ものづくりプレス
2026-09-03
廃盤部品が調達できない時の対処|図面なしで進める5手順
長く使ってきた部品に「もう作っていません」と告げられる。設備は動いているのに、部品だけが先に終わる。製造業の調達では珍しくない場面です。
この記事では、廃盤の連絡を受けた直後に何から手を付ければよいかを、判断の順番どおりに整理します。図面が残っていない前提でも進められる手順に絞ってまとめました。
作成者 西田(富士ゴム化成株式会社) 会社情報
作成日 2026年9月3日 最終更新日 2026年9月3日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分
廃盤部品が調達できないとき、最初に何をすればよいですか?
最初にやるべきは代替品探しではなく、現物と使用条件の確保です。手元の現品、取り付け先の情報、使用温度や接触するものを押さえておけば、その後どの道を選んでも判断が早くなります。
時間を稼ぐ行動と、根本から解決する行動を分ける
やることは大きく2種類しかありません。在庫を探して当面の生産をつなぐことと、同じ部品を作れる状態にすることです。前者だけを続けると探す手間が毎回発生し、いずれ探しても見つからなくなります。在庫の残りが半年を切っているなら、探すのと並行して作り直しの準備を始めてください。
現品が1個でも残っていれば、選択肢は広がる
再現の可否を分けるのは、図面の有無よりも現品の有無です。摩耗していても変形していても、寸法と材質を読み取る手がかりになります。廃棄予定の設備から外した同型部品があれば、それも確保しておいてください。取り外したままの状態が、接触していたものや温度を推定する材料になります。
出典:富士ゴム化成「切削加工・3Dプリント」ページ掲載のご相談内容(2026年8月確認)。お客様からいただくご相談には「廃盤し現物はあるが図面がない」が含まれています。
なぜゴム部品は突然「廃盤」になるのですか?
部品そのものの需要よりも、材料と金型の事情で決まることが多いためです。使用量の少ない配合は材料メーカー側で整理され、長期間動いていない金型は保管の見直し対象になります。
「まだ在庫があります」は解決ではなく猶予
在庫があるという回答は、期限つきの猶予にすぎません。残数を自社の使用量で割って、いつ尽きるかを数字にしてください。尽きる時期が分かれば、作り直しの準備にどれだけ時間を割けるかが決まります。
金型の所在確認は、廃盤を先に知る数少ない手がかり
当社にも2026年に入ってから、長期間使用していない金型の調査依頼が増えています。取引の適正化に関する動きを背景に、保管している金型を棚卸しする企業が増えているためと考えられます。自社の部品の金型がどこにあり、まだ使える状態かを確認しておくと、供給が止まる前に手を打てる可能性が高くなります。
出典:当社が2026年8月時点で受けているご相談の傾向(自社集計)。件数は公表していないため、傾向としてのみ記載しています。
自社の猶予は、どのくらい残っていますか?
当てはまる項目が多いほど、供給が止まったときの影響が大きく出やすい状態です。下のチェックは診断ではなく、社内で状況を共有するための整理として使ってください。
廃盤リスクのセルフチェック(6項目)
当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。
当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。
当てはまった数でみる読み取り方
| 当てはまる数 | 読み取り方 |
|---|---|
| 0〜1個 | 当面は在庫と発注の運用で回せる状態です。年に一度、在庫の残りを確認しておけば十分です。 |
| 2〜3個 | 供給が細り始めたときに気づきにくい状態です。まず現品と図面の有無を確認してください。 |
| 4〜6個 | 止まったときの影響が大きい部類です。現品を確保し、作り直しの可否を早めに確認することをおすすめします。 |
図面がなくても、同じ部品を作り直せますか?
現品があれば、図面がなくても検討を進められます。現物から形状を測り、材料の特性を調べ、あらためて図面を起こす流れです。当社ではこの現物調査から量産までを5つの段階に分けています。
01お問い合わせ・ヒアリング 困っている状況をうかがいます。現物があれば図面がなくてもご相談いただけます
02現物調査・材料分析 お預かりした部品を調べ、素材の特性や劣化の状況を確認します
03設計・図面作成 現物のデータをもとに、あらためて図面を作成します
04試作・評価 3Dプリントなどを使って試作品を作り、性能を確認します
05量産・納品 評価で問題がなければ量産に移ります
現物調査では、寸法だけでなく劣化の状態まで見る
現品からは寸法以外の情報も読み取れます。どこがどう傷んでいるかが分かれば、元の部品の弱点も一緒に見つかることがあります。再現するときに同じ弱点を引き継がずに済むのは、現物調査の副産物です。
| 確認する項目 | 何が分かるか | 現品がない場合 |
|---|---|---|
| 外形寸法・断面形状 | 図面を起こすための基礎データ | 取り付け先の寸法から逆算します |
| 硬度 | 材料の候補を絞り込む手がかり | 使用条件から推定範囲を決めます |
| 表面の状態 | 接触していたものや温度の推定 | 運転条件のヒアリングで補います |
| 摩耗の偏り | 取り付け精度や偏芯の有無 | 設備側の確認が必要になります |
| 金属部との接合 | 焼付成形やインサート成形の要否 | 図面か写真が必要です |
なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。
出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページに掲載している進め方(2026年8月確認)。当社はゴム製品ではコンプレッション成形や焼付成形、樹脂製品ではインサート成形を得意としています。
代替品を探すのと作り直すのは、どちらが早いですか?
数量が少なく形状が特殊なほど、作り直すほうが現実的になります。市販品で置き換えられるなら、それが最も早い解決です。置き換えが難しい形状や取り付け寸法なら、現物から作るほうが手戻りが少なくなります。
| 選択肢 | 向いている状況 | 注意する点 |
|---|---|---|
| 市販の代替品を探す | 規格品に近い形状で、寸法に許容幅がある | 性能や寸法にずれが出ることがある |
| 設計を見直して部品ごと変更 | 設備を更新する予定がある | 周辺部品まで影響が及ぶ |
| 現物から作り直す | 図面がない、形状が特殊、数量が少ない | 現品と使用条件の確認に時間がかかる |
もし「金型を作るほどの数量ではないが、品質は落とせない」という状況であれば、金型を使わない試作から入る進め方があります。当社の切削加工・3Dプリントは、まさにこの領域のために用意しているサービスです。工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較でも整理しています。
許容できるずれを先に決めておくと、判断が速くなる
もし寸法が多少違っても機能するなら、市販品の選択肢は一気に広がります。もし取り付け精度がそのまま漏れにつながる部位なら、現物に合わせて作るほうが確実です。どこまでのずれを受け入れられるかは、使っている側にしか決められません。ここを先に決めておくと、見積りの比較も揃います。
相談するとき、何をそろえればよいですか?
現品、使用条件、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。
| そろえるもの | 内容 | 無い場合 |
|---|---|---|
| 図面 | 寸法や形状が分かるもの | 現品があれば現品で代替できます |
| 仕様・用途 | どこに使い、何を止めるか | 使用条件を口頭でうかがいます |
| 数量 | 今回必要な数と年間見込み | 概算でかまいません |
| 材料・材質 | ご希望の材質があれば | 使用条件から候補をご提案します |
当社は相見積もりを歓迎しています。条件をそろえて出したほうが比較できる見積りになりますので、条件の整理からご相談いただいて構いません。仕入先の切り替えそのものを検討している場合は、取引先の廃業・倒産でゴム部品が調達できない時の進め方もあわせてご覧ください。
社内で承認を取るときに並べる3つの数字
作り直しを進めるには社内の承認が要ります。その場で聞かれるのは、だいたい同じ3点です。在庫が尽きるまでの月数、代替品で置き換えられるかどうか、そして作り直しに必要な期間。この3つを並べておけば、判断する側も比べやすくなります。
廃盤部品の調達で、よくいただくご質問は?
図面がない場合の対応、少量への対応、素材の範囲についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つを、回答とあわせてまとめました。
図面が残っていなくても相談できますか?
はい。現物から形状を解析し、材料の特性を分析することで、図面がなくても再現に取り組めます。摩耗していても変形していても、寸法と材質を読み取る手がかりになります。
1個だけでも作ってもらえますか?
多品種少量生産を得意としており、1点からの試作のご相談も承っています。数量が少ないほど金型の費用の扱いが判断を左右するため、まず数量と年間見込みをお聞かせください。
どのような素材に対応していますか?
工業用ゴム製品・樹脂製品を中心に、幅広い材料に対応しています。用途に応じた素材選定もご提案します。金属部品と一体になった構造も、現品を確認したうえで検討します。
硬度や寸法は測ってもらえますか?
2D図があれば対応できます。現品しかない場合も、現物調査の中で寸法と硬度を確認します。
工場を見せてもらうことはできますか?
必要に応じて工場視察や監査も可能です。品質保証部を設置し、ご要望に合わせて抜取り検査と全数検査を自社内で行える体制を整えています。
次に何から手を付ければよいですか?
在庫の残りが半年を切っているなら、現品を確保して使用条件を書き出すところまでを先に終えてください。そこまで進んでいれば、相談の場で材料と工法の話にすぐ入れます。
材料の選び方と寸法表を先に確認する
SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。
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