ものづくりプレス

2026-01-28

RoHS/REACH/TSCAの違いを“調達実務”で理解する:ゴム・樹脂部品の化学物質規制チェック手順

「RoHSはOK?」「REACHは?」「TSCAは大丈夫?」

調達現場でこの3つを“同じ規制”として一括りにすると、確認漏れ・証拠不足・顧客監査での手戻りが起きやすくなります。理由はシンプルで、RoHS/REACH/TSCAは「対象」「求められる証拠」「運用の仕方」が別物だからです。

本記事では、ゴム・樹脂部品(Oリング/パッキン/ガスケット/樹脂成形部品/ゴム+金属の複合部品など)を調達する立場で、「何を」「どの順で」「どの証拠を集めれば」判断できるかを、実務手順としてまとめます。

読み終える頃には、社内の標準手順(テンプレ)としてそのまま使える状態を目指します。

ゴム製Oリングやプラスチック部品を運ぶコンベアの上に、EU(RoHS/REACH)とUS(TSCA)を示す3つのフォルダが並び、手前にチェックリストがあるアイソメトリックイラスト。規制対応と実務手順のイメージ。

まず結論:迷わないための“3つの分岐”

最初にここだけ固定すると、現場が一気に回ります。

  1. 出荷先はどこか(EU/米国/その他)
  2. 最終製品はEEE(電気電子機器)に該当するか(RoHS要求が来るか)
  3. 対象は「物質・混合物」か「成形品(article)」か(REACHの見方が変わる)

この3点で、見るべき規制と集めるべき書類のセットが決まります。

RoHS/REACH/TSCAを“調達実務”で整理するとこうなる

ここでは「覚える」より「運用で使う」ことを優先して整理します。

🇪🇺 RoHS(EU)

位置づけ:主に電気電子機器(EEE)に含まれる特定有害物質の使用制限

調達がやること:

  • 取引先からRoHS適合要求が来たら、制限物質の含有有無(閾値)を確認
  • 複合部品は「均質材料」単位で整理が必要になりやすい

🇪🇺 REACH(EU)

位置づけ:EUの化学品規制の総本丸(成形品も対象になり得る)

調達がやること:

  • SVHC(高懸念物質)の含有有無を確認(成形品でよく要求される)
  • 制限(用途制限)に該当しないか確認(用途で刺さる)
  • “何が入っているか”だけでなく、情報伝達(サプライチェーンの証拠)が論点

🇺🇸 TSCA(米国)

位置づけ:米国の化学物質規制(輸入時に適合確認が必要になる場面がある)

調達がやること:

  • 米国向け(または米国経由)の場合、輸入者側の確認に使えるようにTSCA適合/対象外の根拠情報を揃える
  • 「輸出先が米国」だけでなく、「最終顧客が米国」でも要求が来やすい

ステップ0:適用範囲を確定(ここが曖昧だと全部ブレる)

0-1. EU向けでRoHSが絡むか(EEEかどうか)

ゴム・樹脂部品単体はEEEではないことが多いですが、最終製品がEEEなら部品にもRoHS要求が流れてくるのが実務です。「最終製品はEEEか」「顧客要求としてRoHS適合が条件か」を確定します。

0-2. EU向けでREACHは“成形品”として見るか

Oリングや樹脂成形品は、実務上はほとんど「成形品」として扱う想定で進めた方が安全です。論点は「登録」よりも、SVHC含有の情報伝達/制限(用途制限)の該当性になります。

0-3. 米国向けでTSCA対応が必要か

米国に輸出・輸入が絡むなら、輸入者側(顧客や商社)がTSCAの確認を行うため、調達側はサプライヤー情報・適合根拠を揃えておく必要があります。

ステップ1:部品を“3分類”して、必要書類セットを固定する

現場で揉めないコツは、まず部品を分類し、分類ごとに「必要書類の最小セット」を決めることです。

  • A)材料・化学品(接着剤、潤滑剤、洗浄剤、コーティング剤など)
    主戦場:REACH/TSCA
    まず取る:SDS、成分情報、規制該当性の宣言
  • B)成形品(Oリング、パッキン、樹脂成形部品など)
    主戦場:REACH(SVHC)+必要に応じてRoHS
    まず取る:SVHC該当性の宣言、制限該当性の確認、RoHS要求があるなら適合宣言
  • C)複合部品(ゴム+金属、樹脂+インサート等)
    主戦場:RoHS(均質材料の分解)+REACH(部位ごとの情報)
    まず取る:材料構成(どの部位が何材料か)、部位別の含有情報

ステップ2:調達が要求する“最小セット”を決める(取り過ぎない・漏らさない)

ここが実務で一番価値が出ます。結論は、最初からフルセット要求にしないこと。「標準パック(最小)」→「リスクがある場合だけ追加」の順が、最も回ります。

2-1. 共通で必ず取る(EU/US問わず強い)

  • 規制適合宣言(RoHS/REACH SVHC/TSCAの該当性をYes/Noで明記)
  • 変更管理(材料・配合・工程・拠点変更の事前通知)
  • 部品情報(品番、図面Rev、用途、適用市場)

2-2. RoHS要求がある場合(EEE向け)

  • RoHS制限物質に対する適合宣言(閾値ベースでOK/NG)
  • 複合部品は「どの部位が均質材料として分解されるか」も含めて回答をもらう

2-3. REACHが絡む場合(EU市場に置く成形品)

  • SVHC(Candidate List)該当有無(0.1%超の有無を含む)
  • 該当する場合:物質名、含有部位の特定、必要な情報伝達
  • 制限(用途制限)に該当しないか(用途情報を渡して確認)

2-4. TSCAが絡む場合(米国向け)

  • TSCA適合/対象外の根拠情報(輸入者側の確認に使える粒度)
  • 供給者の宣言(「米国向け供給の実績」「対象物質の扱い」など、実務的な裏付け)

ステップ3:調達の“チェック手順”(社内標準にできる運用フロー)

ここからは、そのまま標準手順として使える形にします。

手順①:案件情報を確定(出荷先・用途・最終製品カテゴリ)
出荷先:EU/米国/その他
最終製品:EEEかどうか(RoHS要求が来るか)
用途:電装周り/食品接触/医療/インフラなど(制限の該当性が変わる)
手順②:部品をA/B/Cで分類
A:材料・化学品、B:成形品、C:複合部品
→ この時点で必要書類のセットが決まる
手順③:対象リストを固定(毎回ゼロから調べない)
RoHS:制限物質(10物質など)
REACH:SVHC(Candidate List)は“更新される”前提で定期チェック
TSCA:米国輸入対応に必要な適合/対象外の根拠
手順④:サプライヤーへの質問を“テンプレ化”
質問が毎回バラバラだと、回答もバラバラになり、監査で詰みます。最低限、共通フォーマットを固定します。
手順⑤:証拠を“部品パック化”(監査・顧客要求に強くなる)
部品単位で、品番・図面Rev・各種宣言・発行日・更新タイミングを1つのフォルダ(または台帳)にまとめます。

すぐ使える:調達向け「質問票テンプレ」(コピペ用)

件名:RoHS/REACH/TSCA 該当性の確認(部品:〇〇)

本文(そのまま使えます)

1)部品情報
部品番号:
図面Rev:
用途:
出荷先:EU/US(該当する方)

2)確認事項(回答はYes/No+根拠資料添付)
RoHS:制限物質の閾値に対して適合しますか(Yes/No)※RoHS要求がある場合
REACH:SVHC(Candidate List)を0.1%超で含有しますか(Yes/No)
Yesの場合:物質名/含有部位/情報伝達に必要な情報の提示
REACH:用途制限(制限対象用途)に該当しませんか(Yes/No)
TSCA:米国向けにTSCA適合/対象外の根拠情報を提供可能ですか(Yes/No)

3)変更管理
材料・配合・工程・拠点変更がある場合、事前通知可能ですか(Yes/No)

よくある落とし穴(ここで詰まる)

落とし穴1:RoHS「OK」だけでREACHが抜ける

RoHSはEEE中心、REACHはより広い枠組みです。RoHS適合でも、SVHCや用途制限の確認が別で必要になることがあります。

落とし穴2:SVHC確認が「材料名」止まり

SVHCは“材料名”ではなく“特定物質”として管理され、更新も起こります。「NBRだから大丈夫」ではなく、「SVHC該当物質を含むか」で確認する必要があります。

落とし穴3:PFASなど“規制の波及”を部品だけで見てしまう

シール材だけでなく、潤滑油・洗浄剤・工程薬品など周辺まで変わり、結果として品質・コスト・工程が動くケースがあります。

調達が強くなる“運用のコツ”:規制対応を「証拠管理」に落とす

規制対応で現場が疲弊する企業は、毎回「顧客要求のたびに宣言書を取り直す」「回答粒度がバラバラ」といった状態になっています。

逆に強い企業は、以下の3点ができています。

  • 質問票(テンプレ)を固定し、回答粒度を揃える
  • 部品パック(証拠)を更新前提で持つ
  • 変更管理を契約・運用に組み込む

また、材料選定の段階で規制リスクを織り込むほど、後戻りが減ります。

FAQ

Q1. RoHSとREACHの違いは?

A. RoHSは主にEEEに含まれる特定有害物質の使用制限、REACHはEUの化学品規制で成形品も対象になり得ます。

Q2. ゴム・樹脂部品でもREACHのSVHC確認は必要?

A. EU向けで成形品として市場に出るなら、SVHC含有有無の情報伝達要求が来ることがあります。顧客要求として求められるケースも多いです。

Q3. TSCAは日本の部品調達に関係ある?

A. 米国向けに輸出する、または最終顧客が米国の場合、輸入者側の確認のためにTSCA適合情報の提出を求められることがあります。

Q4. まず何の書類を取ればいい?

A. 最小セットは「規制適合宣言(Yes/No)」「変更管理(事前通知)」「部品情報(品番・図面Rev・用途・市場)」です。

Q5. SVHCは更新されるのが怖い。どう運用すればいい?

A. “毎回調べる”ではなく、SVHC更新のタイミングで部品パック(証拠)を更新する運用にすると、監査や顧客要求に強くなります。

まとめ:規制対応は「知識」より「調達オペレーション」で勝つ

RoHS/REACH/TSCAは、全部を暗記するよりも、以下の“仕組み化”が最短です。

  • 3つの分岐(EU/US、EEE、成形品)で適用範囲を確定し
  • 部品分類(A/B/C)で必要書類を固定し
  • 質問票テンプレと部品パックで証拠管理する

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「顧客ごとに要求が違って現場が疲弊している」「宣言書はあるが粒度がバラバラ」
こうした状態なら、まずは部品カテゴリ別に、必要書類セットと質問票を統一するのが最短です。

ご相談時は、次のどれかがあれば十分です。
部品番号/図面Rev/用途/出荷先/現在の宣言書(あれば)

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