ものづくりプレス
2026-03-25
ナフサ不足で合成ゴムが天然ゴムより高い時、調達担当はどう判断するべきか?選定・代替・在庫の実務を解説
ナフサ不足で合成ゴムが天然ゴムより高い時、調達担当はどう判断するべきか?選定・代替・在庫の実務を解説
中東情勢や原油高のニュースが続くと、多くの企業はまず燃料費や輸送費を気にする。 しかし、製造業の調達現場で見逃せないのは、その先にあるナフサ不足と、さらにその先にある合成ゴム価格の上昇である。
もともと合成ゴムは、ブタジエンなど石油化学由来の原料に大きく依存している。 そのため、原油 → ナフサ → 基礎化学品 → 合成ゴムという供給連鎖が揺れると、天然ゴム以上にコストと供給の影響を受けやすい。
実際、ロイターは2026年3月、中東情勢の悪化でホルムズ海峡経由の石化供給が詰まり、ナフサやプラスチック、合成ゴムの供給に影響が広がっていると報じている。中国では合成ゴム生産が約3分の1落ち込む可能性も示されており、原料不足がすでに川下へ波及している。
このような局面では、調達担当の中で「天然ゴムの方が安いなら、そちらに切り替えればよいのではないか」という発想が出やすい。しかし実務では、価格だけで判断すると危険である。
本記事では、ナフサ不足で“合成ゴム>天然ゴム”になる時、調達担当は何を基準に判断すべきかを整理する。
なぜ今、合成ゴムが天然ゴムより高くなりやすいのか
合成ゴムは、石油化学の上流にある原料価格の影響を受けやすい。特にアジアはナフサ依存度が高く、中東由来の供給不安が起きると、プラスチックだけでなく合成ゴムにもコスト圧力が強くかかる。ロイターは2026年3月、アジアのナフサマージンが大きく上昇し、アジアの石化メーカーが減産や調達見直しを迫られていると報じた。さらに同月の記事では、ナフサ不足が中国の合成ゴム生産にも影響し、価格上昇を招いていると伝えている。
一方、天然ゴムは農産物由来であり、ナフサ不足の直撃をそのまま受けるわけではない。そのため、ナフサが急騰・不足する局面では、合成ゴムの方が先に大きく上がりやすい。
この構造は市場でも意識されており、商品市況では「天然ゴムは合成ゴムとシェアを競うため、原油高や合成ゴム高の影響を受ける」と説明されることがある。つまり、合成ゴムが上がる局面では、天然ゴムも連れ高することはあるが、合成ゴムの方が強く上がる場面が起こり得る。
そもそも、天然ゴムと合成ゴムは何が違うのか
価格が逆転したとしても、天然ゴムと合成ゴムは単純に入れ替えられるわけではない。まず前提として、両者は得意分野が異なる。
天然ゴムが得意なこと
- 高い伸び / 強い引張特性
- しなやかさ / 反発弾性
- 動的特性が重要な用途
合成ゴムが得意なこと
- 耐油性 / 耐熱性
- 耐候性 / 耐薬品性
- 用途に合わせた配合設計のしやすさ
調達担当が判断すべきなのは「どちらが安いか」ではなく、
「その部品に必要な性能をどちらが満たせるか」である。
調達担当が最初に確認すべき実務ポイント
1. その部品は“何のためのゴム”か
判断の第一歩は用途の分解である。ゴム部品の役割を明確にし、天然ゴムのしなやかさで良いのか、合成ゴムの耐熱・耐油性が必要なのかを再定義する。
2. 価格差ではなく“総コスト差”を見る
材料単価だけでなく、加工性、寿命、交換頻度、クレームリスクまで含めた総コストで比較する。今の比較軸は「安い・高い」より「使い続けられるか」に寄せるべきである。
3. 天然ゴムへ寄せられる部品と、寄せにくい部品を分ける
4. 在庫はどちらが持ちやすいか
日本政府は約4か月分相当のナフサ確保見通しを示しているが、合成ゴムは調達が不安定になりやすい。天然ゴムを含め、どちらが納期ブレしにくいかも重要な判断材料である。
5. 天然ゴム・合成ゴム以外の選択肢も持つ
TPEへの切替、樹脂化、仕様緩和。二択ではなく、必要機能を分解して設計ごと見直す方が、調達の自由度は上がりやすい。特定原料への依存度が高い企業ほど、この見直しが重要になる。
実務で使える判断フロー
まとめ
ナフサ不足で“合成ゴム>天然ゴム”になる局面では、調達担当が見るべきなのは単価差だけではない。合成ゴムはナフサや石化原料に強く依存するため、中東情勢の悪化でアジアの石化供給が詰まると、天然ゴム以上に価格と供給が揺れやすい。
判断の基準は次の5つになる。
- その部品に求める役割は何か
- 天然ゴムで性能を満たせるか
- 総コストでどちらが有利か
- 在庫と納期はどちらが安定するか
- 他の代替材まで含めて考えられているか
合成ゴムが天然ゴムより高いからといって、すべて天然ゴムへ切り替えるべきではない。しかし、“どちらが安いか”ではなく、“どちらが使い続けられるか”で判断することが今の調達実務では重要である。
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