ものづくりプレス

2025-02-07

合成ゴム需要の低迷:自動車業界の回復遅延が影響、SBRとBRの需要減少

ゴムは、とても弾力がある特殊な素材で、元に戻る力や丈夫さが特徴です。

そのため、産業や私たちの暮らしの中で欠かせない存在となっています。

近年、合成ゴムの需要が低迷しており、その背景には自動車業界の回復の遅れがあります。

特に、タイヤ製造に使われるSBR(スチレン・ブタジエンゴム)やBR(ポリブタジエンゴム)の需要が減少していることが大きな要因となっています。

この記事では、私たちの暮らしに欠かせないゴムがどのような状況にあるのか、そしてこれからどう進化していくのかを探っていきます。

タイヤ

タイヤ生産の低迷

タイヤ用に使われる汎用ゴムの生産量は、2023年に大きく減少しました。

タイヤの主要材料であるSBR(スチレン・ブタジエンゴム)は前年比で10.9%減少、BR(ポリブタジエンゴム)は15.5%も減少しました。


また、日本自動車タイヤ協会のデータによると、2023年のタイヤ生産量も前年比で3.4%減少しており、需要そのものが低迷していたことが影響しています。


このほか、定期的な設備点検や、中国をはじめとする新興国メーカーとの競争激化により、一部の製品の輸出を抑えたことも生産減少の一因と考えられます。


自動車部品向けに使われる特殊ゴムの生産量も大幅に減少しました。

NBR(ニトリルゴム)は27.2%減、CR(クロロプレンゴム)は21.0%減、EPT(エチレンプロピレンゴム)は29.0%減と、いずれも20%を超える落ち込みを記録しました。

2023年の国内自動車生産台数は前年比14.8%増と大幅に回復したものの、2023年以前の回復を見越して積み上げられていた部品や原材料の在庫が多く、調整に時間がかかったことが影響しているようです。


この調整は主に2023年前半に行われ、後半には一部の品種で生産が回復しました。

ただし、EPTについては、住友化学が2023年3月で生産と販売を終了した影響もあり、生産量がさらに減少しました。


一方、中国本土の合成ゴム市場では、主原料であるブタジエンの価格が急落しており、合成ゴム(SBRやBR)の価格も大幅に下がると予想されています。

オレフィン先物市場もこれに連動して価格が下がる可能性が高いです。

合成ゴム市場はどうなる?



短期的な見通し

今後、ゴムの生産が増える一方で、需要がそれに追いつかない可能性があり、これがゴム価格の上昇を引き起こすかもしれません。

海外の生産状況や国内の政策が今後の市場にどう影響するかを注視することが重要です。

もし気候が安定していれば、原料の価格が上がり、それがゴム農家にとっては生産を減らす原因となるかもしれませんが、気候変動の影響にも注意が必要です。


また、天然ゴムを使うタイヤ業界では、年末に向けて消費が落ち着く時期に入りますが、その前にタイヤ会社はコスト削減を目指して調整を始めるでしょう。

一方で、タイヤの原材料価格が高いままで、生産コストの圧力が増しています。


長期的な見通し

新エネルギー自動車や航空機、省エネ技術、環境保護など、これから成長が見込まれる産業が増える中で、高品質なゴムの需要が今後も高まると予想されます。

ゴム産業は変革を求められており、市場のニーズに応えるためには、製品の品質や性能をさらに向上させる必要があります。

また、環境への配慮や持続可能な発展も今後の大きなテーマとなり、環境に優しいゴムの製造が進むことが求められています。

まとめ

ゴム産業は、私たちの暮らしや産業に欠かせない存在ですが、現在は需要の低迷や競争の激化など、さまざまな課題に直面しています。

特に、自動車産業の回復が遅れたことで、ゴム製品の生産や輸出に影響が出ています。

ただし、長い目で見れば、新エネルギー自動車や省エネ技術など、新たな産業の発展が高品質なゴムの需要を押し上げる可能性があります。

変化の時代を迎えたゴム産業。この転換期をチャンスに変えるため、品質向上や新技術への挑戦がこれからのカギとなりそうです。