{i1663:editable_image( 'data'=>'parts', 'key'=>'bg_image', 'src_format'=>'/_img/'.GLang::current().'/{img_src_string}/_/', 'mode'=>'background', 'alt'=>false )}

ものづくりプレス

2024-12-28

合成ゴムの種類と特性

天然ゴムの代替品として生まれた合成ゴム。以来、幅広い種類が誕生しました。それぞれ性質が異なるため、用途に応じたゴムを選ぶことが重要です。 この記事では、天然ゴムと合成ゴムの違いと合成ゴムの製造工程、さらに合成ゴムの種類ごとの性質や特徴を解説します。


AdobeStock_504522134

▪️合成ゴムと天然ゴムの違い


合成ゴムと天然ゴムは、見た目だけではほぼ区別が付けられません。その違いは原料と製造方法にあります。


◇天然ゴム


工業用の天然ゴムは現在、多くはパラゴムノキと呼ばれる種類の樹液から作られます。世界でも温暖な気候の地域でしか栽培されないため、需要の高まりや社会情勢に応じて価格変動が起きる場合があります。また原料が天然資源であることから、出来上がったゴムの品質に安定性がない場合があります。


【天然ゴムの特徴】

・弾力、伸び、粘着が優れている

・金属との接着性がよい

・内部発熱の程度が低い

・破壊強度が大きい

・耐寒性や耐久性が優れている


これらの特徴により、日本では天然ゴムの約90パーセントが大型自動車用タイヤに使用されています。


▼天然ゴムの形態による分類

天然ゴムは、製造や加工工程に応じて3つの形態に分けられ、取り引きされます。

■ラテックス ゴムの木の幹を傷つけて出てきた樹液(天然ラテックス)にアンモニアを添加し、濃度調整した液状のゴム。



■RSS(Ribbed Smoked Sheet) シート状にした天然ラテックスを燻煙(スモーク)し、加工したもの。目視により格付けが行なわれるため、視覚格付けゴム(VGR)とも呼ばれます。



■TSR(Technically Specified Rubber) 天然ラテックスや樹液採集容器に付着したゴムを細かく粉砕して、ブロック状にプレス成形したもの。成分分析により格付けされます。


一般にTSRの方が安価で、RSSとは機械的強度も異なると考えられているため、使用用途により使い分けられています。


◇合成ゴム


石油や原油を蒸留分離したナフサを原料として作られる化学製品です。戦争特需などにより天然ゴムの供給が追い付かず、天然ゴムの代替品として開発されたという経緯があります。現在では100種類以上の合成ゴムがあります。


【合成ゴムの特徴】

・優れた耐油性、耐熱性、耐老化性

・天然ゴムにはない物性


天然ゴムと合成ゴムのどちらか一方が優れている、というわけではなく、それぞれの特性を生かし、用途や市場価格の変動などを考慮して使い分けがされています。また、天然ゴムと合成ゴムを混合してつくられたゴムもあります。


▪️合成ゴムの製造工程


原油を精製してつくられるナフサを700~800°C の高温で熱分解すると、石油化学工業品の基ともなる次のような原料ができます。

・エチレン

・プロピレン

・C4留分

・C5留分

・分解油 など


例えば、C4留分から抽出されるブタジエンは、汎用ゴムであるスチレンブタジエンゴム(SBR) やブタジエンゴム(BR)の原料になります。またプロピレンから抽出したアクリロニトリルにブタジエンを加えたものは、耐油性特殊ゴムであるニトリルゴム(NBR)の原料になるなど、ナフサから派生した原料は、さまざまな合成ゴムに生まれ変わります。


このほか、製法を変えることで同じゴムから違うゴムを製造する方法もあります。 ブタジエンとスチレンからつくられるスチレンブタジエンゴム(SBR)の場合、石鹸水の中で重合するとE-SBR(乳化重合スチレンブタジエンゴム)、溶剤の場合はS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)になります。いずれも自動車タイヤやホースなど同じ用途に使用されますが、E-SBRは耐摩耗性や耐老化性に優れ、多量のプロセスオイルや充填剤を配合できるなどの特徴を持っています。一方のS-SBRは、E-SBRよりも加工性や動的特性が優れ、また屈曲亀裂に強く、良好な低温特性を持つなど、元は同じスチレンブタジエンゴムでも性質がそれぞれ異なります。

さらにE-SBRは、乳化状では合成ラテックスに、また凝固させると固形スチレンブタジエンゴムになるなど、加工方法によっても違う製品が生まれます。


▪️合成ゴムの種類と特性


合成ゴムには以下の種類があり、それぞれに特性が異なります。


◇汎用ゴム



概要

種類

幅広い用途に使用され、多量生産される比較的手頃な価格のゴムの総称です。天然ゴムも汎用ゴムに含まれます。

・スチレンブタジエンゴム(SBR

・ブタジエンゴム(BR

・イソプレンゴム(IR


◇準汎用ゴム



概要

種類

汎用ゴムと特殊ゴムの中間的性質を持つゴムです。

・クロロプレンゴム(CR

・エチレンプロピレンゴム(EPMEPDM

・ニトリルゴム(NBR


◇特殊ゴム



概要

種類

主に工業用に開発されたゴムで、汎用ゴムにはない耐熱性・耐油性・耐候性などの特性を持っています。

・クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM

・アクリルゴム(ACM

・ウレタンゴム(U

・シリコーンゴム(SIQ

・フッ素ゴム(FKM

・多硫化ゴム(T

・エピクロルヒドリンゴム(ECO


種類ごとの特性と用途は次のとおりです。


◇イソプレンゴム(IR)



天然ゴムと似た構造を持つ合成ゴムです。天然ゴムと同様に機械特性に優れるため代替素材としても使われますが、機械的強度はやや劣ります。

主な特性

主な用途

・天然ゴムよりも安定した品質、価格

・天然ゴムよりも優れた振動吸収性、電気特性

・ゲル分が少ない、異物(ゴミなど)がない

・素練りが容易、型流れがよいなど製造しやすい

・透明で着色性がよい

・臭いが少ない

・冬期の保温が不要

・自動車や航空機のタイヤ

・搬送ベルト、ホース

・粘着着剤

・靴底

・糸ゴム など


◇スチレンブタジエンゴム(SBR)



天然ゴムの代わりとして開発されたた合成ゴムで、幅広い用途で使用されています。 

SBRは天然ゴムに近い性質をもち、低価格のため合成ゴムの中でも最も多量に生産・消費されています。品質も安定しています。

主な特性

主な用途

・天然ゴムと似た性質

・優れた弾性

・優れた機械的強度、耐摩耗性

・植物油の耐油性に優れている

・鉱油への耐油性は天然ゴムよりも劣る

・高温時の引き裂き強度が低い

・耐寒性は汎用ゴムの中でもっとも低い

・自動車のブレーキ液系のシール

・自動車タイヤ

・バッテリーケース

・運動用品

・履物

・ベルト

・床タイル

・ゴム引布 など


◇ブタジエンゴム(BR)


触媒に有機金属化合物を使用し、炭化水素溶媒中で溶液重合させて製造されます。チーグラー系触媒による「高シスBR」とリチウム系触媒の「低シスBR」があり、このうち乳化重合法で製造された低シスBRは、合成ラテックスとして知られています。

主な特性

主な用途

・優れた耐寒性、低温特性

・優れた耐熱老化性

・優れた低発熱性

・天然ゴムより優れた弾性・耐摩耗性

・良好な型流れ、押型成形しやすい

・耐油性が低い

・タイヤ(SBRNRとブレンドされる場合もある)、タイヤトレッド

・ホース

・サイドウォール

・各種ベルト

・工業用品

・押出成型品

・ゴム引布

・靴底 など


◇クロロプレンゴム(CR)


クロロプレンを乳化重合して製造する合成ゴムです。硫黄変性タイプ、非硫黄変性タイプ、高結晶化タイプの3種類があります。天然ゴムの耐油性の低さを改良したもので、品質のバランスが取れており、加工しやすいのが特徴です。

主な特性

主な用途

・優れた機械的強度

・優れた耐熱性、耐寒性、耐候性

・優れた耐油性

・酸化成薬品以外の耐薬品性に優れている

・ガス透過率が小さい

・ゴム糊にしたときの接着力が強い

・難燃性がある

・自動車のベルト、ホース

・工業用品、電線

・建築用ゴム製品

・スポンジ製品

・接着剤 など


◇ブチルゴム(IIR)


塩素化ブチルゴムと臭素化ブチルゴムがあり、高い気密性を必要とする用途に多く使用されています。

主な特性

主な用途

・優れた耐候性、耐オゾン性、耐老化性

・優れた耐熱性、耐寒性(マイナス50℃以下でも柔軟性を維持)

・優れた電気絶縁性

・衝撃吸収性が大きい

・気体透過性が低い(天然ゴムの10分の1

・加硫性が低い

・加工性が低い

・耐油性が低い

・ほかのゴムとの相溶性が悪い

・乗用車向けのラジアルタイヤ(ハロゲン化ブチルゴム)

・タイヤのインナーチューブ

・チューブレスタイヤのインナーライナー

・電線被膜キュアリングバック

・スチームホース

・人工芝の下敷き

・耐熱コンベアベルト

・窓枠ゴム など



◇ニトリルゴム(NBR)


アクリロニトリルとブタジエンを乳化共重合した合成ゴムで、結合アクリロニトリル量に応じて、低~極高ニトリルに分類されます。耐オゾン性や耐候性が低いため、オゾンが発生する場所の近くや直射日光を避けて保管する必要があります。


主な特性

主な用途

・優れた耐油性(アルコール、軽油、ガソリン)

・優れた耐摩耗性、耐老化性

・耐候性、耐寒性が低い

・耐薬品性が低い

・電気特性が低い

・極性溶媒に弱い

・オイルシール

・印刷ロール

・ガスケット

・耐油ホース

・コンベヤベルト

・パッキン

・紡績用トップロール など



◇エチレンプロピレンゴム(EPDM)


エチレンとプロピレンとの共重合体で、主鎖中に二重結合を持たせたものがEPDMです。耐候性や電気的性能に優れているため、建築用や工業用製品(屋外などの製品)に多く使用されているほか、製品化されているゴムの中で、もっとも比重が低いのも特徴です。


主な特性

主な用途

・優れた耐熱性、耐寒性、耐候性、耐オゾン性

・優れた耐老化性

・優れた溶剤性

・耐油性が低い

・引裂性が悪い

・ほかのゴムや金属との接着性が悪い

・自動車用部品

・電線被覆

・窓枠ゴム

・防振ゴム素材

・スチームホース

・コンベヤベルト など


◇クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)


「ハイパロン」の商品名でも知られるゴムです。その特性から、高温環境下や腐食の起こりやすい場所での用途に適しています。


主な特性

主な用途

・優れた耐老化性、耐摩耗性

・優れた耐熱性、耐候性、耐オゾン性

・優れた耐油性、耐薬品性

・明色性に優れている

・圧縮永久歪に劣る

・成形時の金型汚染性がある

・低温において結晶化傾向がある

・自動車用ベルト

・耐候性、耐食性塗料

・耐食性パッキン、耐熱耐食性ロール

・電線被覆

・ライニング、ホース

・建材用目地材

・エスカレータ手すり

・ゴムボート

・屋外用引布 など


◇アクリルゴム(ACM)


合成ゴムの中ではフッ素ゴム(FKM)とシリコーンゴム(SI)に次ぐ耐熱性があり、130℃程度でも連続使用ができるなど、特に高温下での耐熱性に優れています。


主な特性

主な用途

・優れた耐熱性

・高温での耐油性が非常に優れている

・機械的強度が低い

・耐寒性が低い

・耐薬品性が低い

・耐水性が悪い

・加工性が悪い

・クランクシャフトに関するパッキンやシール

・自動車のトランスミッション

・オイルデフレクター

・バルブシステム など



◇ウレタンゴム(U)


ポリエステルまたはポリエーテルと、イソシアナートを反応させることで製造される合成ゴムの総称です。ほかの合成ゴムと比較して、耐摩耗性や機械的強度が圧倒的に優れています。

分子構造によりポリエステル系(AU)とポリエーテル系(EU)に分けられますが、以下のように加工方法で分けるのが一般的です。

・液状の原料を使用した注形加工(キャストタイプ)

・一般的なゴムと同じように加工(ミラブルタイプ)

・一般的なゴムと同じように加工(熱可塑性ポリウレタン(TPU))


主な特性

主な用途

・非常に優れた耐摩耗性

・優れた耐オゾン性

・優れた耐油性(AU系)

・優れた耐寒性(EU系)

・耐水性、耐湿性、耐熱性は低い

・耐薬品性は低い

・タイヤ

・ホース、ベルト

・シール材

・フィルム、ロール

・靴底 など


◇シリコーンゴム(SI・Q)


マイナス60~250℃程度の温度環境下でも物質変化が小さく、低温における弾性にほとんど変化がありません。また人の健康に影響を及ぼさないことから、直接口や体に触れる用途の製品にも使用されています。 化学構造により、SIやQ以外に、VMQ(ビニルメチルシリコーンゴム)、PVMQ(フェニルビニルメチルシリコーンゴム)、FVMQ(フルオロビニルメチルシリコーンゴム)などがあります。


主な特性

主な用途

・非常に優れた耐化学薬品性、耐溶剤性、耐油性

・非常に優れた耐熱性、耐候性、耐オゾン性

・優れた耐寒性

・優れた耐老化性

・良好な電気絶縁性

・エステル、有機酸、ケトン、アミン系の薬品の耐性は劣る

・化学工場などの耐食パッキン

・ダイヤフラム

・タンクライニング

・ガスケット

・ポンプ部品

・ホース など


◇多硫化ゴム(T)


耐油性と各種溶剤への抵抗性が特に優れているため、油を使う環境下で多く使用されています。なお、その独特の異臭から、用途が限られる傾向があります。


主な特性

主な用途

・非常に優れた耐油性、耐溶剤性

・優れた耐候性、耐オゾン性

・粉塵などが付着しない

・ガス透過性が小さい

・耐摩耗性、耐屈曲亀裂性、引裂強度などの機械的性質が悪い

・加工性が悪い

・弾性が低い

・耐熱性、耐寒性が低い

・給油ホース

・塗料、接着剤

・防塵が求められる用途

・印刷用ロール

・目地のシール材 など


◇エピクロルヒドリンゴム(T)


 主鎖にエーテル結合、側鎖にはロルメチル基を持つ独特の構造です。耐熱性、耐オゾン性、耐油性などのバランスが良好です。ECOは、ほぼ自動車向け部材として用いられています。


主な特性

主な用途

・優れた耐油性

・優れた耐熱性、低温物性

・優れた耐熱老化性、耐候性、耐オゾン性

・優れたガス透過性

・ロール粘着性が低い

・加工性は悪い

・金型汚れが発生する

・金属腐食性がある

・自動車向けの燃料系部材

・吸・排気系のホース

・潤滑油系部材

・チューブダイヤフラム

・ゴムロール(プリンター用、現像ロールなど) など


▪️種類により様々な特性を持つ合成ゴム


天然ゴムの供給不足を解消するために開発された合成ゴムですが、その後、さまざまな開発が行なわれました。現在では天然ゴムにない特性を持つゴムや、天然ゴムとブレンドして使われるものなど、その種類は多種多様です。

合成ゴムはそれぞれに異なる特性を持つため、特徴を充分に理解し、用途に応じた最適な合成ゴムを選ぶことが重要です。



◇フッ素ゴム(FKM)


フッ素が分子内に含まれる合成ゴムの総称で、フッ素の量や単量体の構造でタイプと性質が異なります。 一般的な特徴として耐薬品性が特に優れ、またシリコーンゴムより高い耐熱性を示します。


主な特性

主な用途

・非常に優れた耐化学薬品性、耐溶剤性、耐油性
・非常に優れた耐熱性、耐候性、耐オゾン性
・優れた耐寒性
・優れた耐老化性

・化学工場などの耐食パッキン

・ダイヤフラム

・タンクライニング

・ガスケット

・ポンプ部品

・ホース など



記事検索

NEW

  • ガスポンプ
    2025/03/25
    ダイヤフラム(ダイアフラム)とは? 工業用ゴム製品としても需要の高い部品の用途
    ダイヤフラムポンプをはじめ...
  • エンジニアリングプラスチック
    2025/03/21
    エンジニアリングプラスチックの進化!軽量化と高強度の両立が可能に
    スーパーエンプラは、軽量化...
  • 硬そうなタイヤ
    2025/03/20
    ゴムの硬度で何がわかる?計測方法や硬さの目安
    ゴムが持つ硬さの度合いを数...
  • フッ素樹脂
    2025/03/20
    フッ素樹脂が注目される理由!環境負荷を減らす新たな用途
    フッ素樹脂と聞くと、フライ...

CATEGORY

ARCHIVE

{/i1663:editable_image}