ものづくりプレス

2025-05-23

潤滑条件がオイルシールの性能に与える影響|適切な選定基準とは?

オイルシールは、エンジンやモーターなどさまざまな機械で重要な役割を果たしています。

特に、その潤滑メカニズムは機械の効率や寿命に大きな影響を与えるため、適切な潤滑条件を維持することが非常に重要です。


オイルシールは、回転や往復運動に耐えながら、摩擦を減らし、摩耗を防ぎ、密封性能を高める働きをしています。

そのためには、潤滑油の選定が鍵となります。

さらに、オイルシールを選ぶ際には、使用する流体の種類や温度範囲、圧力条件など、さまざまな選定基準を考慮する必要があります。

これらを適切に選定することで、オイルシールの性能を最大限に引き出し、機械の長期的な信頼性を保つことができます。


本記事では、オイルシールの潤滑条件が性能に与える影響や、オイルシールの選定基準についてご紹介します。

オイルシール

オイルシールの潤滑メカニズム

潤滑メカニズムについて説明する前に、オイルシールの構造を簡単に見ていきましょう。

エンジンやモーターでよく使われるオイルシールは、回転や往復運動に耐えながら、しっかりと密封を保つために、金属環、シールを軸に押しつけるバネ、そしてシール部分に使われるゴム素材からできています。

オイルシールのリップ部分は、回転や往復する部品と接触する部分で、オイル漏れを防ぐための主リップと、外からのほこりが入らないようにするダストリップがあります。

リップは、回転や往復する部品との接触を最小限に抑えるため、細くてとがった形になっています。


回転用のオイルシールでは、軸が回転し始めると、リップと回転軸の間に油などの液体の膜ができるんです。

この現象は「流体潤滑作用」と呼ばれ、液体が動くことで、すき間を押し広げる力が働くという理論に基づいています。

ちなみに、回転が止まるとこの力が働かなくなり、リップの締め付けによって液体の膜はだんだん消えていきます。


このリップと回転軸の間にできた液体の膜は、わずか数マイクロメートルの厚さで、摩耗を防ぐ役割を果たします。

潤滑条件がオイルシールの性能に与える影響

摩擦と摩耗の軽減

適切な潤滑が行われると、リップ部分と回転軸の間に油膜ができ、摩擦や摩耗を大きく減らせます。

しかし、油膜が薄くなると乾いた摩擦が発生し、摩耗が進んでしまうので注意が必要です。


密封性能の向上

潤滑油がリップ部分にしっかり供給されることで、密封が強化されます。

油膜が均等に広がると、オイル漏れのリスクを減らすことができます。


温度管理

潤滑油は摩擦によって発生する熱を吸収して、オイルシールの温度上昇を防ぐ役割も果たします。

特に高温環境では、どんな潤滑油を使うかが非常に大事です。


潤滑剤の選定

使用環境に合った潤滑油の粘度を選ぶことが大切です。

粘度が高すぎると摩擦が増え、逆に低すぎると油膜ができにくくなります。

適切な潤滑油を選ぶことで、オイルシールの性能を最大限に引き出せます。

オイルシールの選定基準

使用される流体の種類

オイルシールが接触する流体(潤滑油、グリース、燃料など)に応じて、耐性のある材料を選定します。

例えば、ニトリルゴムは一般的な油圧システムに適し、フッ素ゴムは化学薬品や高温環境に適しています。


温度範囲

使用環境の温度範囲を確認し、シールがその範囲内で安定した性能を発揮できるかを確認します。

高温環境ではシリコーンゴムやフッ素ゴムが適しています。


圧力条件

適用される圧力範囲に応じて、耐圧用オイルシールやバックアップリングを選ぶ必要があります。


回転速度と摩耗

軸の回転速度が速い場合、摩耗に強い材料や潤滑性の高いシールを選定することが重要です。


異物の侵入防止機能

ダストリップ付きのオイルシールを使用することで、汚れや異物の侵入を防止できます。


取り付け寸法

オイルシールの取り付けスペースや設計に適合する寸法を選ぶことが重要です。


これらの基準を考慮することで、オイルシールの性能を最大限に引き出し、機械の信頼性を向上させることができます。

まとめ

いかがでしたか?

オイルシールは、機械のパフォーマンスを維持するために欠かせない重要な部品です。

適切な潤滑条件を整え、選定基準に基づいて最適なオイルシールを選ぶことで、摩擦や摩耗を防ぎ、長期間にわたって安定した性能を発揮します。

機械の効率を最大限に引き出し、トラブルを未然に防ぐためにも、潤滑油の選定やオイルシールの選び方には細心の注意を払いましょう。

こうすることで、機械の信頼性が向上し、さらに長く使い続けることができます!