ゴム
2021-08-25
自動車に使用されるゴム部品
自動車のゴムといえばタイヤを思い浮かべる場合も多いと思いますが、実際にはタイヤ以外の部品にもさまざまな形でゴムが使われています。
自動車部品に使用されるのは工業用ゴムです。そして適切な自動車の駆動や防振・防音を行うには、高い耐油性や耐熱性、そして摩擦や引き裂きへの強さを持ったゴムを選定しなければなりません。
当記事では自動車部品としてのゴムの概要やゴム素材、自動車に使われているゴム部品の種類を解説します。
自動車には多くのゴム部品が使用されている
自動車とゴムの歴史は古く、タイヤにゴム が使われ始めたのは1867年と、約150年以上前になります。ゴムのタイヤが使われる前は、鉄のタイヤが使われていました。現在の空気入りのタイヤが登場したのは1890~1900年頃だとされています。
自動車に使うゴム部品といえば、一般的にはタイヤが有名です。しかし実際のところはタイヤ部分以外にも、非常に多くのゴムが自動車の部品として用いられています。
自動車部品に使われているのは「工業用ゴム」です。工業用ゴムは、自動車以外には油圧機器や工作機器、溶断用ゴムホースなどで使われています。
自動車部品として使われるゴム素材
自動車部品として使われているゴム素材は、エンジンやそのほか機械的に駆動する箇所など、エンジンオイルとの直接接触や機械的摩耗に対して強い特性を持つものが適切です。
具体的には次のゴム素材がよく使われます。
- NBR ニトリルゴム:耐油性に優れており、さまざまな自動車部品に用いられるが、耐寒性や耐候性が劣る
- NR 天然ゴム:耐摩耗性や伸縮性に優れているが、耐熱性や耐油性に劣る
- FKM フッ素ゴム:高い耐熱性や耐油性、耐オゾン性に優れるがコストがかかる
- Q シリコンゴム:耐熱性や耐寒性に優れているが、機械的な摩耗や引き裂きに弱い
- U ウレタンゴム:優れた機械的強度と耐油性を持つが、耐水性や耐熱性が劣る
- CR クロロプレンゴム:耐油性や耐熱性、耐候性についてバランス良い性能を持つが電気絶縁性や耐水性は劣る
- IIR ブチルゴム:耐熱性や耐寒性に優れているが、耐油性が劣る
- EPDM エチレン・プロピレンゴム:耐熱性や耐オゾン性に優れているが、油に対して非常に弱い
など
上記のように、機械的な強度が高いもの、熱や寒さに強いもの、油を苦としないものが選ばれます。
自動車にはどんなゴム部品が使われている?
自動車に使われているゴム部品は主に次のとおりです。
- 防振ゴム
- シール系
- ホース/ベルト
- ワイパー
- タイヤ
以下で詳細をみていきましょう。
防振ゴム
防振ゴムとは「防振」の名前のとおり、振動や衝撃の防止および緩和させるために使用するゴムのことです。
自動車は車内と車外問わず、多くの振動が発生します。防振ゴムを自動車部品として用いることで、以下の効果が期待できます。
- エンジン部やボディなどで発生する振動を減らし、乗り心地の快適さや操作性の向上を行う
- ゴムが持つ弾性によって、外部からの衝撃や衝撃後に発生する振動を吸収し、他の部品を保護して破損や故障を防ぐ
- 振動によって発生するさまざまな騒音を遮断し、運転中に騒音が出ないようにする
自動車の防振ゴムは、耐熱性や耐久性、ばね特性に優れたゴム素材を選ぶ必要があります。天然ゴムやエチレン・プロピレンゴムなどが一般的です。
防振ゴム は自動車のサスペンション(車体が路面から受ける衝撃を緩衝する)やエンジンマウント、ラバープッシュ、排気管部などの箇所に取り付けられます。
シール系
自動車部品におけるシール系のゴムは、自動車のエンジン部やギヤードモーターなどの「摺動部(回転軸やピストンなど)からの油漏れをシール(封印)」する役割を持ちます。また外部からのほこりやゴミなどの異物の侵入を防ぐのも、シール系のゴムの役割です。
ゴムパッキンのように機械のすき間や部品の間を防ぐ「オイルシール」や「Oリング」、給油ポンプやコンプレッサーの回転軸の封印に用いる「メカニカルシール(回転用のオイルシール)」などがあります。
もしシール系が機能しないと、エンジン部から油が漏れて適正な油量が確保できず、各機械部の潤滑が滞ります。その結果、部品の焼け付きによってエンジンが故障するかもしれません。また外部からの異物混入によって、回転軸やピストン部の削れや摩耗が発生する危険もあります。
シール系でよく使われるのは、耐油性・耐摩耗性に優れ、工業用ゴムとして広く活躍するニトリルゴムです。熱や摩耗が発生しやすいエンジンまわりのクランク軸や軸受、ピストン部などからオイルが漏れを防ぐ目的で取り付けます。
ホース/ベルト
自動車部品で用いられるゴムホースは、自動車の中の各部品を連結し、燃料や油、気体、冷却水などの流体を通す役割を持ちます。ゴムホースが輸送する流体とは、例えば次のとおりです。
- 燃料系:ガソリンや軽油
- 冷媒系:空調機用のエアコンシステムに用いる冷媒
- エンジン系:エンジンオイル
- 水系:エンジン冷却用の水
- ブレーキ系:ブレーキオイル
- エアコン系:空調用の空気
など
上記はすべて自動車の駆動や安全機能、乗用車としての快適性を保つための大切な流体です。そのためゴムホースもタイヤと同じく重要な部品と言えます。ほとんどの場合、高温の環境で使用されることから、耐熱性の高いゴム素材が選ばれます。
一方、自動車部品のベルトは自動車内のさまざまな動力を各所へ伝える役割を持ちます。具体的な役割は次のとおりです。
- エンジンの内部で使い動力を伝える「タイミングベルト」
- エアコンや冷却ファン、オルタネーター、コンプレッサー、パワーステアリング用ポンプなどの補助類用の「Vベルト」
もしベルトが切れると、エンジンやエアコンの停止、オーバーヒートなどにつながる上に、破損したベルトの欠片によって他部品に悪影響を与えるかもしれません。そのためベルトには高い耐久性、耐摩耗性および屈曲性を持つゴム素材が使われます。また動力源からの動力を適切に伝える能力も必要です。
ワイパー
自動車のフロントガラスやリアガラスの水滴を取り除くワイパーにも、ゴムが使われています。ワイパーブレードとも呼びます。
ワイパーとしてゴムには、水滴を適切に払い去るための払拭性が必要です。そのため、曲げや変形でガラス面に対しての接着面が減ったり、水がうまく払えなかったりするリスクが高い素材を避けます。また摩擦に対する強い耐性も必要です。
同時にガラスとワイパーがこすれる時の音が抑えられるタイプがよいでしょう。
タイヤ
誰でも一度は見たことがある自動車のタイヤですが、特殊なものでない限り、タイヤのほとんどは黒色であるとご存じでしょうか。なぜタイヤの色が黒いのかというと、タイヤのゴムに「カーボンブラック」と呼ばれる炭素主体の粒を混ぜているためです。ゴムが保つ特性だけでは、タイヤに必要な能力を満たすが難しくなります。
カーボンブラックとはゴムの補強剤の一種で、ゴムの加工を行うときに投入します。
カーボンブラックを投入することで、タイヤのゴムは凸凹の路面にも負けない強度を得られます。また何百kgという重いボディを支えられるのも、カーボンブラックによってボム強度を上げているからです。
なお自動車のタイヤには補強剤以外にも、さまざまな種類のゴム配合剤やタイヤコード、数種類のゴム素材が配合されています。
自動車部品にとってゴムは欠かせない素材である
古くより自動車の部品としてゴムが用いられており、今日まで自動車のさまざまな部分にて、高い耐熱性や機械的特性、耐油性を持つ工業用ゴムが活躍しています。
一番身近なゴム部品は自動車のタイヤですが、他にも振動や衝撃を吸収する防振ゴムやオイルを封印するシール系、オイルや燃料を流すホース、動力を伝えるベルトなど、自動車のあらゆる箇所にゴムが使われています。まさにゴムは、自動車の部品として欠かせない素材といえるでしょう。
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