ものづくりプレス

2026-09-05

現物合わせでゴム部品を製作する|図面なしで進める4段階

手元にあるのは、擦り減った部品が1個だけ。図面はどこにもない。それでも設備は動かし続けなければならない。

この記事では、現物合わせでゴム部品を作るときに何を測り、何を推定し、どこで確かめるのかを、順番どおりに整理します。

作成者 西田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月5日 最終更新日 2026年9月5日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

現物合わせでのゴム部品製作は、何から始めますか?

現品の寸法を取り、材料を推定し、使用条件と突き合わせるところから始めます。図面がある場合と違い、寸法も材質も「決まっている」のではなく「読み取る」対象になります。

現物合わせでゴム部品を製作する流れを、採寸から試作評価まで4段階で示す図 図1 現物合わせで進めるときの4段階 STEP 1 採寸 外形・断面・ 取り付け部 STEP 2 材料の推定 硬度と表面状態 使用条件と照合 STEP 3 図面を起こす 公差を決める 検査項目も決める STEP 4 試作で確かめる 実機に付けて 評価してから量産 推定を含む工程のため、実機で確かめる段階を必ず挟みます。

測る値と、決める値は別物

現品から測れるのは「使用後の値」です。摩耗して減った寸法、膨潤して増えた寸法、硬くなった、あるいは軟らかくなった硬度。これらをそのまま指定値にすると、元とは違う部品になります。測った値を出発点にして、使用条件と突き合わせて「決める」工程が必要です。

取り付け先も測れると、精度が上がる

現品だけでなく、取り付け先の寸法も測れると推定の幅が狭まります。溝やハウジングは摩耗の影響を受けにくいため、元の設計値に近い情報が残っているためです。設備を止められるタイミングがあれば、その1回で現品と取り付け先の両方を測っておいてください。

出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ掲載のご相談内容(2026年8月確認)。「廃盤し現物はあるが図面がない」は、当社にいただくご相談として掲載しているものです。

欠けている現品でも、対称性から補える場合がある

現品の一部が欠けていても、円形やリング状のものなら残った部分から全体を推定できます。断面が一定の形状であれば、健全な箇所を1か所測れば断面が決まります。逆に、場所によって断面が変わる部品は、欠けた部分の情報が戻りません。その場合は取り付け先の形状から逆算するか、同型の設備に付いている部品を1個外して測らせていただくことになります。

材料は、どうやって推定するのですか?

硬度と表面の状態、そして使用条件の3つを突き合わせて絞り込みます。見た目だけで材質を確定することはできないため、使っている側の情報が欠かせません。

略号 名称 特徴
NBRニトリルゴム最も一般的な材料。耐油性や耐摩耗性が良い反面、耐候性は良くない
HNBR水素化ニトリルゴムNBRの耐候性や耐熱性を改良したグレード。耐寒性やコスト面ではNBRに劣る
CRクロロプレンゴム機械的強度や耐候性、難燃性に優れ、自己消化性のあるバランスの良いゴム
FKMフッ素ゴム耐熱性・耐油性・耐薬品性・耐オゾン性に優れる。耐寒性が低く、有機酸・ケトン・エステル・アミン系に耐性がない
VMQシリコーンゴム優れた耐熱性・耐オゾン性・耐寒性を持ち、生理不活性でもある

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

加工方法の選び方はゴム・樹脂の加工方法を比較にまとめています。材料が絞れたあと、どの作り方が合うかを考える段階で参照してください。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」主要合成ゴムの特性(2026年8月確認)。

用途を先に聞くのは、材料を絞るためだけではない

同じ形の部品でも、止めるものが油なのか薬品なのかで選ぶ材料は変わります。さらに、屋外か屋内か、連続運転か断続かでも候補は動きます。当社が使用条件をうかがうのは、材料を絞るためだけでなく、「元の部品がなぜその材質だったのか」を推し量るためでもあります。設計の意図が読めれば、再現の精度が上がります。

公差は、どのように決めればよいですか?

現品の実測値をそのまま公差にするのではなく、機能から必要な範囲を決めます。ゴムは材質と配合で収縮率が変わるため、金属部品と同じ考え方では決められません。

ゴム部品の公差を現品の実測値から決める場合と、機能要件から決める場合の違いを対比した図 図2 公差を「測って決める」場合と「機能から決める」場合 機能から決める 実測値から決める どこが効いているかを特定 効く部位だけ厳しくする 効かない部位は緩める コストと歩留まりが安定 全部位を同じ精度で指定 摩耗した値を引き継ぐ 不要な精度でコストが上がる 作れる先が減る 全部を厳しくするより、効く部位を見極めるほうが結果的に安定します。

どこを厳しくしてどこを緩めるかの考え方はゴム部品の図面公差は「1段緩める」が正解で整理しています。

自社の部品は、現物合わせで進められる状態ですか?

当てはまる項目が多いほど、推定に頼る部分が増える状態です。足りない情報が見えたら、そこから確認してください。

現物合わせで進める前の情報チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個現物合わせで進められる状態です。現品と条件を送っていただければ検討に入れます。
2〜3個推定に頼る部分が残ります。取り付け先の寸法と使用条件から先に埋めてください。
4〜6個推定が多くなる状態です。試作で確かめる段階を必ず挟む前提で進めることをおすすめします。

試作は、必ず挟んだほうがよいのですか?

現物合わせは推定を含むため、実機で確かめる段階を置いたほうが手戻りが少なくなります。図面どおりに作れていても、組み付けた状態での動きまでは図面から読み取れないためです。

推定に頼る部分が少ない場合と多い場合で、試作を挟む必要性が変わることを示す図 図3 試作を挟むかどうかは、推定の多さで決まる 推定が少ない 推定が多い 材質も取り付け先も分かっているなら試作は省ける。分からない項目が多いほど、試作で確かめる価値が上がる。 判断は品物と用途によって変わります。ご相談のうえで決めていきます。

当社では現物調査・材料分析、設計・図面作成、試作・評価、量産・納品という段階で進めています。金型を作るほどの数量でない場合は、切削加工・3Dプリントで形状を確認してから量産方法を決められます。

試作で見るのは、寸法ではなく動き

試作品の寸法が図面どおりかは、測れば分かります。確かめたいのはその先で、組み付けたときに想定どおり働くかどうかです。締め付けたときのつぶれ方、動いたときの戻り方、隣の部品との干渉。ここが合っていれば、量産に移っても同じ結果が出ます。

同じ部品を継続して使うなら、初回に決め切る

1回きりの補修なら、そのとき合えば十分です。けれども継続して使う部品なら、初回に材質と公差、検査項目まで決めておいたほうが、2回目以降の発注が楽になります。初回を「とりあえず動けばよい」で通すと、次に頼むときに同じ推定をやり直すことになります。

現物合わせの製作について、よくいただくご質問は?

図面からの製作との違い、現品の扱い、試作の要否についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

現物合わせと図面からの製作は、何が違いますか?
出発点が違います。図面があれば寸法と材質が決まった状態から始まりますが、現物合わせは現品を測り、材料を推定し、図面を起こすところから始まります。

現品が1個しかありません。壊れませんか?
寸法と硬度の測定で形が変わることはありません。ただし硬度計を当てると跡が残る材料もあるため、寸法を取り終えてから測ります。

取り付け先の設備は止められません。どうすればよいですか?
現品と、取り付け先の寸法が分かる情報があれば検討を進められます。次に設備を止めるタイミングで測る箇所をお伝えしますので、その1回でまとめて確認してください。

試作を挟まずに量産できますか?
できる場合もありますが、当社では試作で確認してから量産に移ることをおすすめしています。現物合わせは推定を含むため、実機で確かめる段階を置いたほうが手戻りが少なくなります。

何個から作ってもらえますか?
多品種少量生産を得意としており、1点からの試作のご相談も承っています。年間の使用数もあわせてお知らせいただくと、工法の提案がしやすくなります。

依頼するとき、何をそろえればよいですか?

現品、使用条件、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

当社は相見積もりを歓迎しています。条件をそろえて出したほうが比較できる見積りになりますので、条件の整理からご相談いただいて構いません。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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