ものづくりプレス

2026-09-06

ゴム部品のリバースエンジニアリング|現品から読める4情報

手元の部品を測って、同じものをもう一度作る。言葉にすると単純ですが、ゴム部品では「測れること」と「決められること」の間に開きがあります。

この記事では、ゴム部品のリバースエンジニアリングで現品から読み取れる情報と、読み取れないために別の方法で埋める情報を、はっきり分けて整理します。

作成者 久保(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月6日 最終更新日 2026年9月6日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

ゴム部品のリバースエンジニアリングとは何ですか?

現品から寸法・形状・構造を読み取り、あらためて図面を起こして同等品を作ることです。金属部品と違うのは、材質が「見れば分かる」ものではない点にあります。

ゴム部品のリバースエンジニアリングで現品から読み取れる情報と読み取れない情報を対比した図 図1 現品から読める情報と、読めない情報 現品から読める 現品からは読めない 外形と断面の形状 取り付け部の構造 硬度(使用後の値) 摩耗と破断の位置 配合とグレード 新品時の寸法と硬度 設計上の公差 想定していた使用条件 読めない側を埋めるのが、使っている側からの情報です。

材質名までは絞れても、配合までは同定できない

ゴムには何十万通り以上の配合があり、同じ材質名でも成形のしやすさや物性が変わります。そのため現品から絞り込めるのは材質名の候補までで、「まったく同じ配合」を再現するものではありません。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。

だから使用条件を先にうかがう

温度、接触するもの、圧力、使用時間。この4つが分かれば、候補の中から用途に耐える材料を選べます。逆にこの情報がないまま材質名だけで作ると、置き換えたあとの寿命が読めなくなります。リバースエンジニアリングの精度は、現品の状態よりも使用条件の解像度で決まります。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」および2026年6月の当社説明(自社情報・2026年8月時点)。

新品時の寸法は、取り付け先から逆算する

現品は使用によって寸法が変わっています。摩耗して減った箇所、膨潤して増えた箇所。そのため新品時の寸法は、現品だけからは決まりません。取り付け先の溝やハウジングは摩耗の影響を受けにくいため、そちらから逆算するほうが元の設計値に近づきます。現品と取り付け先の両方を測っておくと、どちらかが変形していた場合にも気づけます。

どこまで読み取れれば、製作に進めますか?

外形と取り付け部の形状、そして使用条件の4項目がそろえば進められます。硬度は測れれば精度が上がりますが、なくても使用条件から範囲を決められます。

ゴム部品のリバースエンジニアリングを、現物調査から量産まで4段階で示す図 図2 現品から製作までの進み方 STEP 1 現物調査 寸法・硬度・ 劣化の状態 STEP 2 材料分析 使用条件と 突き合わせる STEP 3 図面作成 公差と検査項目 を決める STEP 4 試作・量産 実機で評価 してから量産 当社ではこの流れで、図面がない状態からのご相談を受けています。

破断や摩耗の位置は、次の設計に使える

どこが先に傷んだかは、その部品の弱点を示しています。中央が破れたのか、屈曲部が裂けたのか、金具との境目から剥がれたのか。当社では現物調査の段階で、寸法と硬度に加えてこうした状態も確認します。原因が構造側にあるなら、同じ形で作り直す前にその点をお伝えします。

検査項目まで決めておくと、次の発注が楽になる

図面を起こす段階で、受け入れ時に何を確認するかも決めておいてください。寸法のどこを測るか、硬度をどの範囲で見るか、外観はどこまで許容するか。ここを決めておけば、2回目以降の発注で判断に迷わなくなります。当社は品質保証部を設置し、ご要望に合わせて抜取り検査と全数検査を自社内で行える体制を整えています。

権利の面で、気をつけることはありますか?

確認していただきたいのは、その部品を作り直すことに制約がないかという点です。当社では、権利関係の確認はご依頼者側にお願いしています。

保守用途で同等品が必要という前提でのご相談が多く、そうしたケースでは設備を動かし続けるための部品調達として進めています。一方で、他社の製品をそのまま複製して販売するといった用途は想定していません。ご依頼の背景を最初にお知らせいただけると、進め方の相談がしやすくなります。

社内の判断に使う材料をそろえておく

作り直しを進めるには社内の承認が要ります。その場で聞かれるのは、在庫が尽きるまでの期間、代替品で置き換えられるかどうか、そして作り直しに必要な期間の3点です。この3つを並べておけば、判断する側も比べやすくなります。

自社の部品は、どこまで情報がそろっていますか?

当てはまる項目が多いほど、現品からの推定に頼る部分が増える状態です。足りない項目が見えたら、そこから確認してください。

読み取れる情報のセルフチェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個読み取れる情報がそろっています。現品と条件を送っていただければ検討に入れます。
2〜3個推定に頼る部分が残ります。使用条件と取り付け先の寸法から先に埋めてください。
4〜6個推定が多くなる状態です。試作で確かめる段階を必ず挟む前提で進めることをおすすめします。

作り方は、どのように選びますか?

数量と形状で選びます。金型を作って成形するのか、金型を使わない方法で用意するのか。ここが費用と納期の両方を左右します。

数量が少ない場合と継続量産の場合で、金型を使わない方法と金型成形のどちらが向くかを示す図 図3 数量で変わる、作り方の選び方 少量 継続量産 少量なら金型を使わない方法から。継続して使うなら金型成形のほうが1個あたりを抑えられる。 分かれ目は形状と年間数量によって変わります。数量計画をうかがったうえでご提案します。

当社はゴム製品ではコンプレッション成形や焼付成形、樹脂製品ではインサート成形を得意としています。金型を作るほどの数量でない場合は、切削加工・3Dプリントで形状を確認してから量産方法を決められます。工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較でも整理しています。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

現品は洗わず、外したままの状態で送る

汚れや変色は情報です。洗ってしまうと、接触していたものや温度を推定する手がかりが消えます。取り外した状態のまま袋に入れて、取り付け位置が分かるようにメモを添えてください。複数個ある場合は、状態の違うものを2〜3個そろえていただけると、劣化の進み方まで読み取れます。すべて同じように傷んでいるのか、特定の1個だけが早く傷んだのかで、原因の見立てが変わります。

材質を「推定」と書くのは、逃げではなく前提

現品から配合まで同定できると書く業者もありますが、当社は絞り込みの範囲を正直にお伝えする方針をとっています。推定であることを共有したうえで、実機で確かめる段階を置く。この進め方のほうが、置き換えたあとに想定と違う結果が出たときに原因をたどれます。

リバースエンジニアリングについて、よくいただくご質問は?

材質の特定、権利面の扱い、図面のみの依頼、耐久性の向上についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

現品から材質を特定できますか?
硬度と表面の状態、使用条件を突き合わせて候補を絞ります。配合まで同定するものではないため、「同じ材質名の別の配合」になる可能性は残ります。

他社が作った部品でも作り直せますか?
権利関係の確認はご依頼者側でお願いしています。保守用途で同等品が必要という前提でご相談いただくケースが多く、確認が済んでいる範囲で承っています。

図面だけ作ってもらうことはできますか?
当社は製作までを前提にご相談を受けています。図面作成は現物調査から量産までの工程の一部として実施しています。

元の部品より長持ちさせることはできますか?
破れ方や摩耗の偏りから原因が読み取れた場合、材質や形状の見直しをご提案することがあります。ただし結果を保証するものではなく、実機での評価が前提になります。

金属と一体の部品でも対応できますか?
ゴム製品ではコンプレッション成形や焼付成形、樹脂製品ではインサート成形を得意としています。一体構造のまま現品をご確認させてください。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

現品、使用条件、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

資料をダウンロードする

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