ものづくりプレス

2024-05-12

プラスチックに使われる安定剤とは

プラスチックに使われる安定剤とは、プラスチックが加熱や光、酸化、または化学反応などによって劣化するのを防ぐために使用される物質です。安定剤により、プラスチック製品の耐久性や安定性が向上します。

プラスチック ケース

■安定剤の種類と役割

プラスチック安定剤は、塩化ビニル安定剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、耐微生物劣化剤の4種類に大別されています。

◇塩化ビニル樹脂安定剤

塩化ビニル樹脂安定剤は、塩化ビニル樹脂(PVC)が加工や使用中に劣化するのを防ぐために使用される化学物質です。PVCは熱や光、酸化によって劣化しやすい性質がありますが、安定剤はこれらの劣化を抑制し、PVC製品の耐久性や安定性を向上させる働きをします。


◎鉛系安定剤

鉛系安定剤は、プラスチック製品の製造時に使用される添加剤の一種です。これは、プラスチックが加熱や光にさらされる際の劣化を防ぎ、製品の耐久性や安定性を向上させるために用いられます。一般的に、鉛系安定剤は鉛の化合物から作られており、主に塩化鉛やステアリン酸鉛などが含まれます。ただし、鉛の使用に伴う環境への悪影響や健康リスクが懸念されるため、近年では代替品の開発や使用の制限が進められています。



◎カドミウム-バリウム系安定剤


カドミウム-バリウム系安定剤は、主にPVC(ポリ塩化ビニール)プラスチックの安定剤として使用されます。これは、PVCが加熱や紫外線にさらされると劣化しやすいため、劣化を防ぐ目的で添加されます。この安定剤は、主にカドミウム化合物とバリウム化合物の混合物で構成されています。カドミウムは安定性を高め、バリウムは耐熱性を向上させる効果があります。ただし、カドミウムは環境に対する悪影響が指摘されており、規制や代替材料の開発が進められています。


◎亜鉛系安定剤

亜鉛系安定剤は、主にPVC(ポリ塩化ビニール)やその他の塩化ビニール系樹脂で使用される安定剤です。これらの安定剤は、塩化ビニールが加熱や光にさらされる際に生じる塩素分解反応を抑制し、プラスチックの劣化を防ぎます。亜鉛系安定剤は、環境への影響が比較的低く、安定性が高いことが特徴です。


◎カルシウム系安定剤

カルシウム系安定剤は、プラスチック製品の製造や加工中に生じる熱や光の影響からプラスチックを保護するために使用される化学物質です。これらの安定剤は、プラスチックが劣化しやすい状況での安定性を向上させ、製品の寿命を延ばします。例えば、熱可塑性ポリマーの加工時に熱安定性を向上させるために使用されることがあります。


◎有機錫系安定剤

有機錫系安定剤は、プラスチックやゴムなどのポリマー材料に添加される化学物質の一種です。主に塩化ビニール(PVC)の加工や製造プロセスに使用されます。有機錫系安定剤は、塩化ビニールが加熱される際に発生する塩素化合物の分解を防ぎ、これによってプラスチックの劣化や変質を抑制します。また、有機錫系安定剤はUV安定剤としても機能し、塩化ビニールが紫外線に曝される際の劣化を防ぐ役割も果たします。このようにして、有機錫系安定剤は塩化ビニール製品の耐久性や安定性を向上させるために使用されます。


◎エポキシ化合物

エポキシ化合物の安定剤は、エポキシ樹脂が加熱や酸化などの外部要因によって劣化するのを防ぐために使用されます。これらの安定剤は、エポキシ樹脂が耐候性や耐熱性を持ち、長期間にわたってその性能を維持するのを支援します。一般的なエポキシ安定剤には、光安定剤や酸化防止剤が含まれます。

◇抗酸化剤

抗酸化剤は、酸化反応による物質の劣化や変質を防ぐために使用される化学物質です。酸化反応は、酸素や他の酸化剤との反応によって引き起こされ、材料や製品の劣化、腐敗、変色、または機能の低下をもたらすことがあります。抗酸化剤は、これらの不良効果を減少させるか、完全に防止する役割を果たします。食品、プラスチック、ゴム、燃料など、さまざまな産業や製品に広く利用されています。


◎アスコルビン酸(ビタミンC)

アスコルビン酸は食品の保存や加工、医薬品や化粧品、さらには環境保護において、抗酸化剤として幅広く活用されています。


◎グルタチオン

グルタチオンは細胞内で重要な抗酸化物質として機能します。


・直接摂取

グルタチオンは一部の食品に含まれていますが、直接的な摂取は限られています。ただし、グルタチオンの前駆体であるシステインを含む食品やサプリメントを摂取することで、グルタチオンの合成を促進することができます。


・サプリメント

グルタチオンのサプリメントが市販されており、抗酸化作用を補完するために利用されます。ただし、グルタチオンは消化されやすいため、そのままの形での補給は効果が限定されます。


・生活習慣の改善

ストレス、喫煙、アルコール摂取、過度の紫外線曝露などはグルタチオンの消耗を促進します。これらの要因を減らすことで、自然なグルタチオンのレベルを維持することができます。


・栄養補助 

グルタチオンの合成に必要な栄養素を摂取することも重要です。特に、システイン、グリシン、グルタミン酸を含む食品やサプリメントを摂取することで、グルタチオンの合成を支援することができます。


◎リボ酸

リボ酸(リボンヌ)は、抗酸化剤として食品や化粧品などの製品に使用されます。


・食品添加物

リボ酸は食品添加物として使用され、食品の酸化を防ぎ、鮮度を保つのに役立ちます。特に肉製品や加工食品、ジュースなどの保存に広く使用されています。


・化粧品

リボ酸は化粧品にも添加され、製品の品質を維持し、酸化による変色や劣化を防ぎます。特にクリームやローションなどの保湿製品や、リップバームなどのリップケア製品に使用されます。


・製薬

リボ酸は一部の医薬品やサプリメントにも添加され、酸化ストレスから細胞を保護し、健康維持に役立ちます。

◇紫外線吸収剤

紫外線吸収剤は、主にプラスチックや化粧品などの製品に添加される化学物質です。これらの物質は、紫外線(主に紫外線A波と紫外線B波)を吸収して、製品や素材を劣化や変色から保護する役割を果たします。特に太陽光によって引き起こされるプラスチックの劣化を防ぐために広く使用されています。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収することでエネルギーに変換し、それを安定した形で放出することで、プラスチックや他の材料を保護します。


◎オキシベンゾン

オキシベンゾンは、紫外線吸収剤として広く使用されています。主に日焼け止め製品や化粧品などに添加され、皮膚への紫外線の吸収を助け、日焼けや肌の老化を防ぎます。オキシベンゾンは、UV-AとUV-B両方の紫外線を吸収する性質を持ち、肌に塗布された後、紫外線が皮膚に達する前に光を吸収してエネルギーを散乱し、皮膚の細胞への損傷を最小限に抑えます。


◎t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンは、日焼け止めや化粧品などの製品に添加され、紫外線による肌への影響を軽減するために使用されます。


◎オクチノキサート

オクチノキサートは、広く使用される紫外線吸収剤の一種であり、主に日焼け止め製品や化粧品に使用されます。皮膚に塗布された場合、オクチノキサートは紫外線(主にUVB)を吸収し、皮膚からの紫外線の浸透を防ぎます。このため、日焼けや皮膚がんのリスクを軽減するのに役立ちます。オクチノキサートは、他の紫外線吸収剤や物理的な防御(帽子や服の着用など)と併用されることが一般的です。

◇耐微生物劣化剤

耐微生物劣化剤は、微生物によるプラスチックの劣化を防ぐために使用される化学物質です。これらの劣化剤は、プラスチック製品が微生物によって分解されることを防ぎ、製品の寿命を延ばします。特に、野外や湿気の多い環境で使用されるプラスチック製品において、微生物による劣化は重要な問題です。耐微生物劣化剤は、このような環境でプラスチック製品の耐久性を向上させるために広く利用されています。


◎トリアルキル錫化合物

トリアルキル錫化合物は、プラスチックや塗料などの材料に耐微生物劣化剤として使用されます。これらの化合物は、微生物によるプラスチックや塗料の劣化を防ぎます。一般的には、トリブチル錫やトリフェニル錫などのトリアルキル錫化合物が使用されます。これらの化合物は、微生物が材料表面に付着して増殖するのを防ぐことで、製品の寿命を延ばし、耐久性を向上させます。

◇まとめ

このように、プラスチックの安定剤には様々な種類が存在し、種類によって性質も様々です。

安定剤にはメリットとデメリットがあり、添加する安定剤によりプラスチックの性質も大きく変化します。それぞれの目的に適した安定剤を使用しましょう!


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