ものづくりプレス

2026-09-04

廃番オイルシールの代替品選定|寸法だけで選ばない5視点

オイルシールは、寸法が同じでも別物として振る舞います。リップの形やばねの有無が違えば、止まるはずのものが止まりません。

この記事では、廃番になったオイルシールの代替品を選ぶときに確認する5つの視点と、市販品で置き換えるか現物から作り直すかの分かれ目をまとめます。

作成者 橋本(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月4日 最終更新日 2026年9月4日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

廃番オイルシールの代替品は、どこから選び始めますか?

始点は寸法ではなく、軸の動き方です。回転か往復か、周速はどのくらいか、油を止めるのか粉を止めるのか。この使い方が決まって初めて、寸法とリップ形状の候補が絞れます。

オイルシールの代替品選定で、寸法が合うことと密封が成立することが別の条件であることを示す図 図1 「入る」ことと「機能する」ことは別 機能するために要るもの 寸法だけ合わせた場合 リップの形と本数 ばねの有無と締め付け 材質と使用条件の一致 軸とハウジングの状態 取り付けはできる 密封の方向が変わることがある 異物が入りやすくなる 摩耗が早まる 寸法は必要条件であって、十分条件ではありません。

すでに漏れているなら、原因の切り分けが先

交換で直る漏れと、交換しても再発する漏れがあります。見た目から原因を特定する手順はシール不良のトラブルシュートにまとめていますので、部品の選定に入る前に一度目を通しておくと、選ぶべき仕様が変わることがあります。

出典:富士ゴム化成「製品実績」ページ(2026年8月確認)。当社はパッキン類としてオイルシール・Oリング・バックアップリングなどを扱っています。

寸法はどこを測れば、代替品を特定できますか?

軸径にあたる内径、ハウジング径にあたる外径、幅の3点が基本です。加えてハウジングの深さと面取りの有無も確認してください。外径が同じでも、浅ければ収まりません。

測る場所 押さえるポイント 現品では測れないもの
内径(軸径)現品ではなく軸を測る摩耗で広がっているため
外径ハウジング径。腐食や傷も確認
ハウジングの深さとあわせて
面取り圧入時に外周部を傷めていないか
軸の段差リップの当たり跡が溝になっていないか設備を止めて確認

現品の内径をそのまま指定すると、緩い代替品になる

使用済みの現品は内径が摩耗で広がっています。したがって現品の内径を指定値にすると、締め付けの足りない部品になります。軸そのものを測って軸径を確定し、そこから逆算するほうが確実です。軸に摩耗の段差がある場合は、段差のない位置で測ってください。

軸に残ったリップの当たり跡が浅い場合と深い場合で、対応方法が変わることを示す図 図2 軸の段差は、浅いか深いかで打つ手が変わる 浅い段差 深い段差 浅ければ取り付け位置をずらして当たり面を変える。深ければ軸の補修か、外径側で寸法を調整した部品を用意する。 段差の深さの判断基準は設備と用途によって変わります。現地で確認したうえで決めていきます。

リップ形状とばねの有無は、どう見分けますか?

現品を断面で見て、リップの本数とばねの有無を確認します。ばねが入っていれば内径側に締め付ける力が働き、油の密封に向きます。ばねがなければ締め付けは弱く、粉やグリスを止める用途に向きます。

軸の動き方の確認から材質の選定まで、代替品を決める手順を4段階で示す図 図3 代替品を決めるまでの順番 STEP 1 動き方を決める 回転か往復か 周速はどのくらいか STEP 2 止めるものを決める 油・薬品・粉 複数あればすべて STEP 3 形状を読む リップの本数 ばねの有無 STEP 4 材質を絞る 温度・圧力・時間 から候補を出す この順で決めると、寸法だけで選んで漏れるという失敗を避けられます。

リップの本数は、形状ではなく機能の違い

リップが2本ある場合、外側は外部からの異物侵入を防ぐダストリップであることが多く、内側が油を止めています。1本リップの代替品に置き換えると異物が入りやすくなり、内側のリップの摩耗が早まります。本数は見た目の違いではなく、役割の違いだと考えてください。

当たり跡から、動きと荷重の偏りが読める

リップの接触跡が全周で均一なら、軸は芯が出た状態で回っています。片側だけ強く当たっていれば、偏芯か取り付けの傾きが疑われます。当社では現物調査の段階で、寸法と硬度に加えてこうした接触跡も確認します。早期に傷んだ原因が構造側にあるなら、その点をお伝えしたうえで仕様を組み立てます。

材質はどの条件から決めればよいですか?

温度、接触するもの、圧力、使用時間の4条件です。オイルシールではこれに軸の周速が加わります。周速が高いほど接触部が発熱するため、材料が実際に受ける温度は油温より高くなります。

略号 名称 特徴
NBRニトリルゴム最も一般的な材料。耐油性や耐摩耗性が良い反面、耐候性は良くない
HNBR水素化ニトリルゴムNBRの耐候性や耐熱性を改良したグレード。耐寒性やコスト面ではNBRに劣る
CRクロロプレンゴム機械的強度や耐候性、難燃性に優れ、自己消化性のあるバランスの良いゴム
FKMフッ素ゴム耐熱性・耐油性・耐薬品性・耐オゾン性に優れる。耐寒性が低く、有機酸・ケトン・エステル・アミン系に耐性がない
VMQシリコーンゴム優れた耐熱性・耐オゾン性・耐寒性を持ち、生理不活性でもある

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」主要合成ゴムの特性(2026年8月確認)。油温だけで材質を決めると、接触部の発熱を見落とすことがあります。

自社のオイルシールは、置き換えの情報がそろっていますか?

当てはまる項目が多いほど、代替品の特定に必要な情報が欠けている状態です。足りない項目が見えたら、そこから確認してください。

代替品を選ぶ前の情報チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個置き換えに必要な情報はそろっています。寸法と使用条件を伝えれば選定に進めます。
2〜3個形状か使用条件のどちらかが不足しています。次の停止時に軸と現品を確認してください。
4〜6個情報が不足した状態です。同じ症状を繰り返さないために、まず軸の状態から確認することをおすすめします。

市販品で置き換えるか、作り直すかはどちらですか?

寸法が規格に近く、リップ形状も一般的なら市販品で足ります。特殊な寸法や断面、数量が少なくて既製品の設定がない場合は、現物からの再現が早く収まります。

もし軸径とハウジング径が一般的な組み合わせなら、まず市販品の設定を探してください。もし過去に特注していた形状なら、探しても見つからない可能性が高くなります。もし設備の更新が近いなら、ハウジング側を規格寸法に加工し直す選択肢も検討に入ります。当社では廃盤部品の再現として、現品からの再現を承っています。

ハウジング側の状態も、選定の情報になる

ハウジングの内側に傷や腐食があると、外周からの漏れが起きます。この状態を放置したまま部品だけを替えても、症状は変わりません。外周部にゴムを巻いたタイプを選ぶなどの対応が必要になる場合もあるため、軸だけでなく取り付け先の状態もあわせて見ておいてください。

置き換えたあとは、最初の交換周期まで記録を残す

切り替えた直後は、いつ・どのくらいで漏れたかの記録が次の判断材料になります。前と同じ周期で持てば材質と形状の選択は妥当だったと分かりますし、早く傷めば条件の読み違いが残っていることになります。交換日と使用時間だけでも残してください。

廃番オイルシールについて、よくいただくご質問は?

寸法が同じ場合の可否、軸の摩耗の確認、ばねの状態の見分け方についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

内径・外径・幅が同じなら、そのまま使えますか?
入りますが、密封できるかは別の話です。リップの形、ばねの有無、材質がそろって元と同じ働きになります。「入ること」と「機能すること」を分けて考えてください。

軸の摩耗はどう確認すればよいですか?
リップが当たっていた位置に、溝状の段差が残っていないかを目視と手触りで確認します。段差が残ったまま新しい部品を入れると、リップが落ち込んで同じ場所から漏れ始めます。

現品のばねが弱っている気がします。判断できますか?
同じ設備の未使用予備品や同型機の部品と比べるのが確実です。比べるものがない場合は、現物調査でリップの当たり跡から接触の状態を読み取ります。

金属環が入ったオイルシールでも作れますか?
ゴム製品ではコンプレッション成形や焼付成形、樹脂製品ではインサート成形を得意としています。金属と一体の構造でも、まずは現品を確認させてください。

少量でも依頼できますか?
多品種少量生産を得意としており、1点からの試作のご相談も承っています。寸法が一般的でない場合ほど、現物からの再現が現実的な選択になります。

代替品を探し始める前に、何を用意すればよいですか?

現品と、軸・ハウジングの実測値を書いたメモです。寸法は現物調査でも確認できますが、軸の動き方と使用条件は使っている側にしか分かりません。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

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