ものづくりプレス

2026-01-05

シール不良のトラブルシュート──Oリング・パッキン・ガスケットの“見た目”から原因を特定する

Oリングの破損状態を拡大鏡で検査しているイラスト。かじり、膨潤、へたりといった代表的なシール不良モードを図解し、トラブルシュートと原因特定をイメージしている。

1.なぜ「写真付きの事例集」がシール不良のトラブルシュートに効くのか

シール不良の原因は、材質ミスマッチ、溝設計、圧力条件、組み付けミスなど多岐にわたります。
現場担当者にとって、「この割れ方は材質が原因か?」「圧力の問題か?」といった判断は、言葉だけでは難しいものです。

そこで役に立つのが、“見た目”から当たりをつけるための写真付き事例集です。
本記事では、代表的なシール不良の外観パターンと、そこから推定できる原因・対策を解説します。

シール不良・トラブル原因解析 無料診断

現場で発生しているシール不良を体系的に整理し、「どのトラブルが設計起因で、どれが運用起因か」を切り分けたい場合はご相談ください。
代表的な不良品の写真と条件情報をもとに、原因仮説と改善方向をレポート形式でご提示します。

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2.シール不良トラブルシュートの基本視点

写真を見る前に、最低限おさえておきたい視点は次の3つです。

  • どこから漏れているか?(接液側/大気側/接合面/ねじ部 など)
  • いつ発生したか?(立ち上げ直後/徐々に/長期使用後)
  • どのように壊れているか?(かじり・裂け・割れ・膨潤・硬化・つぶれ・削れ)

この3つを意識しながら以下の事例を見ると、現場での「原因の切り分け」が格段にやりやすくなります。

【あわせて読みたい】
シール不良のうち、「溝設計」に起因するトラブルを重点的に学びたい方はこちら。
Oリング溝設計でやりがちな5つのミスと、その防ぎ方

3.事例①:Oリングの「かじり・押し出し」(高圧+クリアランス過大)

外観の特徴
Oリングの一部が“噛み千切られた”ように欠けている、エッジ部がギザギザしている、断面が変形している。

主な原因の候補

  • 溝クリアランスが大きく、高圧時に隙間から押し出される
  • パルス圧・急激な圧力変動
  • バックアップリングの欠如

対策の方向性

  • 溝クリアランスの見直し
  • バックアップリングの追加
  • 高硬度グレードや耐熱性材質への変更

4.事例②:回転軸シールの「摩耗・焼け」(潤滑不足・偏心)

外観の特徴
リップ部が一方向に偏って磨り減っている、接触面が鏡面状に光っている、部分的に焼けて茶色〜黒色に変色している。

主な原因の候補

  • 潤滑不足(油膜切れ)による発熱・摩耗
  • 軸の偏心・振れ
  • 軸の表面粗さが粗すぎる/傷がある

対策の方向性

  • 潤滑油の供給量・種類の見直し
  • 軸受・芯出し・アライメントの再調整
  • 軸の表面処理(メッキ・コーティング)検討

5.事例③:Oリングの「膨潤・ふくれ・表面のベトつき」(薬品ミスマッチ)

外観の特徴
外径・断面が明らかに太くなっている、表面がベタベタ・ヌルヌルしている、指で押すと柔らかすぎる。

主な原因の候補

  • 使用流体・薬品に対する耐薬品性不足
  • 想定外の薬品(洗浄剤・潤滑油)の接触
  • 温度による薬品浸透の加速

対策の方向性

  • 耐薬品性表との照合・再選定
  • より耐薬品性の高い材質(FKM, FFKM等)への変更
  • 不要な薬品接触プロセス(洗浄残渣)の見直し

【あわせて読みたい】
材質ミスマッチを根本から減らしたい方はこちら。
Oリング材質選定フローチャート|温度・薬品・圧力・コストをどうトレードオフするか

6.事例④:Oリングの「つぶれ・角の丸まり」(圧縮永久ひずみ・締め過ぎ)

外観の特徴
断面が「〇」から「□」や楕円に変形している、取り外しても元の形に戻らない。

主な原因の候補

  • 締め付けトルク過大
  • 高温環境による圧縮永久ひずみの進行
  • 材質特性のミスマッチ
  • 長期間の無交換使用

対策の方向性

  • トルク管理の徹底
  • 耐熱・耐へたり材質(FKM・シリコーン等)の検討
  • 定期交換サイクルの見直し

7.事例⑤:シール面の「キズ・かみ込み・異物付着」(組み付け・環境要因)

外観の特徴
筋状のキズ・切れ目がある、異物を噛んだ跡がある、ナイフで切ったような傷が連続している。

主な原因の候補

  • 組み付け時の無理な押し込み・引っかけ
  • 清掃不足による異物噛み込み
  • 金属工具での直接接触

対策の方向性

  • 潤滑剤の使用と正しい組み付け手順の徹底
  • 清浄度管理の強化
  • 専用樹脂工具の使用

【あわせて読みたい】
機能ベースでのシール選定・使い分けの考え方を整理したい方はこちら。
パッキン・Oリング・オイルシール・ガスケット──「呼び名」ではなく「機能」で整理する設計の考え方

8.シール不良トラブルシュートの進め方チェックリスト

写真と外観だけに頼らず、原因を体系的に絞り込むための簡易フローです。

  • 不良品の外観を記録する:取り外し前後の撮影、新品との比較
  • 使用条件を整理する:温度・圧力・流体・サイクル条件
  • 設計情報を確認する:材質・寸法・トルク値
  • 運用・保全情報を確認する:組み付け手順・交換履歴・プロセス変更有無

シール不良事例データベース構築サポート

「現場で撮り溜めたシール不良写真を、社内ナレッジとして整理したい」というご要望にも対応しています。
写真・条件情報・対策をテンプレート化し、社内標準として整備するお手伝いをいたします。

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9.まとめ:写真で「見える化」して、属人化したシール不良対応から卒業する

シール不良対応はベテランの勘に頼りがちですが、外観写真・使用条件・発生タイミングをセットで整理することで、再現性のあるトラブルシュートが可能になります。
本記事の事例・チェックポイントを参考に、自社設備のシール不良もぜひ“写真付きで記録・共有”してみてください。

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