ものづくりプレス

2024-01-14

複層ガラスとは?Low-Eとの違いやメリット・デメリットを解説

新築戸建住宅の窓には、主に複層ガラスが利用されています。しかし、窓に採用されるのは複層ガラスだけでなく、Low-E複層ガラスや二重サッシなど多岐にわたるため、それぞれの特徴を把握することが重要です。
本記事では、複層ガラスとほかのガラス構造の違いや、メリット・デメリットを解説していきます。

複層ガラスとは?Low-Eとの違いやメリット・デメリットを解説

複層ガラスとは?

複層ガラスとは、2枚のガラスの間に空間を持たせ、二重構造としたガラスのことを言います。スペーサーと呼ばれる金属部材をガラス間に挟み込み、乾燥空気を封入しているのが特徴です。ガラス間に空気層を挟むことで、断熱効果や結露防止効果など、さまざまなメリットが生み出され、住宅の窓ガラスに多く採用されています。


国土交通省が発表した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」によると、新築戸建住宅における複層ガラスの比率は面積ベースで見た際、2000年時点で40.7%でした。当時は単板ガラスの使用が一般的でしたが、その後は省エネ志向や高断熱建材への注目度も高まり、新築戸建住宅の複層ガラス普及率は2019年時点で97%を超えています。
今般において、複層ガラスは快適な生活を送る上で、不可欠な存在と言えます。

複層ガラスとペアガラス、Low-E複層ガラス、二重サッシの違い

複層ガラスと似た構造として、ペアガラス、Low-E複層ガラス、二重サッシの3種が存在します。ここでは、各ガラス構造と複層ガラスの違いを見ていきましょう。

複層ガラスとペアガラスの違い

複層ガラスと混在されやすいものとして、ペアガラスがあります。ペアガラスとは、世界最大級ガラスメーカーのAGC株式会社が手掛ける、複層ガラスの登録商標です。


昨今では、「複層ガラス=ペアガラス」と認識されるケースも増えましたが、複層ガラスはガラスの区分という位置付けであるのに対し、ペアガラスは商品名のため、厳密には意味合いが異なります。しかし、ペアガラスも一般名称として浸透するようになりました。なお、ペアガラス以外の登録商標としては、日本板硝子株式会社のペアマルチなどが存在します。


複層ガラスとペアガラスは用語が混在することもありますが、基本的には同義であることを覚えておきましょう。

複層ガラスとLow-E複層ガラスの違い

近年、高い注目を集めているガラスが、Low-E複層ガラスです。Low-E複層ガラスの「Low-E」とは、Low Emissivity(ロー・エミシビティー)の略称で、日本語では低放射を意味します。


ガラスの表面に特殊金属膜(酸化錫や銀)をコーティングしており、伝熱を抑えられるのが特徴です。日射遮蔽性能と高い断熱性能により、夏場は太陽の熱を反射して室温の上昇を防ぎ、冬場は暖かい空気の流出を防止できます。
複層ガラスにLow-Eガラスを使用したものが、Low-E複層ガラスと呼ばれ、通常の複層ガラスより高性能です。


Low-E複層ガラスの普及状況としては、同じく国土交通省のデータによると、2006年時点では新築戸建住宅で19.1%でした。しかし、2019年には82%まで普及し、その性能の高さに着目するメーカーが増えています。

複層ガラスと二重サッシの違い

二重サッシとは、すでに設置されている窓の内側に、新しい窓を設置する構造を言います。二重窓や内窓と呼ばれることもあり、防音効果や防犯対策に繋がるのがメリットです。


一見すると、二重構造のため複層ガラスと同義とも捉えられます。しかし、複層ガラスは1つのサッシ枠に窓ガラスが2枚重なっているのに対し、二重サッシは2つのサッシ枠それぞれに窓ガラスを設置する仕組みです。
設置スペースを考慮する必要があり、スペースが足りない場合は、奥行きの寸法を延長させるふかし枠を取り付けなければならないので、ご注意ください。

複層ガラスを利用するメリット

複層ガラスを住宅で利用することには、さまざまなメリットが存在します。ここでは、複層ガラスの効果を見ていきましょう。

断熱効果を得られる

複層ガラスは、2枚のガラスと空気層を挟むことで、熱が伝わりにくくなり、単板ガラスより高い断熱効果を得られます。寒い時期に使用する暖房器具の熱を室内に留め、保温効果を高めることが可能です。


また、外からの冷気の影響も受けにくく、室温の低下を防ぎます。暖かい空間を実現しつつ、省エネに繋げられるのも、居住者にとっては魅力的なポイントです。

結露の発生を抑制できる

複層ガラスを利用することで、結露の発生も抑制可能です。そもそも結露は冷えた窓ガラスに、室内の暖かい空気が触れることで発生します。


窓ガラスは外気温の影響を受けやすく、表面温度の低下も引き起こしやすくなります。しかし、外気温の影響を受けにくい複層ガラスであれば、表面温度が急激に低下せず、結露の発生を抑制できます。

複層ガラスを利用するデメリット

断熱性に長けた複層ガラスですが、防音性には大きく寄与しません。単板ガラスと比較すると、構成ガラス枚数が増えるため、多少の防音効果は得られます。しかし、防音性を求めて作られたガラスではないので、ご注意ください。

防犯性に関しても、一般的なガラスを重ね合わせているだけのため、対策としては不十分です。


ただし、メーカーの製品によっては、防音性や防犯性を高めた複層ガラスも登場しています。例えば、YKK APでは遮音効果の高い「異厚複層ガラス」、日本板硝子では防犯対策に利用できる「防犯複層ガラス」を展開しており、一概に複層ガラスが防音性や防犯性に弱いとは言えないので、覚えておきましょう。

複層ガラスと厚みの関係性

複層ガラスは、構成するガラス板の厚みが大きいほど、断熱性の恩恵も受けられそうですが、実際断熱性に深く影響するのは中空層の厚みです。JIS規格の「JIS R 3209:2018」では、耐熱性能が下記表のとおり、6種類に区分されています。



区分

ガラスの熱貫流率

W/㎡・K

代表的なガラス構成

中空層の厚み

T1

2.7超え、4.0以下

複層ガラス

12mm

T2

2.3超え、2.7以下

Low-E複層ガラス

6mm

T3

1.9超え、2.3以下

Low-E複層ガラス

12mm

T4

1.5超え、1.9以下

ガス入りLow-E複層ガラス

9mm

T5

1.1超え、1.5以下

ガス入りLow-E複層ガラス

12mm

T6

1.1以下

ガス入りダブル

Low-E三層複層ガラス

12mm×2

熱貫流率は小さいほど熱が伝わりにくく、断熱性は高くなります。例えば、T2とT3を比較した場合、ガラス構成は同じLow-E複層ガラスですが、中空層はT3の方が厚く、熱貫流率も低いと分かります。
よって、断熱性を高めるには、中空層の厚さが重要です。
なお、中空層の厚み以外に、熱伝導率の低いガス封入や真空化を行なえば、より断熱性の向上を見込めます。


複層ガラスの製造工程

複層ガラスを製造する流れは、下記のとおりです。


1. 素板を切断する
2. ガラスの洗浄・乾燥を行なう
3. 2枚のガラスにスペーサーを貼り付ける
4. シーリング材で埋めて密閉する
5. 検査・包装・出荷する


製品やメーカー、使用する機器によっても変わりますが、基本的な製造工程は以上です。

複層ガラスにフィルムを貼れば性能アップ

複層ガラスは、別途フィルムシートを貼ることで、性能を向上させることができます。
フィルムシートには、以下のような種類があります。


・断熱フィルム
・紫外線カットフィルム
・防災フィルム
・目隠しフィルム


ただし、色の濃いフィルムや熱を吸収するフィルムを貼ると、ガラスの温度が上昇し、熱割れを引き起こす可能性もあります。熱を吸収せず、複層ガラスに適したフィルムを扱うことが重要です。

複層ガラスのまとめ

複層ガラスは高い断熱性能が評価され、戸建住宅や共同住宅で採用されています。普及率は増加しており、昨今の建設業界において、複層ガラスは必要不可欠です。優れた断熱性能に起因し、結露の防止に繋がるのも、複層ガラスの大きなメリットと言えます。


また、複層ガラスの性能をさらに向上させたLow-E複層ガラスも注目を集めており、二重サッシを含め、さまざまな方法で窓ガラスを設置可能です。


各ガラス構造の特徴を把握し、選定するようにしましょう。

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