ものづくりプレス
2025-05-08
アンチモン価格上昇で揺れるポリブチレンテレフタレート市場
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、結晶性のエンジニアリングプラスチックで、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールを使って作られるポリエステルの一種です。
PBTは電気特性や耐薬品性、成形加工性に優れており、電気・電子機器や自動車部品、フィルムの製造など、さまざまな分野で広く使用されています。
ただし、強いアルカリには弱く、高温高湿な環境では加水分解を起こすことがあるので、取り扱いには注意が必要です。
ポリブチレンレフタレート(PBT)の特長
PBTは、エステル結合と芳香環を持つプラスチックで、電気特性や耐薬品性が非常に優れています。
ガラス繊維などの強化材を加えることで、さらに強度や耐熱性が向上し、より高い性能が求められる用途に使われています。
具体的な特徴としては、強度や靭性に優れ、ガラス繊維を加えることで剛性や強度、荷重たわみ温度が改善されます。
また、吸水率が低いため、サイズの変化が少なく、寸法安定性が高いです。
さらに、電気特性や耐薬品性も高く、有機溶剤や弱酸・弱アルカリに強いです。
用途に応じて、フィラー強化や難燃性、耐衝撃性を持つもの、安定剤を加えたものなど、さまざまなグレードが用意されています。
しかし、エステル結合は水分があると高温で加水分解を起こすことがあり、また強酸や強アルカリには弱いので、これらの条件で使う場合は慎重に選ぶ必要があります。
アンチモンの高騰が与える影響
アンチモンの価格上昇は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)市場にも大きな影響を与えています。
PBTは、耐熱性や耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックであり、自動車部品や電子機器、家電製品など、さまざまな用途で使用されています。
アンチモンは、特に三酸化アンチモン(Sb2O3)として、PBTの難燃剤として広く使用されています。
難燃剤としてのアンチモンは、燃焼時に酸素を奪うことで燃焼反応を抑制し、火災のリスクを低減する効果があります。
しかし、最近のアンチモン供給の不安定さが問題となっており、その結果、価格が高騰しています。
アンチモン価格高騰の背景
アンチモンの供給不足の背景には、いくつかの要因があります。
まず、中国が世界最大のアンチモン生産国であり、その供給が環境規制の強化や鉱山の閉鎖によって制約を受けているため、供給量が減少しています。
また、季節的な要因や旧正月期間中の生産停止も影響しています。
一方で、アンチモンの需要は急増しています。
特に、難燃剤や電子機器、再生可能エネルギー関連の分野での使用が拡大しており、供給が追いつかない状況です。
これにより、アンチモンの価格は過去12年で最高値を記録しました。
PBTへの影響
アンチモン価格の上昇は、PBTの製造コストにも直接影響を与えています。
PBTの製造過程で触媒としてアンチモンが使用されることがありため、アンチモンの価格が上昇すると、PBTの製造コストも上昇します。
これにより、PBTの価格も上昇し、最終製品の価格にも影響を及ぼしています。
対策
このような状況に対処するためには、いくつかの戦略が必要です。
まず、リサイクル材の活用が重要です。
PBTのリサイクルは、環境負荷を減少させるだけでなく、製造コストの削減にも寄与します。
リサイクル材を活用することで、新規原材料の使用を減少させ、価格変動の影響を緩和することができます。
また、代替材料の開発も注目されています。
例えば、バイオベースのポリマーや、他の高性能樹脂材料が代替材料として検討されています。
これらの材料は、環境負荷を低減しつつ、PBTと同等の性能を提供することができます。
さらに、製造プロセスの効率化も重要です。
エネルギー効率の向上や製造プロセスの最適化により、製造コストを削減することができます。
また、サプライチェーンの多様化も考慮すべきです。
特定の国や地域に依存せず、複数の供給源を確保することで、供給リスクを分散させることができます。
まとめ
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、優れた電気特性や耐薬品性、成形加工性を持つエンジニアリングプラスチックで、さまざまな産業で利用されています。
特に自動車部品や電子機器、家電製品などで活躍しており、需要が高まっています。
しかし、最近、PBTの製造に欠かせないアンチモンの価格が急騰し、業界に大きな影響を与えています。
このアンチモンの高騰は、供給不足や需要増加によるものです。
このような市場動向は、PBTの製造コストを押し上げ、最終製品の価格にも影響を与える可能性があります。
企業は、リサイクル材の活用や代替材料の開発など、さまざまな対策を講じながら、この課題に対応しています。
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