ものづくりプレス

2025-05-07

ポリアミド樹脂の値上がり背景:アンチモン不足とその影響

ポリアミド(PA)樹脂は、電子機器や自動車部品、建築材料など、私たちの身近な製品に幅広く使用されています。

しかし、近年その価格が急激に上昇し、さまざまな業界に影響を与えています。

この値上がりの背景には、PA樹脂の主原料であるヘキサメチルジアミンを生産するための原料「アジポニトリル」の供給不足や、原油やナフサの価格上昇が関わっています。

さらに、樹脂に添加される難燃剤としてのアンチモンの価格高騰も、製造コストに影響を与えています。

特にポリアミド樹脂が求められる自動車や電子機器業界にとっては、難燃性を維持しつつコストを抑えるための対応策が今後重要となるでしょう。


この記事では、樹脂市場の動向とアンチモン不足の影響について詳しく解説します。

ポリアミド


樹脂の値上がりの背景


ここ最近、樹脂の価格がどんどん高騰しており、今後もしばらく続く可能性があると懸念されています。

2024年5月24日、日本経済新聞によると、合成樹脂の価格は2022年12月の最高値を超えてしまったとのこと。

その理由として、ナフサ(粗製ガソリン)のアジアでの価格上昇や円安、物流費の高騰が影響しており、今後も価格は上がる見通しです。

特にナフサ価格が8万円前後に達すると予測されており、樹脂の価格も5%程度上昇することが予想されています。


また、樹脂の不足は続いており、特にPE(ポリエチレン)の価格は20%上がっていることが報じられています。

原油価格が高く、円安が進行しているため、海外から輸入される樹脂や完成品の価格も引き続き高水準で推移しそうです。


さらに、樹脂を作るために必要な原料やプラントの設備の問題もあります。

例えば、韓国のカプロ社がプラントを一時的に停止するなど、供給側でも影響を受けています。

こうした状況から、樹脂価格が今後も中国を中心に依存する可能性が高く、価格や供給量が中国頼みになることが懸念されています。


また、LNG(液化天然ガス)価格の高騰も影響しており、樹脂価格はしばらく高止まりする見通しです。

これにより、今後も樹脂の価格上昇が続くと予想されています。

ポリアミドとアンチモンの関係

アンチモンは、特に三酸化アンチモン(Sb2O3)として、難燃剤として広く使用されています。

ポリアミド樹脂に三酸化アンチモンを添加することで、燃えにくくする効果が得られ、これにより製品の安全性が向上します。


三酸化アンチモンは、一般的にハロゲン化合物と組み合わせて使用されることが多いです。

燃焼時には、これらの化合物が反応してハロゲン化アンチモンを生成し、その後、この生成物が水素や酸素と反応することによって燃焼を抑制します。

このような組み合わせにより、ポリアミド樹脂の難燃性能が大幅に向上し、火災のリスクを低減させることができるのです。


ポリアミド樹脂は、電気・電子機器、自動車部品、建築材料など、さまざまな産業で利用されているため、難燃性が非常に重要な要素となります。

アンチモンを添加することで、これらの製品の安全性が向上し、火災のリスクを減らすことができます。


しかし、アンチモンの価格が上昇すると、難燃剤としてのコストも高くなり、結果としてポリアミド樹脂の製造コストにも影響を及ぼすことになります。

そのため、より安価で効率的な代替材料の開発や、リサイクル技術の促進が今後ますます重要になってくると考えられます。

まとめ

ポリアミド樹脂の価格上昇は、今後も続く可能性が高いと予想されています。

特に、アンチモンの供給不足や原材料の高騰が影響し、製造コストへの圧力が一層強まっています。

これにより、さまざまな業界での生産コストの増加が懸念される中、代替材料の開発やリサイクル技術の強化が重要な課題となります。

今後、企業は難燃性を確保しつつ、コストを抑えるための新しいアプローチを模索していくことが求められるでしょう。

樹脂市場の変動に対応するためには、柔軟な戦略と迅速な対応が鍵となります。