ものづくりプレス

2025-03-05

ゴムに配合される酸化防止剤、その役割と注意点

ゴム製品は私たちの生活のあらゆる場面で使用されていますが、時間が経つとさまざまな要因によって劣化してしまいます。特に、酸素や熱、紫外線、オゾンなどの影響を受けることでゴムの分子構造が変化し、弾力性が失われたり、ひび割れが発生したりします。
こうした劣化を防ぐために、ゴム製品には酸化防止剤が添加されています。酸化防止剤は、ゴムの劣化を引き起こす化学反応を抑制し、製品の寿命を延ばす役割を果たします。本記事では、ゴムの劣化の原因や、酸化防止剤の種類とその働きについて詳しく解説します。


酸化防止剤

ゴムの劣化の原因

ゴム製品の劣化は、物理的要因と化学的要因によって進行します。これらの要因によって、ゴムの分子構造が破壊され、最終的には本来の機能を果たせなくなります。


物理的要因
・機械的ストレス:ゴム製品が繰り返し圧縮されたり引っ張られたりすることで、内部の分子が破壊され、亀裂が発生します。
・温度変化:高温では分子の運動が活発になり、低温では硬化するため、ゴムの弾力性が損なわれます。
・紫外線(UV):太陽光に含まれる紫外線がゴムに吸収されると、分子が分解され、ひび割れや粉状化が進みます。


化学的要因
・酸素との反応(酸化):ゴムの主成分であるポリマーは、酸素と反応することで分子構造が変化し、硬化やひび割れを引き起こします。
・オゾンの影響:オゾンは酸素よりも強い酸化作用を持ち、ゴムの表面に微細なひび割れ(オゾンクラック)を発生させます。
・油や化学薬品の影響:特定の化学物質に触れると、ゴムの可塑剤が溶け出し、柔軟性が失われます。


これらの劣化要因を抑えるために、酸化防止剤を適切に使用することが重要です。


ゴムの酸化の仕組み

ゴムが酸化する過程には、「自動酸化」と呼ばれる連鎖反応が関与しています。この反応では、フリーラジカル(不対電子を持つ活性分子)が発生し、次々にゴムの分子を変化させていきます。


1.ラジカルの発生:紫外線や熱によってゴムの分子内にラジカルが発生します。
2.連鎖反応の進行:ラジカルが周囲の分子から水素を奪い、新たなラジカルを生成することで酸化が進行します。
3.劣化の結果
・分子が切断され、ゴムが柔らかくなる(軟化劣化)
・分子が結びつき、硬くなる(硬化劣化)


この連鎖反応を抑えるために、ゴムには「酸化防止剤」が添加されます。


酸化防止剤とは

酸化防止剤は、ゴムの酸化を防ぐために使用される添加剤であり、さまざまな種類があります。使用される環境やゴムの種類によって、適切な酸化防止剤を選ぶ必要があります。


1. アミン系酸化防止剤
特長:熱酸素老化、オゾン老化、疲労老化を防ぐ効果が高い
代表的な化合物:
・フェニルナフチルアミン
・ジフェニルアミン誘導体
・p-フェニレンジアミン誘導体(広く使用されるが、焦げの発生リスクあり)


2. フェノール系酸化防止剤
特長:非汚染性で、明るい色のゴムに適用可能
代表的な化合物:
・ヒンダードフェノール
・ヒンダードビスフェノール
効果:金属イオンの不活性化にも寄与


3. 有機硫化物系酸化防止剤
特長:ヒドロペルオキシドを分解し、ゴムの安定性を向上
代表的な化合物:
・ジチオカルバメート
・チオールベースのベンズイミダゾール


4. 非移行性酸化防止剤
特長:ゴム内部に長期間残り、持続的な保護効果を発揮
用途:高耐久性が求められるゴム製品(工業用ゴム、タイヤなど)


これらの酸化防止剤を適切に組み合わせることで、ゴム製品の耐久性を向上させることができます。


まとめ

ゴム製品は、酸素や熱、紫外線などの影響で劣化しやすい素材ですが、適切な酸化防止剤を使用することで、その寿命を大幅に延ばすことができます。アミン系、フェノール系、有機硫化物系など、さまざまな種類の酸化防止剤があり、ゴムの種類や使用環境に応じて選択することが重要です。
日常生活で使用されるゴム製品の耐久性を保つためにも、適切な保管方法(直射日光や高温多湿を避けるなど)を意識し、劣化を防ぐ工夫をすることが大切です。
酸化防止剤の活用を理解し、より長くゴム製品を使用できるようにしましょう。