ものづくりプレス

2025-12-19

世界のタイヤ・ゴム展示会から読み解く「次世代シール材・ガスケット」3つの潮流

Tire Technology Expo、RubberTech China などのタイヤ・ゴム系展示会には、タイヤメーカーだけでなく、ゴム材料メーカー・添加剤メーカー・シール/ガスケットメーカーも多数出展します。

ここ数年のキーワードを一言でまとめると、「エネルギー転換 × 環境規制」にどう対応するか、です。

  • 脱炭素
  • 電動化(EV/FCV)
  • 水素エネルギー
  • マイクロプラスチック・PFAS規制

その結果、シール材・ガスケットにも、「従来以上の耐熱・耐薬品・耐圧性能」「水素・電解液・新冷媒など“新しい媒体”への対応」「LCA・PFAS・マイクロプラスチックを意識した環境配慮」といった『次世代の当たり前』が求められ始めています。

【本記事のポイント】
  • 水素・燃料電池・バッテリーを支えるエネルギー機器向けシール
  • PFAS・マイクロプラスチック規制を見据えた環境配慮シール
  • 一体化・連続生産・自動化を前提にした「構造としてのシール」

本記事では、世界のタイヤ・ゴム展示会や水素・バッテリー系展示会の情報から、次世代シール材・ガスケットの潮流を整理します。


世界のタイヤ・ゴム展示会をイメージした会場で、次世代シール材・ガスケットの3つの技術潮流(エネルギー・水素、エコ・PFASフリー、一体化構造)を示すホログラムディスプレイの前に人々が集まっているイラスト。

1. 水素・燃料電池・バッテリーを支える「エネルギー機器向けシール」

1-1. 水素エネルギーと“本当のH₂レディ”シール材

水素関連の展示会では、「H₂-ready(H₂対応)」をうたうシール材が一気に増えています。

  • 高圧水素向け FKM/FFKM Oリング
  • 70MPa クラスの水素圧での RGD(急激ガス減圧)に耐える専用コンパウンド
  • 低透過・高耐久の PTFE/複合ガスケット

一方で、ラベルだけ「H₂レディ」でも、「実際には He 試験のみで、水素そのものでの評価は不十分」「圧力・温度・サイクル条件が実機と合っていない」といったケースもあります。
設計・調達の側は「どの試験条件・どの評価基準で“H₂レディ”と言っているのか」まで踏み込んで見ることが重要になってきています。

1-2. 燃料電池・水電解スタック向けフラットガスケット

燃料電池スタックや水電解槽スタック向けには、セルごとに使う薄肉フラットガスケットへの要求が急速に高まっています。

展示会では、「キャリアフィルムにエラストマーをコーティングしたロール供給型ガスケット」や「熱可塑性フレームとエラストマーシールを一体成形したスタック用シール」など、スタックをどう量産するかを意識した提案が増加中です。

1-3. バッテリーセル周りの専用シール材

EV/蓄電池関連のブースでは、バッテリーセル周辺のシールに特化したポートフォリオも目立ちます。

  • 電解液耐性・難燃性・ガスシール性を両立した専用コンパウンド
  • セルカバー用のフォームガスケット・液状ガスケット(FIPG/CIPG)
  • モジュール・パック周りの防水・防塵ガスケット

【あわせて読みたい】
水素・燃料電池・バッテリー向けシールの規格や要求条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
「水素社会」実装に向けたシール・ガスケットの国際規格動向

2. PFAS・マイクロプラスチック規制を見据えた「環境配慮型シール」

2-1. PFASフリー・低環境負荷コンパウンドへのシフト

タイヤ・ゴムの展示会では、タイヤ本体だけでなく、金型用の離型剤・添加剤でも「PFASフリー」「低環境負荷」が前面に出てきています。
シール材でも同様に、「PFASを含まないフッ素系ゴムコンパウンド」や「代替フッ素系樹脂・エラストマーの模索」といった提案が増え、将来的なPFAS規制を見据えた置き換え需要が見え始めています。

2-2. タイヤ摩耗粒子と同じ文脈で語られる“摩耗粉”

マイクロプラスチックの文脈では、シール材・ガスケットでも以下の要素が要求事項に入り始めています。

  • 長寿命化による交換頻度の低減(=廃棄物削減)
  • 摩耗粉・剥離粉を極力出さない材料・構造
  • ライフサイクル全体(LCA)での環境負荷評価

「環境対応」というと材料種別だけに目が行きがちですが、「どれだけ長く、性能を維持し続けられるか」という観点も、次世代シール材の重要な軸になりつつあります。

2-3. 再エネ設備・屋外機器向けの新しい用途

太陽光パネルの防水・防塵ガスケットや、風力発電設備の長寿命シールなど、再エネ設備・屋外機器向けのシール材が、展示会でも専用カテゴリとして扱われるようになってきました。

【あわせて読みたい】
PFAS規制の動向や代替材料の選定ポイントについては、以下の記事をご参照ください。
PFAS規制時代のフッ素系ゴム選定ガイド|用途要件からの置換・最適化の進め方

3. 一体化・連続生産・自動化を前提にした「構造としてのシール」

3-1. 連続生産できるガスケットという発想

水素・電池スタック向けガスケットでは、「ロール状のキャリアフィルムにエラストマーを連続コーティング」し、「ロールから打ち抜き・レーザーカットでセル形状に加工」するといった提案が増えています。
これにより、成形コスト削減や自動組立ラインへの投入性向上など、生産性向上まで含めてメリットを訴求するケースが目立ちます。

3-2. フレーム一体化・ラミネート構造による機能統合

さらに最近の展示会では、シール材を「熱可塑性フレームと一体成形したモジュール」や「金属キャリアに PTFE/エラストマーをラミネートした複合ガスケット」として提案する事例が増加しています。

  • 部品点数の削減(ボルト・スペーサー・単体ガスケットを統合)
  • 組立工数・組立不良の削減
  • シール性・位置決め精度・熱変形追従性の両立

これらにより、「シール=部品」から「シール=ユニット/構造」の発想へ移行しつつあります。

4. 展示会トレンドを、自社の設計・調達にどう落とし込むか

ここまでの潮流を踏まえると、今後のシール材・ガスケット選定で押さえておきたいのは次の3点です。

  • エネルギー機器の将来案件を見据える
    H₂対応・電解液対応・難燃対応など、「次世代グレード」の候補を把握しておく。
  • 環境規制を“材料だけ”でなく“寿命・LCA”で捉える
    PFAS/マイクロプラスチックだけに目を奪われず、交換頻度・摩耗粉・廃棄フローまで含めて評価する。
  • 生産性・自動化を前提に、構造としてシールを設計する
    一体成形・ラミネート構造・ロール供給などの新しい形態を、新機種・次期モデルのシール設計候補として検討する。

まとめ──展示会は「新素材カタログ」ではなく「5年後の標準仕様」を教えてくれる場

世界のタイヤ・ゴム展示会やエネルギー系展示会は、単なる“新素材お披露目の場”ではなく、「5年後に標準仕様として求められるであろうシール材・ガスケット」の方向性を示してくれる場になっています。

「エネルギー機器向け」「環境配慮型」「構造としてのシール」。これらの潮流は、数年のうちに「特殊な仕様」ではなく、「当たり前の要求」として図面に書かれるようになるはずです。
いまの段階で、自社のシール仕様がどこまで“次世代の当たり前”を見据えているかを整理しておくことが、展示会トレンドをビジネスとしての競争力に変えていくための第一歩になります。

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