ものづくりプレス
2024-01-16
ポリアミドとは│種類と特徴
5大エンプラのひとつであり、衣服の繊維として有名なポリアミド(ナイロン)。優れた耐熱性や強度を持っており、自動車・医療・航空産業などでも活用されている樹脂です。
当記事ではポリアミドの概要やナイロンとの違い、種類、特徴、主な用途などを解説します。
ポリアミドとは、アミド結合で連結したポリマーの総称ですが、このアミド結合を持つ合成樹脂がポリアミド樹脂です。工業用として使用され始めてから既に80年以上経過している歴史ある物質で、現在でも衣類から産業用製品まで、幅広く活用されています。
ポリアミド樹脂は、優れた物性や強度を備えた「エンプラ(エンジニアリングプラスチック)」に分類され、工業用の過酷な状況下でも使用できるのが特徴です。またエンプラの中では、ポリカーボネート(PC)と並ぶ市場規模の大きさを誇っています。
ポリアミドとナイロンの違い
ポリアミドとナイロンは、多くの場合、同じ物質として扱われています。実際にポリアミドとナイロンは同じもので間違いありませんが、正確にはナイロンはデュポン社の商標(商品名)であり、ポリアミドの一種です(ポリアミドはさらにナイロンとアラミドに分けらます)。
ナイロンとしてのポリアミドは、1935年にデュポン社により開発されました。研究者のウォーレス・カロザースが発明し、その後に工業化されました。ナイロンの誕生はファッション業界に革命を起こしたとも言われており、今では衣類やバッグ、ストッキングだけでなく、携帯端末など幅広い製品に利用されています。
ポリアミドの種類
「ポリアミド」と「ナイロン」と言っても、実際にはさまざまな種類や分類が存在しています。
以下では「ポリアミドの種類」と「熱的性質によるポリアミドの分類」の2視点で解説します。
ポリアミドの種類
ポリアミドは「ナイロン」と「アラミド」に分類できます。
▼ナイロン
脂肪族骨格を含むポリアミドをナイロンと呼びます。ナイロンは、有機化合物の脂肪族のみで構成された「脂肪族ポリアミド」、脂肪族と芳香族が組み合わさっている「半芳香族ポリアミド」に分類されます。半芳香族ポリアミドは、後述するアラミドの代替品としてよく使用されています。
以下では、世界中でよく使われる脂肪族ポリアミドの代表的な種類をまとめました。
<脂肪族ポリアミド>
PA6(ナイロン6) |
l ポリアミドの中でもっとも人気かつ使用されている l 5大エンプラの1つで、非常に優れた耐熱性と強度を持つ |
PA66(ナイロン66) |
l ナイロン6以上の耐熱性と機械的強度を持つが、性質はほぼ同等 l 各種物性のバランスもよい。そのため、機械部品や自動車向けに非常に重宝されている |
PA11(ナイロン11) |
l 耐屈曲疲労性や耐熱老化性に優れる l 環境に優しい素材とされている |
PA12(ナイロン12) |
l 耐寒衝撃性や耐候性に優れており、低温度下での使用に適する l 耐水性がよい |
PA46(ナイロン46) |
l 優れた耐熱性で、高温下での使用に適する l 耐摩擦摩耗性が高い |
▼アラミド
芳香族骨格だけで構成されるポリアミドがアラミド(全芳香族ポリアミド)です。
400~500℃まで対応できる耐熱性やナイロンの2倍以上の強度を持っているのが特徴で、防弾チョッキやロープ、ブレーキとトランスミッションの摩擦部分やガスケットなど、性能の要求レベルが高い部分に使用されます。またアラミドの価格は非常に高価です。
アラミドはさらに「パラ系アラミド」と「メタ系アラミド」に分類されます。
パラ系アラミド |
非常に優れた耐熱性、耐摩擦性、引張強度を持つ |
メタ系アラミド |
耐熱性、防炎性、耐薬品性を高めた素材 |
熱的性質によるポリアミドの分類
ポリアミドは熱的性質によっても分類することができ、次の3種類があります。
▼汎用系ポリアミド(PA)
融点が220~250℃のポリアミドです。機械的強度や耐熱性、耐薬品性などの高さから、自動車、電気電子機器、産業用機械、食品用フィルムなどに用いられています。
▼長鎖ポリアミド(LCPA)
融点は180~200℃。低吸湿性や軽量さといった特徴があり、精密機械や医療、粉体塗装などの分野で活用されています。
▼高耐熱ポリアミド(HTPA)
融点が約300℃以上で、高温に強いポリアミドです。エンプラ(エンジニアリングプラスチック)以上の性能を持つスーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)と競合して自動車や電子部品の分野などに使用されるほど、優れた耐熱性や耐薬品性などを持っています。
ポリアミドの特徴
ポリアミドのメリットとデメリットをみていきましょう。
ポリアミドの優れている点
ポリアミドは、以下のような点が優れています。
▼強度
エンプラ(エンジニアリングプラスチック)であるポリアミドは、ほかの樹脂やプラスチックよりも優れた強度を持っています。軽金属の代替品として利用されることも珍しくありません。
▼耐熱性
先述したナイロン6は融点が約225℃、高耐熱ポリアミドなら300℃以上と、ポリアミドはほかの樹脂やプラスチックと比較して、優れた耐熱性を持っています。
高温での使用や製造が可能であるため、自動車産業や軍需産業、航空宇宙産業などあらゆる業界で使用されています。
▼耐摩耗性
ナイロンが衣服の代表的な素材として広まったのは、優れた耐摩耗性を持つことも理由のひとつです。擦りや引張が発生してもなかなか摩耗しません。
▼引張強度
ナイロンは引っ張り強度や靭性にも優れているため、衣類やストッキングなどに最適な素材です。それを示すのが、デュポン社が世界初の合成繊維としてリリースした際のキャッチコピーで、「鋼鉄より強く、蜘蛛の糸より細い」でした。
▼その他
ポリアミドは、ほかにも以下のような優れた点を備えています。
・比重が約1.3~1.4と、ほかの繊維よりも軽い
・耐薬品性や耐油性に優れている
・優れた染色性
・吸水性が高い
・アロイ化、共重合化によって特性を改良しやすい
・優れた電気的特性 など
ポリアミドの問題点
このように、優れた点を多く持つポリアミドですが、加工と劣化の面で問題点を抱えています。
▼加工の注意点
ポリアミドは、優れた耐熱性と強度により、さまざま環境や成形方法に対応できます。しかしその融点の高さから、加工時には非常に高い熱が必要になります。
また、熱収縮性が高く、加熱後と冷却後で大きく寸法が変わるという問題があります。そのため、加工時には正確な温度管理が求められるほか、熱収縮性を考慮した金型や製造ラインの構築も必要です。このほか、高い吸水性を持つことから、吸水によっても寸法が大きく変化します。
加工に際しては、ポリアミドが持つ寸法安定性の低さを考慮することが重要です。
▼劣化
ポリアミドは、長期間の使用に伴う熱、光、水などによる作用が原因で劣化する可能性があります。詳しい劣化環境や防止法は解明されていないものの、酸化、紫外線、熱、加水分解などの要因が、分子量の低下や結晶状態の変化を引き起こすためと考えられています。
ポリアミドを扱う際は、日光や雨が当たる屋外での使用を控えたり、長期間使用する際は適度に交換したりするなど、劣化対策を講じることが必要かもしれません。
ポリアミドの主な用途
ポリアミドの用途としてもっとも代表的なのは、「ナイロン生地」でおなじみの衣類と言えるでしょう。これ以外にも、さまざまな業界において次のような用途でも使用されています。
業界・分野 |
用途例 |
自動車 |
ラジエータータンク、アクセルペダル、トランスミッションマウント、シフトレバー部品など |
宇宙・航空関係 |
航空機エンジン部品、宇宙服など |
電子・電気部品 |
ロータリースイッチ、電池ガスケット、ソケット、リレー、ハブ、その他スイッチ類など |
食品関連 |
食品用フィルム・容器など |
その他 |
日用雑貨、おもちゃ、建築材、電動工具、釣り糸、歯ブラシなど |
優れた特性を持つポリアミド
ナイロンとして有名なポリアミドは、エンプラ(エンジニアリングプラスチック)として非常に優れた耐熱性や強度などの特性を持っており、世界中の産業で活用されています。しかしその反面、加工時に注意が必要など、いくつか欠点もあります。これらを含め、ポリアミドの性質を理解し、性質を生かすことで優れた品質の製品をつくることが可能です。
ポリアミドの加工や取り扱いについてご相談は、お気軽に当社までご連絡ください。
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