ものづくりプレス
2025-05-10
アンチモン不足がもたらすポリオキシメチレン樹脂の価格上昇とその対策
ポリオキシメチレン(POM)は、強度が高く、摩擦が少なく、精密部品にも使われる優れたプラスチックです。
しかし、近年POMの価格が上昇しており、その原因のひとつとしてアンチモンの不足が注目されています。
アンチモンはPOMの製造に欠かせない材料のひとつですが、供給が減り、価格が高騰しているのです。
冬場の鉱山の生産減少や、世界的な需要の増加が影響し、POMを扱う企業にとっては大きな課題となっています。
では、POMの価格上昇にどのように対応すればよいのでしょうか?
この記事では、価格変動の原因や影響、そしてPOMの代替材料について詳しく解説します!
ポリオキシメチレンとは
ポリオキシメチレン(POM)は、高い強度や低摩擦、優れた寸法安定性を持つ高性能なプラスチックで、精密部品などに広く使われています。
その価格は、いくつかの要因によって影響を受けますが、特に重要なのが原材料費、製造プロセス、市場の需要、技術の進歩、そして経済状況です。
これらの要素を理解することは、POMを使っている企業にとってとても大切です。
原材料費
まず、原材料費がPOMの価格に大きな影響を与えます。
POMはメタノールから作られるホルムアルデヒドやトリオキサンを使って作られるため、これらの原料の価格が変動すると、POMの製造コストにも直結します。
例えば、原油価格が上がると原材料の価格も高くなり、それがPOMの価格に影響します。
原材料のひとつ アンチモンの価格上昇
最近、アンチモンの価格がどんどん上がっており、多くの業界で注目を集めています。
この値上がりの背景には、供給と需要のバランスが崩れていることがあります。
まず、供給の面では、冬の間に鉱山の生産量が減るため、一時的にアンチモンの供給が少なくなっています。
さらに、長期的に見ると、アンチモンの採掘できる量自体が限られているため、供給不足が続く可能性があります。
一方、国内では経済の安定成長を後押しする動きがあり、それによってアンチモンの需要も高まっています。
このように、供給が少なくなる一方で需要が増えているため、価格が上昇しているのです。
この価格高騰は、アンチモンを扱うさまざまな業界に大きな影響を与えています。
鉱山企業にとっては、価格が上がることで利益が増えるというメリットがありますが、一方で資源不足や採掘コストの上昇といった課題も抱えています。
また、アンチモンを使って製品を作る加工企業にとっては、原材料費の高騰によって生産コストが増え、商品の価格競争力や利益率に影響を及ぼしています。
このように、アンチモンの価格上昇は、単なる一時的な現象ではなく、業界全体にさまざまな影響を与えているのです。
製造コスト
POMを作るための製造プロセスも重要な要素です。
POMを作るためには高度な技術とエネルギーが必要で、その技術の進歩や生産効率の改善が価格を安定させる要因となります。
しかし、生産に必要なエネルギー費用が増えたり、効率が悪くなると、価格が上がる可能性もあります。
需要の変化
さらに、POMの需要も価格に影響します。
POMは自動車や家電、産業用の機器などで使用されているため、これらの産業の需要が増えると、POMの価格も上がりやすくなります。
逆に、景気が悪くなれば需要が減り、価格も下がる可能性があります。
技術革新
技術革新もPOMの価格に影響を与えます。
新しい特性を持つPOMが開発されると、最初は高いコストがかかりますが、技術が普及して製造プロセスが効率的になると、価格が安定または低下することがあります。
物流コスト
最後に、輸送や物流コストもPOMの価格に大きな影響を与えます。
原材料を作る場所から工場へ運び、完成した製品を顧客に届けるためのコストは、燃料費や輸送インフラ、世界的な政治情勢に左右されることがあります。
貿易政策や関税もPOMの価格に影響を与える要因です。
このように、POMの価格はさまざまな要因によって影響を受けるため、市場の動向をしっかりと把握し、柔軟に対応することが重要です。
POMの代替素材とは
POMの代わりに使える材料として、PET、MCナイロン、PBT、PPがあります。
そこで、POMの特徴である「機械的強度」「耐熱性」「材料価格」の3つのポイントに絞って、これらの材料を比較してみましょう!
POMと同じくらい、またはそれ以上の強度や耐熱性を持っているのは「PET」と「MCナイロン」の2つです。
PBTやPPは、POMほどの性能を満たせないので、使う際は注意が必要です。
特にMCナイロンは、POMより強度も耐熱性も優れています。
ただし、その分コストが高く、POMの3倍以上の価格になってしまうので、コスト面では要注意です。
一方、PETは価格がPOMとほぼ同じで、比重(重さの基準)もほとんど変わりません。
そのため、POMの代替として最もおすすめです。
ただし、PETはPOMほど流通量が多くないため、大量に使う場合は事前に確認しておくと安心ですね。
まとめ
アンチモンの不足によるPOMの価格上昇は、一時的なものではなく、今後も影響が続く可能性があります。
原材料費や物流コストの変動に加え、需要の増減や技術革新など、さまざまな要因がPOMの価格に影響を与えます。
このような状況の中で、企業が取るべき対策としては、市場動向を常にチェックし、柔軟に対応することが重要です。
POMの代替材料としてPETやMCナイロンなどを検討するのも有効な手段のひとつです。 今後もPOMの価格動向に注目しながら、適切な材料選びやコスト管理を行い、安定したものづくりを目指しましょう!
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