ものづくりプレス

2025-12-07

JIS・AS・ISO…結局どのOリング規格を見ればいいのか?設計・調達のための実務ガイド

「Oリングの規格は JIS にしますか?AS568 ですか?」
「海外メーカーの図面が AS のダッシュ番号指定で来たけど、日本側でどう買えばいいのか分からない」

設計や調達の現場で、こんな会話が出てくることは少なくありません。
Oリングはシンプルな部品ですが、実は以下の複数の「Oリング規格」が並行して存在しています。

どれを基準にするかで、設計・調達の自由度や将来のメンテ性が大きく変わります。
この記事では、Oリングの主要規格である JIS/AS568/ISO 3601 の違いを整理しながら、以下のポイントを「実務ガイド」として解説します。

【本記事のポイント】
  • どんな場面で、どの規格を見ればいいか
  • 規格が混在している現場で、どう整理すればいいか
  • 設計・調達として、社内ルールをどう作ると楽になるか

JIS・AS568・ISOの主要3規格の違いと、Oリングの設計・調達における使い分けを表したイメージイラスト。規格ごとの特徴や互換性の概念を可視化している。

1. Oリングの主要規格はこの3つだけ押さえればよい

まずは全体像をシンプルに整理します。
Oリングの規格は細かく見るといろいろありますが、「サイズ・寸法」を考えるうえで、最低限押さえておきたいのは次の3つです。

1-1. JIS B 2401:日本国内で最もよく使われるメートル系規格

JIS B 2401 は、日本工業規格が定める Oリングのサイズ・形状・材質などに関する規格です。
一般機械用途向けで、メートル系寸法が基本になります。日本規格協会 JSA GROUP Webdesk

主な特徴は以下の通りです。

  • メートル単位の 内径(ID)×断面径(CS) で管理
  • 用途ごとに P/G/S/V などのシリーズに分かれる
    • P:一般用(圧力配管など、最もよく使う)
    • G:ガスケット用
    • S:特殊用途
    • V:真空用 など

日本国内の装置・図面では、いまだに「JIS P○○」「JIS G○○」という指定が多いのが現状です。「国内設計・国内生産・国内調達」が中心であれば、基本は JIS B 2401 で統一しておくのが一番シンプルです。

1-2. AS568:インチ系の“ダッシュ番号”で指定する米国発の標準

AS568(旧 AS568A/B)は、SAE(米国自動車技術者協会)が定めた Oリングのサイズ標準で、現在も航空宇宙・自動車・産業機械など広い分野で使われています。Global O-Ring and Seal SAE International applerubber.com

  • インチ単位の内径・断面径
  • 「-0XX」「-1XX」「-2XX」などの ダッシュ番号 でサイズ指定
  • 北米メーカーの図面や海外装置には AS568 指定が非常に多い
  • ISO 3601 のインチ系サイズとも強く関連

海外メーカー製の設備を多く扱う場合や、北米向け・グローバル向けの製品設計では、AS568 の読み方に慣れておく必要があります。

1-3. ISO 3601:JIS と AS を“つなぐ”グローバル規格

ISO 3601 は、Oリングの寸法・公差・品質グレードなどを定めた国際規格です。machinerylubrication.com ISO Iteh Standards

  • メートル系・インチ系の両方をカバー
  • 内径・断面径・公差・品質グレード(Class A/B 等)を規定 Global O-Ring and Seal
  • 「ISO ベースの標準品」として流通する Oリングも増加中
  • 欧州企業やグローバル企業の図面では、ISO 3601 の指定が増えている

ISO 3601 は、ざっくり言うと「JIS(日本)と AS568(米国)を含む、世界共通の物差し」のような位置づけです。
将来的にグローバル展開を本格的に見据えるのであれば、「JIS だけ」ではなく ISO 3601 の考え方も意識しておくと設計の自由度が広がります。

2. シチュエーション別:「どのOリング規格」を見るべきか

では、実務的にはどのように使い分ければ良いのでしょうか。ここでは、よくあるシチュエーションごとに「まずどの規格を見るべきか」を整理します。

2-1. 国内設備向けで、調達も国内で完結させたい

→ 基本は「JIS B 2401」をベースに設計するのがおすすめです。

  • 既存設備・既存図面との互換性が取りやすい
  • 国内サプライヤーが充実しており、価格競争も効きやすい
  • P シリーズ(一般用)を中心に標準化することで、在庫点数も削減しやすい

この場合でも、将来の海外展開や海外工場調達を想定するなら、「対応する AS568 サイズがあるか」「ISO 3601 で同等寸法があるか」を、技術商社などに確認しておくと安心です。

2-2. 海外装置のメンテナンスや部品互換を取りたい

→ 図面に AS568 の「-○○○」ダッシュ番号が書かれていることが多いため、まずは AS568 を確認します。

  • 海外メーカーのマニュアル・パーツリストは、ほぼ AS568 か ISO 3601 指定
  • 日本側で代替調達する場合も、AS568 サイズチャートとの照合が必須 applerubber.com オールリングス

そのうえで、「JIS B 2401 に寸法が近いサイズがあるか」「ISO 3601 のメートル系サイズで、より入手性の良いものはないか」といった“変換・置き換え”の検討に進みます。

2-3. グローバル共通設計を目指したい新規プロジェクト

→ ISO 3601 寸法をベース に設計するのが有力な選択肢になります。

  • 欧州・北米・アジア、どの地域でも入手しやすい
  • Class A/B などで公差レベルも整理されており、品質要求に応じて使い分け可能 Global O-Ring and Seal
  • 将来の海外生産・海外調達にもスムーズに対応しやすい

この場合、日本側のサプライヤーがどの規格で在庫を持っているかも重要です。「ISO ベースだが、実際の供給は JIS/AS 混在」というケースもあるため、早めに技術商社やサプライヤーとすり合わせておくと、後戻りを防げます。

3. 実務で迷わないための「3ステップ思考」

規格の名前だけを追っていても、現場の迷いはなかなか減りません。ここでは、設計・調達が共通で使える「3ステップ」の考え方を紹介します。

ステップ1:まず「どこの市場で使う製品か」をはっきりさせる

  • 日本国内のみで完結する装置 → JIS 優先
  • 北米・欧州に出ていく製品 → ISO/AS を視野に入れる
  • 海外メーカー製装置のメンテ → AS/ISO に合わせる

「今どこで使っているか」だけでなく、「5年後どこで使っていたいか」も含めて議論すると、規格選定の方針がブレにくくなります。

ステップ2:既存図面・仕様書に何と書いてあるかを読み解く

  • 「JIS B 2401 P○○」と書いてある → JIS 固有サイズの可能性が高い
  • 「AS568-2XX」などダッシュ番号 → AS568 ベース
  • 「ISO 3601-1 Class A」などと記載 → ISO 寸法+公差ベース

まずは「現状、何を基準にしているのか」を確認しない限り、どの規格に統一するか、どこまで変更しても良いかは決められません。

ステップ3:調達の自由度をどこまで確保したいかを決める

  • 国内サプライヤーを複数社確保したい
  • 海外からも買えるようにしておきたい
  • 価格競争が効くようにしておきたい

こうした「調達上の要件」によって、同じサイズでも選び方が変わってきます。例えば「JIS しか対応していないサイズ」を使うと、海外調達の自由度は下がります。
そのため、設計段階で「どの規格に寄せておけば、将来の選択肢を多く持てるか」を、技術商社や調達部門と一緒に検討しておくことが重要です。

4. JIS・AS・ISO 間の「変換」で気をつけるべきポイント

実務では、「JIS 指定の図面を、AS サイズに置き換えたい」といったニーズも多くあります。このとき、単純に「内径と断面が近いから OK」と判断してしまうと、トラブルの原因になります。

4-1. 寸法は近くても、公差・締め代が違うことがある

JIS/AS/ISO は、似た寸法のサイズを持っていることもありますが、以下の点が微妙に異なる場合があります。

  • 許容公差(太さ・内径の振れ幅)
  • 想定している溝寸法・つぶし率

が微妙に異なる場合があります。valqua.co.jp 日本規格協会 JSA GROUP Webdesk ISO

「ほぼ同じサイズだから大丈夫だろう」と置き換えると、「つぶし量が不足し、漏れやすくなる」「逆に過大つぶしになり、早期破損・摩耗の原因になる」といったリスクがあります。

4-2. 材質・硬度まで含めて「要求仕様を満たすか」を見る

サイズだけでなく、以下の要素を総合的に見たうえで、「別規格の相当品に置き換えても良いか」を判断する必要があります。

  • 材質(NBR・EPDM・FKM・FFKM・TPE など)
  • 硬度(例:70±5、90±5 など)
  • 使用温度・使用流体・圧力条件

ここは、カタログだけで判断するのではなく、実際に各規格に基づいて製造しているメーカー・技術商社に相談しながら進めるのが安全です。

4-3. 「完全互換」とは言えないケースをきちんとラベリングする

どうしても置き換えたい場合でも、実務上問題ないか確認した上で、以下のように社内での位置づけを明確にしておくことがトラブル防止につながります。

  • 「完全互換品」ではなく「代替可能品」
  • 条件付きで使用可(圧力○MPa以下、静止用のみ etc.)

5. 設計と調達で決めておきたい「社内ルール」の例

規格の話は、一度整理すれば長く効く“基盤”の部分です。現場の迷いを減らすために、次のような社内ルールを決めておくと運用がかなり楽になります。

5-1. 基本となる優先規格を決める

  • 「国内向け新規設計は、原則 JIS B 2401 P シリーズを採用」
  • 「グローバル向けは ISO 3601 を基本とし、必要に応じて AS568 に読み替え可能とする」

といった「原則」を決めておくと、案件ごとにゼロから議論する必要がなくなります。

5-2. 図面の書き方を統一する

例えば、「規格名+サイズ+材質+硬度」を必ずセットで記載する、代替許容範囲を備考に残すなどです。

  • 例)Oリング:JIS B 2401 P20、NBR 70、黒
  • 例)O-ring:ISO 3601-1 Class A、ID○○×CS○○、FKM 75
  • 備考例)AS568-2XX 相当可、ただし静止シール限定

5-3. 規格変換・代替検討は「窓口」を決めて行う

JIS/AS/ISO の変換や、材質変更を伴うような代替検討は、以下の三者で進めるのが理想です。

  • 設計
  • 調達
  • 技術商社(外部パートナー)

社内に「Oリング・シール部品の標準化担当」や、外部の「メーカーニュートラルな技術商社」を窓口として立てておくと、各現場でバラバラに判断するリスクを減らせます。

6. 規格の整理・標準化は「一度やると長く効く投資」

Oリング規格の整理・標準化は、一見地味ですが、「設計の手戻り防止」「調達の自由度向上」「製品ライフサイクルの保守性向上」につながる、非常に費用対効果の高いテーマです。

もし、「JIS と AS のサイズが混在している」「図面に規格名が書いていない」という状況であれば、一度「Oリング・シール部品の規格棚卸し」を行っておく価値があります。

  • 既存図面・部品表から Oリング・シール部品を洗い出す
  • サイズ・規格別に整理し、標準サイズ群と例外を仕分ける
  • JIS/AS/ISO の変換可能性を整理し、社内標準表を作成する

これを行うことで、今後の設計・調達が格段にスムーズになります。

Oリング規格の整理・標準化でお悩みの方へ

「JIS と AS がごちゃ混ぜで、どこから手をつければいいか分からない」「今後の海外展開を見据えて、ISO 3601 ベースに整理したい」
そんなお悩みがあれば、代表的な図面や現在のOリングリストをお手元にご相談ください。
富士ゴム化成では、JIS/AS/ISO をまたいだ「実務ベースの標準化プラン」や「規格変換案」のご提案が可能です。

Oリング規格の整理・標準化を相談する ≫