ものづくりプレス

2025-11-27

ゴムの硬さ(JIS硬度)とは?測定方法とシール不良を防ぐための硬度・圧縮率の考え方

パッキンやOリング、ガスケットなどのゴム製シール部品を設計するときに、必ずと言っていいほど登場するパラメータが「ゴムの硬さ(JIS硬度)」です。


しかし実務では、
・とりあえず“標準”と言われる硬度70°を選んでいる
・材料メーカー推奨グレードをそのまま採用している
・実際にどの硬度が自分の用途に最適なのか、説明できない
というケースも少なくありません。


ゴム硬度は、単に「柔らかい・硬い」という感覚の問題ではなく、
・必要な締結力(ボルトトルク)
・面粗さへの追従性
・圧縮率と圧縮永久ひずみ
・高圧・高温環境でのシール性・寿命
といった要素に直結する、シール設計の“基礎体力”のような存在です。


本記事では、ゴム硬度を起点にシール信頼性を高めるため、
・ゴムの硬さ(JIS硬度)とは何か
・硬度と圧縮率・圧縮永久ひずみがシール性能にどう効くのか
・用途別の硬度目安と、迷ったときの選び方の考え方
を、実務設計にそのまま使えるレベルまで整理して解説します。パッキンやOリングのシール不良に悩んでいる設計・技術担当の方に、実務で使える指針をお届けします。

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ゴム硬度とは?まずは感覚的なイメージから

「硬度」と聞くと、金属のビッカース硬さやロックウェル硬さを連想する方も多いと思いますが、ゴムの世界で一般的に使われる「ゴム硬度」は、JISで定められた押してどれくらいへこむかの指標です。


ざっくりしたイメージでいうと、
数値が小さいほど柔らかく、指で押すと大きくへこむ
数値が大きいほど硬く、同じ力ではほとんどへこまない
という関係になっています。


身近な例で擬似的にイメージすると、
シリコン製の柔らかいキッチン用品:硬度 30〜40°程度
一般的なOリング・パッキン:硬度 60〜75°程度
タイヤのトレッドゴム:硬度 60〜70°程度
かなり硬めのゴムローラー:硬度 80〜90°程度


実務では、この「ゴム硬度」をショアA硬度(JIS硬度A)で表現することがほとんどで、図面上では「70°」のように記載されます。

ゴムの硬さの基本構造と測定方法(JIS硬度)

ゴム硬度(JIS硬度・ショアA硬度)の定義

ゴムの硬度は、JIS K 6253 で規定されています。
定められた形状の圧子を一定の力でゴム表面に押し込み、その「へこみにくさ」を数値化したものが硬度です。


硬度が高い … 押し込んでもへこみにくい → 変形しにくい
硬度が低い … 押し込むとよくへこむ → 変形しやすい


一般的なゴム製品では、ショアA硬度(JIS硬度A)が用いられます。

A硬度とD硬度の違い

ゴムの硬度には、主に次の2種類があります。
ショアA硬度
用途:パッキン、Oリング、タイヤ、一般的なゴム部品
対象:中硬度〜軟質ゴム


ショアD硬度
用途:硬質ゴム、硬質プラスチック
対象:A硬度では測定が難しいほど硬い材料
多くのシール部品設計では、ショアA硬度だけを押さえておけば十分なケースがほとんどです。

硬度が設計に与える影響

ゴム硬度を設計でどう扱うかを考える際、特に重要になるのは次の2点です。
・必要な締結力(ボルトトルク)
・面粗さへの追従性(シール性)
硬度が高いほど、同じ圧縮率を得るために必要な締結力は大きくなります。一方、柔らかいゴムは相手材の微細な凹凸に追従しやすく、低圧でも初期のシール性が出しやすくなります。


設計段階で「硬度は何度にするか」を決めることは、すなわち**「どれくらいの締結力で、どれくらいのシール性と寿命を狙うか」**を決めることに近いと言えます。

硬度測定(デュロメータ)の基本

実際にゴム硬度を測定する際は、デュロメータと呼ばれる硬度計を用います。
・試験片の厚み(JIS規定)
・測定面を平滑にすること
・測定時間(押し当ててから何秒後の値を読むか)
・温度条件
といった要素が結果に影響するため、社内評価では条件を揃えることが重要です。

硬度だけでなく、材料全体も比較したい方へ

ゴム素材ごとの特性や用途も、あわせて整理しませんか?

ゴム硬度を正しく選ぶには、そもそも各ゴム材料がどのような特性を持つかを把握しておくことが重要です。材料の違いから整理したい方は、こちらもご覧ください。

ゴム素材の種類と特性を見る

シール設計の核心「圧縮率」と「圧縮永久ひずみ」

圧縮率(Compression Ratio)とは

圧縮率(Compression Ratio)とは
ゴム部品が溝にセットされた状態で、どれくらい「押し潰されているか」を示す比率が圧縮率です。


$$\text{圧縮率}(\%) = \frac{\text{元の厚さ} - \text{溝深さ}}{\text{元の厚さ}} \times 100$$
例えば、厚さ2.0mmのパッキンを1.6mmの溝に組み込んだ場合、(2.0 − 1.6) ÷ 2.0 × 100 = 20% となり、「圧縮率20%で設計されている」という状態になります。

圧縮率がシール性能に与える役割

シールの役割は、圧縮によって生じるゴムの弾性反発力(シール荷重)が、内部の流体圧力に打ち勝つことで漏れを防ぐことです。
圧縮率が低すぎる → 反発力が不足し、低圧でも漏れやすい
圧縮率が高すぎる → 初期シール性は高いが、永久ひずみや早期破損を招きやすい


一般的に、Oリングやパッキンの圧縮率は「10〜30%」の範囲が一つの目安と言われていますが、実際には「硬度」「圧力」「温度」「面粗さ」などによって最適値は変わります。

寿命を決める「圧縮永久ひずみ」

ゴムを長期間圧縮したまま使用すると、元の厚みに戻る力(反発力)が徐々に失われていきます。この戻らなくなった分”を定量化した指標が圧縮永久ひずみ(Compression Set)です。


圧縮永久ひずみが大きくなると、
反発力が低下し、シール荷重が不足する
同じ圧力条件でも、使用開始時より漏れやすくなる
高温環境では、熱劣化と相まって急速に進行する
といった形で、シール寿命を大きく削っていきます。


「硬度」「圧縮率」「温度」「使用時間」は、すべて圧縮永久ひずみに影響するため、単に“硬い・柔らかい”だけでなく、これらのバランスを見ながら設計することが重要です。

実際の用途や実績も確認したい方へ

ゴム部品・シール部品の製品実績はこちら

硬度や圧縮率の考え方を理解した次は、実際にどのようなゴム部品・シール部品で活かされているかを確認する段階です。用途や形状のイメージを広げたい方は、製品実績もあわせてご覧ください。

製品実績を見る

硬度と圧縮率の最適バランスを見極める

低硬度(60°未満)のメリット・デメリット

低硬度のゴムは、次のような特徴を持ちます。

メリット デメリット
低い締結力でも十分な圧縮率が得られる 高圧環境では、溝のすき間から押し出されやすい(押出破壊)
相手材の面粗さへの追従性が高く、低圧・低荷重でシール性を出しやすい 圧縮永久ひずみが大きくなりやすく、長期使用で反発力が低下しやすい

低圧の空気シールや、面粗さが大きい相手材を使う低圧配管などには向いていますが、高圧油圧回路などでは注意が必要です。

高硬度(80°以上)のメリット・デメリット

一方、高硬度のゴムには次のような特徴があります。

メリット デメリット
高圧環境下での押出破壊に強い 同じ圧縮率を得るために高い締結力(ボルトトルク)が必要
圧縮永久ひずみが小さく、反発力が長期間維持されやすい 相手材の粗さを埋めきれず、初期リークを起こしやすい

油圧シリンダーなど、高圧・高荷重の用途では高硬度が有利ですが、相手面の仕上げ精度が悪い場合は、面粗さの改善や溝設計の見直しをセットで検討する必要があります。

最適化の基本的な考え方

硬度と圧縮率を最適化する際の基本的な考え方を整理すると、次のようになります。


圧力が高い → 高硬度+溝クリアランスの最小化+押出防止リングも検討
温度が高い → 材料選定を優先しつつ、圧縮率をやや低めにして永久ひずみを抑制
面粗さが大きい → 低硬度+高めの圧縮率で凹凸を埋める
締結力制約が厳しい → 低〜中硬度で圧縮率を調整し、必要トルクを抑える


このように、「硬度」「圧縮率」「圧力」「温度」「面粗さ」「締結力制約」の6つをセットで見ていくことが、長期的なシール信頼性のカギになります。

用途別のゴム硬度目安と選び方フローチャート

用途別|ゴム硬度の目安

具体的な設計の出発点として、用途別の硬度目安を簡単に整理すると次のようになります。(実際には材料・配合・環境条件で変動します)


自動車用Oリング(エンジン周辺、油圧系):70°前後が標準、条件によって80°も検討
一般産業機械の配管用パッキン:60〜70°
高圧油圧シリンダーシール:80°以上
防振ゴム・緩衝材:40〜60°
手で着脱するカバー用シール:50〜60°

硬度選定の簡易フローチャート(考え方)

迷ったときは、次のようなステップで絞り込むと整理しやすくなります。


最大使用圧力はどの程度か
高圧(例:10MPa以上) → まず80°以上を検討
低〜中圧 → 60〜70°帯をベースに検討


使用温度はどの程度か
高温(例:150℃以上) → 材料選定を優先し、70°前後で圧縮率を慎重に設定
常温〜中温 → 硬度・圧縮率の自由度が高い


相手材の面粗さ・加工精度はどうか
粗い、精度が出にくい → 60°前後のやや低硬度+圧縮率高め
精度が高い → 70°〜80°でも追従可能


締結力の制約はあるか
ボルト本数・トルクに制限 → 低〜中硬度で圧縮率を調整
制約が緩い → 高硬度で高圧対応も検討可能


このようなフローで条件を整理し、「候補硬度」を2〜3種類に絞ったうえで、実際の試作・評価で最適な硬度を決めていくのが現実的なプロセスです。

まとめ|ゴム硬度の理解がシール信頼性を左右する

最後に、本記事のポイントを整理します。


・ゴム硬度(JIS硬度)は、「押してどれくらいへこむか」を数値化した指標であり、締結力・面粗さへの追従性・圧縮永久ひずみ・寿命に直結する。
・シール設計では、「硬度」と「圧縮率」をセットで考えることが重要で、圧力・温度・面粗さ・締結力制約などによって最適解が変わる。
・低硬度は低締結力・高追従性に有利だが、高圧や長寿命では不利になりやすい。
・高硬度は高圧・長寿命に有利だが、初期シール性や締結力に注意が必要。
・用途別の硬度目安を出発点にしつつ、試作・評価を通じて**「自社にとっての最適硬度」**を見極めることが重要。


ゴムの硬度は、一見シンプルな数字ですが、その背景には材料特性・設計・製造・評価が複雑に絡み合っています。
「いま使っている硬度が本当に最適なのか」「シール不良の根本原因を整理したい」といったお悩みがあれば、図面・使用条件ベースでのご相談からでも構いませんので、ぜひ一度お問い合わせください。

FAQ:ゴム硬度に関するよくある質問

Q1. ゴム硬度60と70で迷ったとき、どう考えればいいですか?
A. 低圧で相手面の粗さが大きい場合は60、圧力が高めで寿命を重視する場合は70を優先して検討する、というのが一つの目安です。締結力の制約や温度条件も関わるため、最終的には条件整理と試作評価で決定することをおすすめします。

Q2. 高温環境では、硬度よりも何を優先すべきですか?
A. まずは材料(耐熱性・耐媒体性)を優先し、そのうえで硬度と圧縮率を決めます。高温では圧縮永久ひずみが進行しやすいため、硬度だけでなく「どれくらいの期間・温度で使うか」を含めて検討することが重要です。

Q3. 今使っている硬度を変えずに、シール性を改善する方法はありますか?
A. 溝寸法の見直しによる圧縮率の最適化、相手材の面粗さ改善、締結ボルト配置の見直しなどで、硬度を変えずにシール性が改善するケースもあります。ただし、根本的に用途に対して硬度が合っていない場合は、硬度変更も含めた検討が必要です。


Q4. 図面に「硬度70±5°」とある場合、この範囲内なら問題ありませんか?
A. 図面上は許容範囲でも、実際のシール性能に影響する場合があります。例えば高圧用途では「70°が最適」で、65°だと押出しやすい…といったケースもあるため、重要な部位では実力値のばらつきも含めて評価しておくと安心です。

Q5. 硬度の違いによるコスト差はありますか?
A. 一般的には同一材料グレード内での硬度差は、材料費に大きな影響を与えません。むしろ、硬度選定を誤ったことによるシール不良やライン停止のほうが、トータルコストへの影響は大きくなります。

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