ものづくりプレス

2025-03-23

ウレタンゴムの加工方法を徹底比較!製品ごとに適した選び方とは

ウレタンゴムは、合成ゴムの弾力性 と プラスチックの機械的強度 を併せ持つエラストマーであり、耐摩耗性、耐油性、柔軟性 に優れた特性から、さまざまな用途で広く使用されています。
ウレタンゴムは、自動車部品、工業用ローラー、スポーツ用品、医療機器などの分野で使用されるほか、防振材、シール材、ギア、ホイール、パッキン など、精密部品にも採用されています。特に、耐摩耗性が高く長寿命 であることから、重負荷のかかる産業機械建設機器の部品 にも多用されています。
この記事では、ウレタンゴムの基本特性・エステル系とエーテル系の違い・加工方法 について詳しく解説し、用途に応じた適切な選択や加工方法の理解を深めます。

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ウレタンゴムとは?基本特性と構造

ウレタンゴム(ポリウレタンエラストマー)は、ポリオール(主鎖材料)とジイソシアナート(硬化剤)、および架橋剤(または鎖延長剤)を反応させて生成される高分子材料です。これらの材料の組み合わせや配合比によって、硬度・弾性・耐久性 などの特性を柔軟に調整できます。
ウレタンゴムは、その結合の種類によって ポリエステル系 と ポリエーテル系 に分類され、用途によって適切なタイプが選択されます。


ウレタンゴムの主な特徴

長所
・高い耐摩耗性と機械的強度:ウレタンゴムは、合成ゴムの中でも耐摩耗性に最も優れており、長寿命であるため、ギア、ホイール、ローラー などの部品に適しています。
・優れた耐油性・耐薬品性:油類、溶剤、薬品への耐性が高く、油圧シールやパッキン など、油分にさらされる環境でも性能を維持します。
・幅広い硬度範囲:硬度は20ショアA~85ショアD まで幅広く調整でき、用途に応じた柔軟性と剛性のバランスを実現します。


短所
・耐熱性に劣る:ウレタンゴムの耐熱性は70~80℃程度 であり、高温環境下では物性劣化や硬化が進行しやすいです。
・耐水性が低い:特にポリエステル系 は水分や湿気に弱く、加水分解を起こしやすいため、高湿度環境 では性能が低下します。


エステル系とエーテル系の違い

ウレタンゴムは、結合の違いによってポリエステル系 と ポリエーテル系 に分けられ、それぞれ特性が大きく異なります。用途に応じて、適切なタイプを選定する必要があります。


ポリエステル系ウレタンゴム
特徴:
 機械的強度、耐摩耗性、耐油性に優れています。
用途:
 自動車部品、工業用ローラー、ギア、シール材。
課題:
 加水分解 を起こしやすく、水分や湿気の多い環境では劣化が早まります。


ポリエーテル系ウレタンゴム
特徴:
 加水分解に強く、耐水性に優れています。
用途:
 医療機器、防振材、スポーツ用品、クッション材。
課題:
 耐摩耗性や機械的強度 はポリエステル系より劣ります。


ウレタンゴムの主な加工方法

ウレタンゴムの加工方法は、加硫前の加工方法 加硫後の加工方法 に分類されます。それぞれの方法には特徴があり、目的や生産量に応じて最適な方法を選択する必要があります。

加硫前の加工方法

1. インジェクション成型
インジェクション成型は、ウレタンゴムのペレットを高温で溶解し、金型に高圧で注入して成型する方法 です。
メリット:大量生産が可能で、精密な形状にも対応。
デメリット:金型・設備コストが高く、少量生産には不向き。
用途例:自動車部品、機械部品、大量生産の工業製品。


2. プレス成型
プレス成型は、ウレタンゴムと硬化剤を混合し、金型に流し込んで加熱・加圧する方法 です。
メリット:コストが比較的低く、中量生産にも対応。
デメリット:金型設計による制約があり、複雑形状の成型は困難。
用途例:パッキン、工業用ローラー、緩衝材。


3. 注型成型
注型成型は、ウレタンゴムの液状原料を型に流し込み、加硫して固める方法 です。
メリット:コストが安く、少量生産や試作品の製作に適している。
デメリット:成型精度が低く、複雑形状には不向き。
用途例:ギア、シール材、医療器具。

加硫後の加工方法

1. 抜き加工
抜き加工は、ウレタンゴムのシート素材を抜き型で打ち抜き、平面的な形状にカットする方法 です。
メリット:短時間で大量生産が可能。
デメリット:立体形状の加工には対応できない。
用途例:ガスケット、パッキン、薄板部品。


2. シャーリング・スリッター加工
シャーリングとスリッター加工は、ウレタンゴムを直線的に切り出す方法 で、板状・シート状の材料に適しています。
メリット:シンプルな加工で大量処理が可能。
デメリット:曲線加工や複雑形状には対応不可。
用途例:防振材、クッション材、板材の寸法調整。


3. カッティングプロッター加工
カッティングプロッター加工は、CAD図面に基づき刃物で板状ウレタンゴムを切断する方法 です。
メリット:型代が不要で、少量生産・試作品に適している。
デメリット:大量生産には不向き。
用途例:薄板パッキン、プロトタイプ製品。


4. 切削加工
切削加工は、丸棒材や板材からウレタンゴムを削り出して成型する方法 です。
メリット:自由度が高く、精密加工が可能。
デメリット:コストが高く、量産には向かない。
用途例:精密部品、ローラー、ギア。


5. ウレタンライニング
ウレタンライニングは、金属部品にウレタンゴムを焼き付ける方法 で、特にウレタンゴムローラー の製造に使用されます。
メリット:金属とゴムの強固な結合が得られる。
デメリット:納期が長く、金属厚さによる制約がある。
用途例:産業用ローラー、ギア、プーリー。


6. 手加工
手加工は、シャーリング・スリッター・カッターなどを使用して、少量生産や試作品を手作業で加工する方法 です。
メリット:型代不要で、小ロット生産に適している。
デメリット:精度が低く、大量生産には不向き。
用途例:試作品、特殊形状部品、少量注文品。


ウレタンゴムの応用分野と今後の展望

ウレタンゴムは、自動車産業、建設機械、スポーツ用品、医療機器 などの幅広い分野で使用されており、今後も電気自動車(EV)や再生可能エネルギー産業 の発展とともに、需要の拡大が見込まれています。


今後の課題と展望
耐熱性向上:高温環境での性能向上を目指した新材料の開発。
・環境対応素材の導入:生分解性ポリマーやバイオマス材料の採用促進。
・加工技術の高度化:精密加工や自動化技術の導入による生産性向上。

まとめ:ウレタンゴムの可能性を最大限に活かす

ウレタンゴムは、その優れた耐摩耗性、耐油性、弾性 などの特性から、幅広い分野で活躍しています。用途に応じたポリエステル系・エーテル系の選択 や、適切な加工方法の活用 によって、その性能を最大限に引き出すことができます。
今後は、環境への配慮や新素材の導入 によるさらなる技術革新が期待されており、ウレタンゴムの可能性はますます広がっていくでしょう。