ものづくりプレス

2026-03-17

原油・ナフサ・樹脂相場が荒れる時、調達担当が最初に見るべき5つの指標

原油・ナフサ・樹脂相場が荒れる時、調達担当が最初に見るべき5つの指標

原油価格が動くと、すぐに「材料が上がりそうだ」と感じる方は多い。
しかし、実務で本当に重要なのは、原油だけを見ることではない。

なぜなら、日本のものづくりで使われるプラスチックやゴムの多くは、
原油 → ナフサ → 基礎化学品 → 樹脂・ゴム原料 → 成形品・部品
という流れの上にあるからだ。日本政府は、ナフサが各種工業製品の材料であり、日本は中東依存が高いと説明している。さらに経産省資料では、日本のナフサ調達元は2024年実績で中東44.6%、国産39.4%、その他16.0%と整理されている。 (経済産業省)

つまり、相場が荒れる局面では、原油価格だけ見ていても遅い。ナフサ、石化設備、在庫、リードタイムまで含めて見ないと、調達判断を誤りやすい。本記事では、調達担当が最初に確認したい5つの指標を、実務目線で整理する。

なぜ今、指標を“順番に”見る必要があるのか

最近の中東情勢では、単に原油が上がっているだけではない。ロイターは2026年3月、イラン情勢を背景にホルムズ海峡経由の石油化学品供給が詰まり、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック価格が約4年ぶり高値圏にあると報じた。あわせて、アジアのナフサマージンは戦争前の1トン当たり約108ドルから400ドル超へ上昇したとされる。

実際には、次のような順番で影響が出やすい。

  1. 原油が動く
  2. ナフサの調達コストと需給が動く
  3. クラッカー稼働や基礎化学品供給が変わる
  4. プラスチックやゴム原料の見積が変わる
  5. 在庫と納期に差が出る

だからこそ、相場が荒れたときほど、どの指標を、どの順番で見るかが重要になる。

指標1 まず見るべきは「原油価格」

最初の入口は、やはり原油価格である。原油は、ナフサや石油製品全体の基礎になるため、上流の変化を最も早く映しやすい。

直近では、ロイターが日本政府のエネルギー安全保障対応を報じるなかで、日本は原油供給の9割超を中東に依存していると伝えている。加えて、IEAは2026年3月のレポートで、中東戦争が世界の石油市場史上最大級の供給混乱を生み、ホルムズ海峡を通る原油・石油製品の流れが急減していると指摘した。

原油価格を見る意味:
・全体相場の方向感をつかめる
・ナフサや樹脂価格の先行シグナルになりやすい
・調達先からの値上げ予告を早めに想定できる

【注意点】原油が上がっても、すぐにすべてのプラスチックやゴムが同じ幅で上がるわけではない。原油価格はあくまで最初の警報であり、その次にナフサを見る必要がある。

指標2 次に見るべきは「ナフサ価格・ナフサスプレッド」

調達担当にとって、原油以上に実務的なのがナフサである。ナフサは、エチレンなどの基礎化学品を作る主要原料であり、プラスチックや合成ゴムのコストに直結しやすい。経産省資料でも、ナフサはエチレン等を経てプラスチック製品などの生産につながるとされている。 

直近では、S&P Globalが2026年2月時点でC+F Japanナフサが数カ月ぶり高値に達したと報じており、ロイターもアジアのナフサマージン急騰を伝えている。 

  • C+F Japanナフサなどのアジア指標
  • 原油に対してナフサがどれだけ強く上がっているか
  • 一時的な原油高か、石化原料不足を伴う上昇か

原油だけが上がる局面と、ナフサが相対的に強く上がる局面では意味が違う。後者は、プラスチックやゴム原料の調達条件が一段と悪化しやすいシグナルである。つまり、ナフサスプレッドが広がる局面は、「ただのエネルギー高」ではなく、石化材料そのものが逼迫し始めているサインと見た方がよい。

指標3 ホルムズ海峡を中心とした「中東物流の情勢」

3つ目は、地政学ニュースである。ただし、漠然と中東情勢を見るのではなく、ホルムズ海峡が実際に物流上どうなっているかを見ることが重要だ。

ロイターは、ホルムズ海峡を毎年200億〜250億ドル相当の石油化学品が通過していると報じた。さらに、今回の混乱では同海峡経由の石化供給が詰まり、世界のポリエチレンやポリプロピレン市場が強く影響を受けているとしている。

ホルムズ海峡の通航制限 ナフサ・樹脂船の遅延 代替航路の可否 フォースマジュール発表

中東情勢が悪化しても、物流が回っていれば即断は不要な場合もある。逆に、物流が詰まり始めると、原油以上にナフサ・プラスチック・ゴム原料の納期不安が先に顕在化しやすい。調達担当としては、ニュースを読む際に「戦況」ではなく“物流が止まるかどうか”を見ることが大切である。

指標4 ナフサクラッカー・石化設備の稼働状況

4つ目は、クラッカー稼働である。これは購買担当が見落としやすいが、実はかなり重要な指標だ。ナフサクラッカーは、ナフサを分解してエチレンやプロピレンなどを作る中核設備である。ここが止まると、その先のプラスチックやゴム原料の供給量が落ちやすい。

ロイターは2026年3月、LG Chemが麗水のナフサクラッカーを停止したと報じており、背景にはイラン情勢によるナフサ調達難があるとしている。

見るべきポイント:

ナフサクラッカーの停止・減産ニュース / 原料不足による停止かどうか / どの基礎化学品が減るのか / PE、PP、合成ゴム原料への波及可能性

価格がまだ大きく上がっていなくても、クラッカー停止は近い将来の供給逼迫予告になりやすい。特に、汎用プラスチックだけでなく、特定グレードの樹脂やゴム材料に影響が出ると、小ロット・特注品ほど苦しくなりやすい。つまり、クラッカー稼働は「今の価格」より「次の納期」を読むための指標として有効である。

指標5 最後に必ず見るべきは「在庫・リードタイム」

5つ目は、最も現場に近い指標である。それが在庫とリードタイムだ。

経産省は2026年3月時点で、ポリエチレンなどの川下製品在庫が国内需要の約2カ月分あり、中東以外からの輸入や国内精製も進めていると説明している。日本政府も、ナフサについて国内消費約4カ月分相当の確保見通しに言及している。 (経済産業省)

一方で、在庫があるから安心とは限らない。大切なのは、自社が使う品番の在庫とリードタイムである。

実務での使い方:1
汎用品は相場を見ながら先手手配
実務での使い方:2
代替困難材は安全在庫を再計算
実務での使い方:3
調達難予想品目だけ在庫方針を別管理

結局、購買現場で一番困るのは、「相場は見ていたが、現物手配が遅れた」という状態である。在庫とリードタイムは、最後に確認する指標ではなく、最終判断を下す指標と考えたい。

5つの指標は、どの順番で見ればよいのか

相場が荒れたときは、次の順番で見ると整理しやすい。

1. 原油価格: まず全体の異変を察知する。

2. ナフサ価格・ナフサスプレッド: 石化原料としての逼迫度を確認する。

3. ホルムズ海峡など中東物流: 供給障害が一時的か、本格化しそうかを見る。

4. クラッカー稼働: 基礎化学品の供給減少が起きていないかを見る。

5. 在庫・リードタイム: 自社調達へどう落とすかを決める。

この順番で見れば、ニュースに振り回されず、プラスチックやゴムの調達判断を実務に落とし込みやすくなる。

調達担当がやっておきたい初動

相場が荒れ始めたとき、指標を見るだけでは不十分である。実務では次の初動が重要になる。

初動1 Aランク品目を絞る

全部の材料を追うのではなく、まずは「代替しにくいゴム材」「主要プラスチックグレード」「小物でも止まる重要部品」から確認する。

初動2 サプライヤーに聞く項目を固定する

値上げ予定 / 現在在庫 / 新規発注納期 / 代替候補 / 供給制約の有無 を毎回同じ形式で聞くと、比較しやすい。

初動3 設計・生産技術と連携する

相場が荒れる時期ほど、「代替材を許容できるか」「仕様を少し緩められるか」を早めに確認する。調達だけで抱え込むと手遅れになりやすい。

まとめ

原油・ナフサ・樹脂相場が荒れる時、調達担当が最初に見るべき指標は次の5つである。

  • 原油価格
  • ナフサ価格・ナフサスプレッド
  • ホルムズ海峡を中心とした中東物流情勢
  • ナフサクラッカー・石化設備の稼働状況
  • 在庫・リードタイム

日本はナフサの中東依存が高く、直近ではホルムズ海峡経由の石化供給混乱とプラスチック価格上昇が実際に起きている。LG Chemのクラッカー停止も含め、今回の局面は単なる市況変動ではなく、プラスチックやゴムの調達条件そのものを見直す局面といえる。

「原油が上がった」だけで終わらせず、ナフサ → 物流 → 設備稼働 → 在庫・納期まで一気通貫で見ることが、これからの購買・調達には欠かせない。

原油・ナフサ・樹脂相場を見ている様子