ゴム
2021-05-21
ゴム充填剤の役割と種類
工業用製品や日用品として広く用いられているゴムですが、実は純粋なゴム素材だけで作られているわけではありません。ゴム製品には、使用目的や製造計画に合わせた「ゴム充填剤」が必ず用いられています。
充填剤の添加は、ゴムの補強や製造量アップに欠かせないものです。当記事ではそんなゴム充填剤の概要と種類を解説します。
ゴム充填剤とは?効果と役割
ゴム充填剤(フィラー)とは、製造時にゴムへ混合することで引張強度の補強や耐摩耗性等の性能向上させる配合剤のことです。
充填剤をゴムに加えるおおまかなメリットは次のとおりです。
- 強さを付与することによる補強性の向上
- 伝導性や磁性などの特性を付与することによる業種や製品に応じた対応力向上
充填剤は、例えば車のタイヤゴムにも昔から使用されてきました。「車のタイヤは黒色!」というイメージがあるのは、タイヤに使用されるゴムに「カーボンブラック充填剤」が加えられてきたためです。
このように充填剤は、ゴムの製造現場においては必ず使用されている非常に重要なアイテムになります。むしろ何も加えていない純ゴムだと製品用として使うのが難しいことから、実用のためには必須といえるでしょう。
ゴムに加える充填剤の種類によって、付与される強度や特性などの物理的性質が変化します。
ゴムに配合されている主な充填剤
ゴムの配合のよく用いられる主な充填剤は次のとおりです。
- カーボンブラック
- シリカ
- 炭酸カルシウム
- クレー
それぞれの詳細をみていきましょう。
カーボンブラック
カーボンブラックとは、「カーボン」と「ブラック」と付いているとおり、炭素からできた黒色の微粒子です。車のタイヤ用を始め、工業用のゴム充填剤としてさまざまな場面で使用されてきました。
カーボンブラックの充填剤を加えるメリットは次のとおりです。
- ゴムの強度が向上する
- 耐久性や耐摩耗性が向上する
- タイヤ寿命が伸びる
- 帯電防止効果が向上し電子機器や車の給油口キャップなどに使える など
また性能向上のほかにも、高い親油性のおかげでゴムと混ざりやすいこともメリットといえます。
カーボンブラックは1890年代より使われている歴史ある充填剤です。ゴムだけでなく新聞の印刷用といった塗料、樹脂・フィルムの着色、電子機器部品の製造といった場面で活躍しています。
ただしカーボンブラックは着色が難しいため、すべてのゴム素材に使えるわけではありません。カーボンブラックが用いられない場合は、シリカや炭酸カルシウム、クレーなどの「白色フィラー」を使います。
シリカ
シリカはカーボンブラックとならんで優れた補強性を持つ物質です。シリコンやシリコーンと同じ「ケイ素」を意味します。
シリカの充填剤を加えるメリットは次のとおりです。
- ゴムの強度が向上する
- 耐屈曲疲労性が向上する
- カーボンブラックより転がり性能に優れ低燃費のタイヤに仕上げられる
ただしシリカはカーボンブラックと比べると親水性が強いため、ゴムと混ざりにくい物質です。タイヤの場合はこのウィット性能が転がり性能につながっていますが、ゴム製造現場では多量に配合することが難しくなります。
しかしシランカップリング剤を加え、ゴムとシランカップリング剤を化学反応させることで、ゴム中への分散を手助けできます。
現在はカーボンブラックとともにゴムタイヤの充填剤として注目されています。
炭酸カルシウム
炭酸カルシウムは黒板用のチョークや製紙などでも用いられる物質です。化学反応を加えることで、ゴムの充填剤としても使えるようになります。粒子の大きさによって性能が異なるのも炭酸カルシウムの特徴です。
炭酸カルシウムの充填剤を加えるメリットは次のとおりです。
- 耐熱性が向上する
- ゴムの硬さを変化させないなど高充填しやすいため、経済性・加工性が向上する
- 強度性を加えられるがカーボンブラックやシリカに劣る傾向がある
加工性と補強性を両立させるために、カーボンブラックと炭酸カルシウムを併用して使用される例もあります。
またシランカップリング剤で表面処理を施した超微粒子合成炭酸カルシウムでなら、分散が難しいシリカやカーボンブラックの分散性を改善する分散助剤としての役割や、ゴム弾性の向上も狙うことも可能です。
クレー
クレーはいわゆる粘土のことです。そう、テニスコートで土のコートはクレーコートと呼ばれ、全仏オープンで採用されてますよね。ゴムの充填剤以外としても、製紙や塗料の増量剤として用いられてきました。
ゴムの充填剤として用いられるのは「カオリンクレー」と呼ばれ、さらに補強効果のあるハードクレーと効果を少ないソフトクレーに分かれます。
クレーの充填剤を加えることでゴムの強度が上がるほか、カーボンブラックが使えない製品にも添加できる点がメリットといえます。
ゴムの製造には充填剤が欠かせない!
ゴムの製造には必ず充填剤が用いられます。もっともポピュラーな充填剤はカーボンブラックですが、タイヤのグリップ性能向上や経済性の優先などの要因から、シリカや炭酸カルシウム、クレーなどの白色フィラーが用いられることも多いです。
ゴム本体の製造やゴム素材を用いた加工は、こうした充填剤の配合量や性能が考えられていることを理解しておくと、よりゴム製造への知見が深まるはずです。
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