ものづくりプレス

2026-03-09

ナフサ不足で何が止まる?エチレン・樹脂・ゴム原料の供給連鎖を図解でわかりやすく解説

ナフサ不足で何が止まる?エチレン・樹脂・ゴム原料の供給連鎖を図解でわかりやすく解説

原油価格の上昇や中東情勢の緊迫化が報じられると、「燃料費が上がる」というイメージを持つ方は多いかもしれない。 しかし製造業にとって本当に深刻なのは、原油の先にあるナフサ不足が、プラスチックやゴム原料の供給そのものを揺らすことである。

特に、設備機器・自動車・建機・医療機器・建築部材などで使われる部品は、見えないところでナフサ由来の材料に大きく依存している。ナフサクラッカーが停止・減産すると、エチレンやプロピレン、ブタジエンなどの基礎原料が絞られ、その先にある樹脂や合成ゴムの供給にも波及しやすい。プラスチックもゴムも、最終製品の現場では「代替しにくい材料」が多いため、単純な値上がり以上の問題になりやすい。多くのプラスチック原料がナフサ由来であり、石化製品の主要用途としてプラスチックと合成ゴムの比重は大きいです。

最近では、韓国LG Chemが原料ナフサの調達難を背景に、2026年3月に麗水のナフサクラッカーを停止したと報じられた。これは「海外の出来事」ではなく、東アジア全体の樹脂・ゴム・中間原料の需給に影響し得るシグナルである。加えて、ロイターは中東情勢の悪化でプラスチック価格が上昇し、ポリエチレンやポリプロピレンなどの供給にも影響が広がっていると報じています。

本記事では、
原油 → ナフサ → 基礎化学品 → プラスチック・ゴム原料 → 部品・製品
という流れを、できるだけわかりやすく整理する。

まず理解したい「原油からプラスチック・ゴムまで」の流れ

製造業の現場では、材料名だけが独立して語られがちだが、実際には供給連鎖でつながっている。

ナフサを起点にした供給連鎖

原油
↓ 精製
ナフサ
↓ ナフサクラッカーで熱分解
エチレン/プロピレン/ブタジエン/芳香族
↓ 重合・化学反応
各種樹脂・各種合成ゴム原料
↓ 成形・加工
プラスチック部品/ゴム部品/複合部材

この中で重要なのが、ナフサクラッカーである。
ナフサクラッカーは、ナフサを高温で分解して、エチレンやプロピレンなどの基礎化学品を生み出す中核設備だ。ここが止わると、その先の樹脂・ゴム材料の供給が細る。ナフサクラッカーはエチレンやプロピレンなどを生産する石化の中核設備です。

材料の全体像も整理したい方へ

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なぜ今、ナフサ不足が問題なのか

今回の論点は、単なる原油高ではない。
中東依存の高い供給構造のなかで、ナフサそのものの調達不安が顕在化していることがポイントである。

日本のエネルギー供給は中東依存度が高く、原油は中東依存が非常に大きい構造にある。IEAも、日本は輸送燃料以外でLPGやナフサの輸入が必要だと整理しています。さらに2026年3月、日本政府はナフサの確保について国内消費約4か月分相当を見込めると説明しており、裏を返せばそれだけナフサ供給が経済安全保障上の論点になっていることを示しています。

また、韓国では政府がナフサを重要な経済安保品目として扱い、輸出抑制や支援策を打ち出していると報じられている。つまり、足元では「価格」だけでなく「現物を確保できるか」が問題になっている。

ナフサクラッカーが止まると、どの樹脂に影響しやすいのか

ナフサ不足の影響を考えるうえで、まず押さえたいのは「どの基礎原料から、どの樹脂が作られるか」である。

1. エチレン系

エチレンは、石化の最重要原料のひとつである。ここから代表的に以下のようなプラスチック原料へつながる。

  • ポリエチレン(PE)
  • エチレン酢酸ビニル系材料
  • 一部フィルム・包装材関連原料
  • 各種成形品向け中間体

包装、建材、工業部材、容器など幅広い用途で使われるため、影響範囲が大きい。つまり、ナフサクラッカー停止は、まずエチレン系樹脂の供給逼迫として表れやすい。

2. プロピレン系

プロピレンからは、代表的に以下のような材料が派生する。

  • ポリプロピレン(PP)
  • 一部エラストマー原料
  • 自動車・家電・日用品向け樹脂原料

PPは軽量で成形性が良く、工業製品でも採用範囲が広い。代替が難しい部位では、調達先変更だけでは吸収しきれないことがある。

3. 芳香族系

ナフサ分解や改質から得られる芳香族は、以下のような樹脂系へ波及する。

  • ABSの一部原料
  • PS系材料
  • 各種エンジニアリングプラスチックの中間原料

ここは「完全に止まる」というより、一部グレードや中間体が不安定になりやすい領域である。

ゴム材料では何が影響を受けやすいのか

富士ゴム化成様の事業と相性が良い視点として、ゴム材料への波及も重要である。

注目すべきはブタジエン

ナフサクラッカーからは、エチレンやプロピレンだけでなく、ブタジエンも得られる。このブタジエンは、合成ゴムの重要原料だ。

代表例としては、

  • SBR(スチレンブタジエンゴム)
  • BR(ブタジエンゴム)
  • NBR系の一部原料連鎖
  • 各種ゴムコンパウンドの基材

自動車、産業機械、シール材、ローラー、ベルト、パッキン、緩衝材など、ゴム部品の裾野は広い。そのため、ナフサ不足は「プラスチック不足」だけでなく、ゴム原料不足や価格上昇としても現れやすい。日本石油化学工業協会の統計にも、スチレンブタジエンゴムやブタジエンゴムが主要石化製品として掲載されています。 

何が止まりやすいのかを、製造業目線で整理すると

ナフサ不足が起きたとき、すぐに完成品ラインが全面停止するとは限らない。
ただし、次のような順番で現場に影響が出やすい。

1. まず起きやすいこと

  • 原料価格の上昇
  • 樹脂・ゴムの納期長期化
  • 特定グレードの出荷調整
  • 代替材提案の増加

2. 次に起きやすいこと

  • 試作や新規案件の材料選定見直し
  • 調達先変更による品質評価のやり直し
  • 成形条件や加工条件の再調整
  • 既存図面の材料指定変更検討

3. 深刻化した場合に起きること

  • 一部部材の欠品
  • 補修部品や小ロット品の後回し
  • 代替困難なプラスチック・ゴム部品の生産遅延
  • 装置全体の出荷遅れ

特に注意したいのは、単価の高い部材よりも、安価だが代替しにくい小物部品である。
Oリング、ガスケット、パッキン、ホース、樹脂スペーサー、カバー、絶縁部品などは、1点欠けるだけで装置全体が止まることがある。

実際の部品や用途も確認したい方へ

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ナフサ不足の影響は、価格だけでなく、Oリング・ガスケット・パッキン・樹脂スペーサーなど「代替しにくい小物部品」にも及びます。実際にどのような部品や用途があるのかを整理したい方は、製品実績もあわせてご覧ください。

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設計・生産技術が今見るべきポイント

今回のようにナフサ由来原料が揺れる局面では、購買部門だけでなく設計・生産技術も早めに動く必要がある。

材料型式まで固定しすぎていないか

図面や仕様書で、必要以上に狭い材料指定をしていると、代替余地がなくなる。
同等性能で置き換え可能なグレードがあるなら、あらかじめ整理しておくべきである。

ゴム・プラスチックの複合部品を見直しているか

一体成形品や複合部材は、どちらか一方の原料が詰まるだけで全体納期に影響する。
分割設計や代替材の選択肢があるか確認したい。

小ロット対応できる調達先があるか

市況が荒れる局面では、大手汎用品だけでなく、多品種少量で柔軟に対応できる供給先が価値を持つ。富士ゴム化成様のようにゴム製品・樹脂製品を多品種少量から扱う体制は、こうした局面で実務上の安心材料になりやすいです。 

ナフサ不足は「遠い原料の話」ではない

ナフサという言葉は、設計者や生産技術者にとって日常用語ではないかもしれない。
しかし実際には、ナフサ不足はエチレン、プロピレン、ブタジエンなどの供給を通じて、プラスチックやゴム材料に直結する。

つまり、

  • 1. 原油が動く
  • 2. ナフサが揺れる
  • 3. ナフサクラッカーが止まる
  • 4. 樹脂やゴム原料が絞られる
  • 5. 部品の納期・コスト・設計自由度に影響する

という流れで、現場まで波及する。

最近のLG Chemの停止事例は、その連鎖が現実に起き得ることを示した。メーカーの設計・生産技術・購買が連携し、早めに材料リスクを見える化しておくことが重要である。LG Chemの停止は原料ナフサの供給難が背景とされ、ロイターは中東発の石化供給混乱が世界のプラスチック需給にも影響していると報じています。 

まとめ

ナフサ不足が起きると、止まりやすいのは単なる「石化業界」ではない。
その先にあるプラスチック、ゴム、各種中間原料、そして部品供給である。

特に押さえておきたいポイントは3つだ。

  1. ナフサクラッカーは、エチレン・プロピレン・ブタジエンを生む中核設備である
  2. その停止や減産は、樹脂だけでなくゴム原料にも影響しやすい
  3. 設計・生産技術は、調達不安が表面化する前に代替性を確認すべきである

原油高のニュースを「燃料コストの話」で終わらせず、
ナフサ → プラスチック → ゴム → 部品供給まで一気通貫で見ることが、これからの製造業には欠かせない視点になっている。

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