズ海峡経由の石化供給混乱やアジアのナフサ調達難が報じられており、日本政府も中東以外からの調達強化と4か月分相当のナフサ確保に言及している。 (Reuters)

そのうえで、埋もれない調達設計のポイントは次の5つである。

  • 小ロットではなく「止まる部品」で優先順位をつける
  • 発注頻度を見直し、継続案件として扱われやすくする
  • 絞った品番だけ在庫を持つ
  • 代替材候補を平時のうちに持つ
  • 国内対応力のある供給先を混ぜる

ナフサ、ゴム、プラスチックを取り巻く環境が不安定な今こそ、
小ロット部品を“数量が少ないから後回し”にしない設計が重要になっている。

調達担当が小ロット部品を見ている様子