ものづくりプレス
2024-09-17
ゴムの耐熱温度は?耐熱性のあるゴム素材をご紹介
耐熱性とは、材料がどれだけの熱に耐えられるかを示す特性であり、ゴムの使用可能な最高温度の指標です。ゴムが一定の温度を超えると、分子の運動が活発になり、ゴムの主成分である炭素-炭素結合が切断されるなどの化学変化が発生します。この結果、ゴムの弾力性や柔軟性が失われ、本来の性能が低下してしまいます。
特に、化学的に安定していない二重結合を多く含むゴムは、熱に対して弱く、比較的低温で性能が劣化します。逆に、二重結合が少ないゴムは熱に対する耐性が高く、より高温で使用可能です。天然ゴムやウレタンゴムは耐熱性が低く、加熱による劣化が早いのに対し、シリコーンゴムやフッ素ゴムは耐熱性が極めて高く、高温下でも長時間安定して使用できるという特性があります。
耐寒性とは
耐寒性は、低温環境でゴムがどの程度柔軟性を保てるかを示す特性です。ゴムにはそれぞれ固有のガラス転移温度があり、この温度を下回るとゴムの分子運動が著しく低下し、固く脆くなります。つまり、ゴム特有の伸縮性が失われ、硬化してしまうのです。ガラス転移温度が低いゴムは寒冷地でも柔軟性を保つため、耐寒性の高い素材として知られていますが、この特性は製品の選定において重要な要素です。
耐熱性の高いゴムの種類とその用途
ゴム素材の中には、耐熱性に優れたものがいくつか存在し、それぞれ異なる特性と用途があります。ここでは、代表的な耐熱ゴムとその使用例について詳しく説明します。
シリコーンゴム (Q)
シリコーンゴムは、非常に優れた耐熱性を持つゴム素材で、220°Cを超える高温環境でも安定した性能を発揮します。これにより、高温環境での使用が求められる自動車部品や医療用器具、電気絶縁材料などに広く利用されています。
自動車部品:エンジンガスケット、ホース、シール材など
医療用品:カテーテル、シリコーンチューブ、医療用シール材
電気絶縁材料:ケーブル被覆、コネクタシール
シリコーンゴムは耐熱性に加えて、耐候性や電気絶縁性にも優れており、多岐にわたる産業での使用が可能です。
フッ素ゴム (FKM)
フッ素ゴムは、300°Cまでの高温に耐えることができ、さらに耐薬品性や耐油性にも優れています。これにより、過酷な環境下での使用が可能であり、化学プラントや航空宇宙産業、自動車部品などの分野で重宝されています。
化学プラント:パッキン、シール材、ホース
航空宇宙産業:燃料システムシール、オイルシール
自動車部品:燃料ホース、オイルシール、ガスケット
特に耐油性や耐薬品性が要求される環境下では、フッ素ゴムがその優れた耐久性を発揮します。
エチレンプロピレンゴム (EPDM)
エチレンプロピレンゴムは、150°Cまでの耐熱性を持ち、耐候性や耐オゾン性にも優れています。このため、屋外での使用や紫外線にさらされる環境での利用に適しており、建築材料や自動車部品、電気用ゴム部品などで広く用いられています。
建築材料:屋根材、防水シート、窓枠シール
自動車部品:ドアシール、ウィンドウシール、ホース
電気用ゴム部品:ケーブルジャケット、絶縁材
EPDMは、耐熱性と耐候性のバランスが良く、幅広い用途で利用されています。
ニトリルゴム (NBR)
ニトリルゴムは、130°Cまでの耐熱性を持ち、耐油性や耐摩耗性にも優れています。これにより、油に接触する環境での使用に最適で、工業用パッキンや自動車部品、防護手袋などに使用されています。
工業用パッキン:オイルシール、ガスケット、Oリング
自動車部品:燃料ホース、オイルホース、シール材
防護手袋:耐油性手袋、耐薬品性手袋
NBRは、油に強い特性を持つため、特に工業や自動車産業での使用が多く見られます。
まとめ:用途に応じたゴム素材の選択
ゴムの耐熱性は、使用環境に応じた最適な素材を選ぶ際に重要な要素です。シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴムなど、それぞれのゴム素材には固有の特性があり、特定の用途に適しています。これらの素材の特性を理解し、正しく選定することで、製品の性能を最大限に引き出すことが可能となります。
高温環境での使用を想定した場合、シリコーンゴムやフッ素ゴムのような耐熱性の高い素材を選ぶことで、製品の寿命を延ばし、信頼性を確保することができます。また、特定の機能を持つゴム素材を適切に使用することで、効率的かつ安全な運用が実現します。
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