ものづくりプレス
2025-03-21
ゴムの耐酸性について知る!化学環境に強い製品の秘密
化学環境に耐性のあるゴム製品は、自動車、化学プラント、半導体製造 など、幅広い産業分野で重要な役割を果たしています。これらのゴムは、強酸・強アルカリ、高温・低温、溶剤や油脂 など、過酷な条件下でも性能を維持することが求められます。特に、耐酸性・耐薬品性 に優れたゴムは、設備の長寿命化やメンテナンスコストの削減に貢献しています。
化学環境における代表的な耐酸性ゴムには、次の3種類があります。
・クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM):ハイパロンとして知られ、耐酸性・耐オゾン性に優れる。
・ブチルゴム(IIR):ガス透過性が低く、防振性・耐候性も高い。
・フッ素ゴム(FKM):耐薬品性・耐熱性・耐油性において最強クラスの性能を誇る。
この記事では、これらのゴムの特性・用途・長所・短所について詳しく解説し、適切なゴム選定のポイント も紹介します。
目次
クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM) — ハイパロンの特性と用途
CSM(Chlorosulfonated Polyethylene)は、ポリエチレンを塩素化 し、さらに クロロスルホン化 することで製造される特殊ゴムです。デュポン社の「ハイパロン(Hypalon)」 の名称で広く知られています。
CSMの製造方法と特性
・塩素化:塩素の含有量(20〜45%)を調整することで、弾性・硬度・結晶性をコントロール。塩素量が多いほど弾力が増し、結晶性が下がる。
・クロロスルホン化:硫黄を導入して架橋密度を調整。硫黄量が多いほど強度が向上する。
CSMの主な用途
・自動車部品:耐熱・耐候性が求められるホース、シール材
・エスカレーターの手すり:耐摩耗性と柔軟性を両立
・ゴムボート・防水シート:耐酸性・耐紫外線性で長寿命化
ブチルゴム(IIR) — 優れたガスバリア性と防振性
ブチルゴム(IIR)は、イソブチレンと微量のイソプレン から製造される合成ゴムで、ガス透過性の低さと高い防振性で知られています。
ブチルゴムの構造と特性
・メチル基による主鎖の保護:ポリマー主鎖を囲むメチル基がガスの透過をブロックし、優れたガスバリア性を発揮。
・二重結合が少ない:化学的に安定しており、耐候性・耐オゾン性に優れる。
ブチルゴムの主な用途
・タイヤのインナーチューブ:ガス漏れ防止に最適
・防振材・家電製品の防音材:低反発弾性で振動・騒音を低減
・医療機器のシーリング材:滅菌処理にも対応
ハロゲン化ブチルゴム(HIIR) — 高性能バージョン
ハロゲン化ブチルゴム(HIIR)は、ブチルゴムに塩素(Cl)や臭素(Br)を付加 して性能を向上させた改良版です。
HIIRの特性と応用
・加硫反応の促進:ハロゲン処理により、架橋反応が早まり、加工時間を短縮。
・耐熱性・耐油性の向上:接着性の改善により、異種材料との複合化が可能。
フッ素ゴム(FKM) — 最強クラスの耐薬品性・耐熱性
フッ素ゴム(FKM)は、フッ素を含んだオレフィン と エチレン・プロピレン などを共重合して作られます。主に 乳化重合法 で製造され、分子構造の特性により、極めて高い耐熱性・耐薬品性・耐油性を持っています。
フッ素ゴムの耐熱性・耐薬品性のメカニズム
・C-F結合の強さ:C-F結合はC-H結合よりも結合エネルギーが高く、熱や薬品の影響で分解しにくい。
・フッ素原子による保護層:フッ素原子が大きいため、C-F結合がC-C結合を覆い、外部環境からの攻撃を防ぐ。
フッ素ゴムの主な用途
・自動車部品(Oリング、シール材):高温・油脂環境でも劣化しにくい
・ 化学プラントのバルブ・シール:耐薬品性が必要な配管やシーリング材
・半導体製造装置の部品:高純度で汚染性が低い
フッ素ゴムの短所と対策
・耐寒性の弱さ:ガラス転移温度が高く、低温では硬化・脆化しやすい。
→ 耐寒性向上策:低温特性に優れたフッ素ゴム(FKM-LT)を採用。
・強アルカリ・エステルに弱い:C-F結合の弱点として、特定の化学物質には耐性が低い。
→特殊グレードの使用:特定の用途向けに耐アルカリ性を向上させたFKMの利用が推奨される。
ゴム選定のポイントと最新技術
適切なゴム製品を選ぶためには、使用環境・化学物質・温度範囲・耐候性・コスト など、複数の要因を考慮する必要があります。最近では、ナノコンポジット材料 を添加したゴム製品や、プラズマ表面処理 による接着性強化技術も開発されています。
最新のゴム材料技術
・ナノフィラー強化技術:カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンを配合し、耐摩耗性・強度を向上。
・プラズマ処理技術:ゴム表面の親水性を高め、接着性・耐薬品性を強化。
まとめ:用途に応じた最適なゴム選定で耐久性アップ!
今回紹介したCSM、ブチルゴム、フッ素ゴム は、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じた選定が必要です。自動車・化学プラント・電子機器など、厳しい化学環境下でも耐久性・信頼性を最大限に発揮 するためには、適切なゴム材料の選択と最新技術の応用 が不可欠です。今後の技術革新によって、さらに高性能なゴム製品が登場することが期待されています。
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